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お座敷えるふさん  作者: ビタワン
新たな日常
10/15

エルフさんの魔法

もしも魔法が使えたら。

たとえ、それがスカートを浮かすだけの魔法でも素晴らしいと思います。byわたし



膝が冷えてじんじんと痛みを訴えております。私と坊ちゃまは、奥様とメイド長から石の床に正座をしてお説教を受けています。基本、家の中でも上履きに履き替えるだけのこの世界には正座なんていう座り方は無かったのですが、5年のうち私が怒られているうちに城内でのお説教スタイルとして定着してしまいました。坊ちゃま巻き添えでごめん。さて、メイド長は顔を真っ赤にして早口で怒っております。その隣でソファーに座る奥様は、どちらかというと呆れている感じです。なぜ、お二人からお説教を受けているかというと、私たちが初級魔法をおぼえた事から端を発します。詳しく言えば、魔法を使える楽しさに調子に乗って、悪戯に使いまくったからです。完全無欠の自業自得です。が、この2時間ほど前には「正しい魔法の使い方」についてお説教されていたはずですが、いつの間にか「食事のマナーが粗野」という関係ない方向まで派生して終わる気配がありません。あ、足が痺れすぎて感覚がなくなってきました。




私が魔法を覚える事になったきっかけは、久々の旦那様奥様そして坊ちゃんの三人+一匹揃って家族団欒でした。旦那様は最近、試行錯誤の上に完成した「綿布団」を作るのに忙しくて団欒の時間が取れないほどだったのです。ある程度の試作品を譲り受けた私は途中からそれで満足しちゃって、すべてをお二人に丸投げしたりしました。でも、綿布団は上流階級の方にウケたそうで、大忙しだそうです。今は街の需要を賄うだけの規模の栽培でしたが、今度はもっと綿畑を増やすんだとか。ご苦労様です、ぜひ応援させてください。応援しかできませんが。わふん。


そんな訳で、ちょっとお疲れ気味の旦那様の膝に頭を乗せて寝っころがっり、アニマルセラピー癒しモードで甘えております。旦那様を挟んで反対側には坊ちゃんが甘えてますね。奥様は少し距離を取っています。奥様はお腹に二人目の赤ちゃんがいますので、下手に傍で甘えてしまうと我慢している旦那様が本気になってしまうので自重しているそうです。私が頭のつむじをカシカシと弄られて「テクニシャンだわ」なんて唸っていると、奥様が坊ちゃまにそろそろ魔法の勉強をさせてみては?と言い出したのでした。旦那様も奥様も、坊ちゃんくらいの時に習い始めたそうです。もう坊ちゃんも幼稚園に通うくらいに育ってますし、大人がダウンするほどアクティブに動き回ってます。


しかし、魔法!いいですね。自分が今ファンタジー世界に居ることを自覚しましたよ。

あ、そういえば私エルフだわ、ファンタジーそのものでしたわ。


「それでね、ココって魔法を習ったことないそうじゃない?

 この子と一緒に勉強させてみてはどうかしら?」


そう、私はエルフという魔法素質が優遇された種族でありながら、

まったく魔法が使えないのです。


そりゃそうだ、習ったことないんですもの。初めて旦那様と奥様に自己申告した時は驚かれましたね。そして、顔を見合わせて「サバイバル能力ゼロ」で「世間知らずの箱入り」で「魔法の使えない」私が危険な森に一人で放逐されていた事から、色々と私の生い立ちを想像したようです。奥様なんてあなたはうちの子よとばかりに、息が止まりそうなくらいぎゅうぎゅう抱きしめてくれたくらいにです。悪い方のストーリーが浮かびますよねそりゃ。人間からすればエルフって容姿はともかく、その生態は偏屈で森の中で怪しい儀式してそうな引きこもり種族のようなイメージだそうですし。そういう事があったので、奥様も気にしていただいてたんですね。私が魔法が使えない事。


まずは、坊ちゃまが一も二もなく賛成して期待の目線がきらきらと輝かせてます。そんな目で見られましても私はペットですから別に魔法がなくても……と思ってたら、旦那様も了承してくださって、あれよあれよと私も魔法の勉強をすることになりました。内心はめちゃくちゃ嬉しいですけどね。庭師さんが風魔法で落ち葉を集めたり、調理場で火魔法で竈に火を入れたりするのを見るたびに憧れてましたから!でも、私の立場的にどうなんだろうと思ってはいたのです。私は大事に可愛がってもらってはおりますが、ここに買われてきたペットで奴隷です。魔法は純然たる力ですし、魔法の知識があれば身体的にひ弱な私でも大の大人と渡り合えるかもしれません。私が牙を剥く気は全くもってありませんが、知識を得て牙を剥けるという事が問題あるのでは?と思う訳です。そこで、後でこっそり旦那様と奥様に聞いてみましたが、


「知識があるのと賢しいのは違うよ」


と言われました。すごい納得しました。遠まわしにあほの子呼ばわりされてる気がしますが、事実なので何の言いようもありません。謀反を起こす気なぞ更々なく、手を出されたら噛みつくどころか頭を持ってって撫でてもらう方です。見事な飼い犬根性ですね我ながら。わふわふ。


そして、旦那様の知人の魔術師の方に先生になってもらい、私と坊ちゃんの魔法授業が始まりました。





魔法ってすごい!


前世で言えば、初めて自転車に乗れた時のような新鮮な感動でした。しかも、生活密着というかとても利便性がいいのですよね、魔法があると。喉が渇けば水魔法で出した水を杯に注ぎ、ゴミが出れば土魔法で穴掘って埋める。風魔法は掃除に洗濯物の乾燥に大活躍ですし、火魔法は火つけや調理に使われています。上級になると攻撃魔法も覚えて派手になるようですが、大抵の教育としては初級を覚えて止まるんだそうです。兵士や魔法使いを職業としない限り、街の中では上級魔法なんて使いませんから。


そんな訳で、初級魔法使いとして次々と魔法を覚えていった私と坊ちゃまですが、人間ってなにか新しいことを覚えると、それを使いたくなるものですよね?エルフな私もしかり。


まず、水魔法を覚えた私がテンション上がったまま覚えたての魔法の使い道を考えたのは「水爆弾」でした。この世界には水風船なんてありませんが、魔法で出せば持って歩く必要がないから楽しそうなんて思っちゃったのですよね。楽しくて楽しくて私と坊ちゃまが正気に戻るまでに何人のメイドさんや衛視さんが犠牲になった事か、ほんとおバカさんでした。そして、坊ちゃまは覚えたばかりの風魔法で考えた悪戯は「スカート捲り」でした。これまた楽しくて楽しくて調子に乗った結果、多くのメイドさんが犠牲になりました。男性使用人の方々には案外好評ないたずらでしたが。しかし、最後にちょっと怖いメイド長の反応が見たくて、スカート捲りを仕掛けたのが運のツキ……あっという間に二人とも捕縛されて、奥様の前でお説教を受けております。皆さんの呆れた目線が痛いです。





「聞いてますの!?」

「は、はぃぃ」


柳眉を逆立てて怒るメイド長さま。怖い怖い、ごめんなさいもうしません。隣を見ると坊ちゃまも私と同じ涙目です。私にイヌ耳と尻尾があればぺたんと倒していたくらい怖いです。お腹を出して寝っころがって服従してるかもしれません。それからも暫くお説教は続き、やっと解放されたとほっとした私に残酷な通知が突き付けられました。


私へのお菓子禁止令です。


食事のデザートもおやつもメイドさんや庭師のお爺さんがくれるお菓子もダメ、そんな、私の日々の楽しみが!禁止令は五日後に耐えられなくなった私が、涙目でくぅんくぅんと鼻を鳴らしながらメイド長に泣きついてなんとか解除してもらいましたが、もうメイドさんたちは敵に回さないようにしようと心に誓うのでした。



チンカラホイ!

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