ヒモのお誘い4
彼からの質問が終わったところで、ちょうど店員がやってきた。
真っ白な皿にクラブサンドがのっていた。
きっと昔の俺だったら、美味しそうだと思っただろう。
「あ、言い忘れてた。俺は鈴木哲司(すずき
てつじ)。」
注文したクラブサンドを頬張りながら彼は言う。
そんな彼を眺めながら美味しそうに食べる男だなと思った。
俺がクラブサンドを前にしてなにもしないのをみた男はさらに続けて言った。
「遠慮しないで食べて。…あ、そっか…。一口だけでも食べてみるさ。」
俺が食欲がないことを思い出したようで、無理には勧めず残していいよと彼は言った。
結局俺は一口食べただけで、後は彼が全部食べた。
◆◆◆
「……どこに行くんだ?」
「え?俺の家だよ。」
俺はいつのまにか電車に乗っていた。この鈴木という男と一緒に。
乗ってからふと気付いた今更な質問をする。
自分でついてきたのにどこに行く?という質問はおかしいかもしれない。
彼の家に俺は行くのかとまるで他人事のように思った。
自分がわからない。さっきまで死ぬつもりだったのにいつのまにか彼についてきている。
電車の窓から見える景色は馴染みがなかった。
俺はどこまできていたのだろうか。
死のうと思い、とりあえず遠くまで行こうと思って電車に乗り込んだ数時間前の俺。
適当に降りた駅の近くに廃ビルがあり、ここでいいかと思った俺は迷いもなく屋上までのぼった。
そしてこの鈴木という男に声をかけら、今ここにいる。
そういえば、この男はどうしてあんな廃ビルにいたのだろうかと今更ながら疑問に思った。
いや、それよりも何故俺を助けたのか。
俺は考えるのが嫌になり窓の外を眺めることにした。
トンネルに入ったのか景色が暗くなり、さっきまでみていた窓には俺のやつれた顔がはっきりと映る。
目の下の濃いクマ、痩せこけた頬、元々色白な顔は更に不健康な色になっていた。
嫌な気分になり目をふせた。気持ち悪い自分の顔に吐き気を覚える。
ぎゅっと目をつむると少し楽になったような気がした。
「おい、大丈夫?次、降りるから。」
鈴木は心配そうに俺の方を見て言った。