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お座敷えるふさん  作者: ビタワン
新たな日常
12/15

エルフさんの午睡


強い日差しの中、麦わら帽子に白い袖なしワンピースと田舎のお嬢様スタイルの私は、菜園で空タルの列の上に座ってキュウリをポリポリと齧っていました。

コリコリとした触感と、噛めばじゅっと湧き出る水気が口に広がります。


「うみゃい」


今回の試作キュウリは成功ですね。実はこれ、この世界のウリ科っぽい植物を緑魔法で品種改良した一品なのです。キュウリとは発音しづらいのか皆さんはキーリと呼んいるこれですが、せっかくキュウリの再現に成功したのですが、私しか食べる人が居ないんです。重ねた失敗の間に無茶苦茶に苦いものや味のしないもの、なぜか辛くなってしまったものと色々と作ってしまいまして、興味本位でそれを食べた人が二度と試食してくれなくなってしまいました。それでもあれから成功したククリの実の糖度増しや、さらに発展させて作れたフルーツトマトモドキは、調理場の方々の厳しいチェックを経て料理やデザートにも使われています。お客様にも珍しい素材として好評だ、と旦那様からお褒めの言葉を頂き、上機嫌で頭を撫でてもらいました。ちなみに、私が改良した作物というのは内緒で出しているそうです。これ以上、自分に付加価値つけてると多方面から本腰入れて浚われてしまいそうですしね。


麦わら帽子のつばを無意識に弄っていると、細い指越しに花壇を手入れする庭師のお爺ちゃんの姿が見えました。私と違い、しっかりと作業用の厚めの作業服と帽子を着ています。私も初めの方は、菜園に入る際には汚れてもいい古い服を貰って、布でほっかむりをして作業をしていたのですが、その姿があまりにみすぼらしいとの理由で禁止されてしまいました。普段の私も大概に妖精としてのイメージを壊していますが、そのほっかむり姿はとても許せないものだったらしく、メイドさんたちから禁止を言い渡されました。平たく言うと「私たちの妖精族への憧れを壊さないで!」という事でしょうか。そのは如何ともしがたく、いえ、メイドさんたちの目が怖いので善処いたします。という事があって、今の田舎のご令嬢スタイルと相成った訳です。作業をするときはスカートを膝上に引き上げて横で結んであまり汚れないようにしてますが、これも見つかったらお小言を貰ってしまいそうですね。


私は齧っていたキュウリの最後のヘタ部分をぷっと吐き出すと、お爺ちゃんの手伝いをしようと腰を上げようとして、


「お、おぉぉぉ?」


失敗しました。

足腰に力が入らなんです。庭園に来るまでも足がプルプル震えて、ふらふら一歩ずつ歩いて時間をかけてしまいました。原因は昨夜のあれです、奥様に夜の共同戦線に駆り出された事です。奥様のお腹の第二子も順調に育って無事安定期を超えて、ここ最近の旦那様のお仕事も今日で一区切りついたそうです。侍従さんが言うには本当はもっとお仕事に時間が掛かる予定だったそうですが、愛する妻の為に頑張った模様です。二児の父となってもまだまだ衰えず、旦那様あっぱれで御座います。危険な兆候が見られないとはいえお子様に差障ってはいけないのでお二人は基本、ゆったりとした楽しみ方をされているのですが、その前に二人掛かりで私を可愛がるというか、私でお遊びになるのです。昨夜は本当に凄かったです、意識が真っ白になって気づいたら朝になってましたから。最後のあの、両方の耳を二人で甘噛みするのは反則です……。


そんなわけで、何時もより一層消耗した状態で朝を迎えた私は腰が抜けていてまともに立てませんでした。

年配のメイドさんに子供のように抱っこされて移動するのは、さすがに自尊心がちょっと傷つきます。そのままお風呂場で丸洗いされる時も抵抗する力もなくされるがままで御座いました。そんな私の様子を見たメイドさんが旦那様と奥様に進言してくださって、今日はメイド業もペット業もお休みとなりました。「ちょっとやり過ぎたかしら?」と奥様は仰ってましたが、その表情はまさに悪戯が成功した後の様な感じで言葉を裏切っておりました。やり過ぎです、体が持ちません、勘弁してくださいませ。今度は緑魔法で性欲を抑えるお茶でも作ろうかしら。



しかし、急に休みと言って普段の私はもメイドの仕事以外はほとんど寝てるか、食べるか、遊ぶかです。それだと普段とあまり変わらないというか。ぽっかりとお休みを貰って何をするにも思いつかず結局家でボーっとしてるお勤め人の様に何をしようか思いつかないのです。


「もろきゅう……もろみ欲しいなぁ」


2本目をポリポリかじりながら呟きますが、それはかなわぬ夢なのです。私ができるのはあくまで緑魔法を使った品種改良で、加工食品は手に余ります。そもそも知識がないのです。エロい単語だけは熱意をもって調べて回った過去の私よ、なぜその情熱を他に、主に加工食品の作り方に傾けなかったのか!一応、役には立ちましたがアレは胸張っていい功績とは思えませんし。持っていたキュウリを半ばまで食べたところで、けぷと小さなおくびが出ました、お恥ずかしや。今日は朝食も取っていませんでしたが、私の小さな体に1本半のキュウリは大きすぎたという事でしょうか。あぁ、いえ昨夜の影響ですか、上がってきた自分の呼気の匂いに顔をしかめてしまいます。


ご主人様方、今日はココは色々と駄目そうです。

私は何かしようとするのを諦めて、タルの列の上に体を丸めて寝転びました。気だるい体にすぐ睡魔が襲い掛かり、抵抗せず私は眠りにつくのでした。わふん。


今回も書いてたらノクターン行きに。

半分近く削ることに…。

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