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お座敷えるふさん  作者: ビタワン
はじまり
3/15

エルフさんの仕事

本日も私のまわりは平和です。


お仕事なんて奥様のとりとめのない話を聞いたり、散歩に付き合ったり、着せ替え人形になったり、はたまた他のセレブの方たちとのお茶会にお供するくらい。基本は奥様のそばでゴロゴロしているか、手入れされた庭園で放し飼い状態です。このお城に来た日に、魔法の首輪も新しいものに付け替えられ、敷地内であれば離れられるようにして貰いました。主人から内線電話っぽいお呼び出しが出来たり、健康状態が付属の鈴の色で分かったり、逃走防止用の電撃、迷子・誘拐防止用の位置追跡まで付いてる多機能っぷりです。ファンタジーにあるまじきハイテク仕様。まぁ、プライベートなぞあってないようなものですが、私も国宝クラスに希少な身の上ですから仕方ないのです。アイアム人間国宝、違うか。


「ふむ……ん」


広い庭園は色とりどりの花と、背の低い木々が整然と管理されていて見事な光景です。

その中に白塗りのテーブルや椅子があって、一幅の絵画のようです。日本だったらここで紅茶一杯だけで幾ら取られるのかわからない、なんて考えるのは元庶民のサガでしょうか。しかし前世より息づく私の座右の銘は「花より団子」。ご飯があれば幸せ、陽だまりがあればお昼寝で幸せ、そんな行動原理は変わっておりません。いや、しがらみの多い現代社会から逃れた影響か、本能で動くことが多いし悪化してるような気がしております。知的なエルフのイメージはどこへいった?でもまぁ、夢の快適スローライフを満喫してます。


「ふわ……ぁ」


今も、メイドのお姉さん方にもらった枕と掛け布で、長椅子に寝転がってる次第です。

お気楽座敷エルフさん生活……ばん……ざい。





首輪のアラームに呼びかけがありました。

寝つきは良いけど寝起きもいいのが自慢な私は、さっさと寝具をまとめて担いで城の中に向かいます。枕と布は庭師のおじいちゃんの待機所に預けて、奥様の部屋へ急ぎました。早歩きで。走るとメイドさん達に怒られますからね。腰を曲げて目線を合わせて、小さな子に諭すように注意されるのは流石に恥ずかしいものです。項垂れる私を見て周りの他のメイドさんたちはくすくすと笑われてましたし、居た堪れない思いは勘弁なのです。とまれ、奥様の部屋の前まで着きました。


「ココね、さぁ入って」


私が動くと鈴の音がするので、扉越しに声をかけなくても来たのが分かるんですよね。GPS的な位置追跡魔法も首輪に掛かってますので余計に。私は扉を開けるとソファーに座る奥様の隣へ座り。不敬かも知れませんが、「撫でやすい」というペット的な意味でこの位置が私の定位置となってます。私はちっこいですからね、ソファーで寛ぐ中型犬のイメージです。早速、奥様に頭を撫でられます。

おや、目を細めながら奥様のお顔を見上げると、笑顔の端にいつもと違いなんだか気だるげな様子が漂っています。


「今日はね、ココにお願いがあるのよ」


普段可愛がっていただいている奥様のお願いならば!

不詳このお座敷エルフ、ひと肌でもふた肌でも脱ぐつもりですよ!


「ちょっとね、付き合ってほしいの」


二度三度と頷く私に微笑みながら、「いい子ね」と頬を撫でられます。私は少しくすぐったくて目を細めます。これが猫ならゴロゴロ甘えた声を出していることでしょう。


奥様は「それじゃ、一緒についてきて」と私の手を取り立ち上がります。そのまま手をひかれ、その先は……部屋続きの奥様の寝室へ。夫婦の寝室はまた別の部屋です。旦那様と二人がそろう時は、そちらの部屋で夜をお休みされて、あー、その、生産的な夜を過ごされているのですが、旦那様が夜遅くに戻られたり不在な場合は、こちらでお休みされているようですね。今朝はベッドメイキングのお姉さんが夫婦の寝室からシーツを出してたので、昨夜はお楽しみでしたね!というのがバレバレでしたっけ。



え?寝室?



こ、こここ、これはまさか!白い花びらが散る展開ですか!?

いえいえ、買われた時から覚悟はしておりましたが、まさか旦那様より先に奥様に召し上げられるなんて予想外です。夫婦生活は充実してるというか若いメイドさんが顔赤らめる位のはずですが、もしかして私はオヤツ的に戴かれてしまうんでしょうか。でも、奥様だったら優しくして頂けるだろうから構わないというか、ちょっと歓迎のような。私が呆然と突っ立って百面相をしていると、奥様はそのまま天涯の付いた豪奢なベッドへと私を誘いました。


こうなったら、覚悟を決めます。


ベッドの上で、緊張でまな板の上の鯉といった感じで固まりながらも、自分の服の裾に手をかけた処で、ぎゅむっと柔らかいものに包みこまれました。奥様にすっぽりと抱え込まれたようです。え?やだ着衣のままだなんて奥様そんな積極的な!えぇ、分かりました。もう為すがままです。私は体中の力を抜いて奥様に体を預けました。



そのまま期待と不安でごちゃ混ぜにしながら、じっと待つこと数分。

しばら私の頭に頬を摺り寄せていた奥様ですが、頭の上からは穏やか寝息が聞こえてきました。あら?


あ、あー成る程、これは抱き枕ですか。

奥様も「昨夜はお楽しみでしたね!」でお疲れだったのですね。それでお昼寝なのですか、そのお供に私を呼んだと。こ、これは恥ずかしい勘違いだわ。もう穴があったら入りたいです。桃色展開に期待と不安と期待と期待で胸を高鳴らせていた自分をしばきに行きたい。本当は身悶えしてゴロゴロと転がりまわりたい所ですが奥様にホールドままなので起こすわけにはいけませんし。そのまま豊満な胸に頭を預けて不貞寝を決め込むのでした。




その日から、私の業務内容がひとつ追加されました。

お座敷わんこエルフ兼、奥様の抱き枕。

ちっこくて抱え込める大きさと妖精特有の柔らか肌が大好評です。ご主人様方に喜んで頂ければ本望ですよ、あはは。ですが奥様、異種族のペットとはいえ仮にも少女な私を、旦那様が仮眠する際の抱き枕に推薦するのはいいんでしょうか?あ、大丈夫ですね。その奥様の豊満なお体に旦那様はずっと釘付けですからね、コドモな私なぞ比較するまでも。食事の後に二人で一緒に「長い間」湯あみにも行ってましたし、前世でなら私はこういっていたでしょう、旦那様爆発しろと。



少し短いでしょうか。そういえばワンコ会話してません。

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