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洋服
ことりと男の日常風景・2
「私、新しいお洋服が欲しいなぁ~」
鳥籠の中のカウチに寝そべりながら、つぶやくように言うと。
耳ざとい男が、書類を投げ捨て歩み寄る。
「どんなものが欲しい? 遠慮せずなんでも言ってごらん?」
窓辺に置かれた鳥籠を腕に抱き、嬉しそうに覗き込む。
「なんでも?」
「君の望むものを、私はなんだって揃えてあげる。シャンテルのレースもイトイナの絹も、金剛石の釦も。君の欲しいものを何だって用意しよう」
その言葉に、男の愛しい人の頬がぷくっとふくらんで。
「私はあなたの手作りじゃないお洋服が欲しいのっ!」
勢いつけて、望みが飛び出した。
「……却下」
「せめて下着はやめてよっ、馬鹿!」
器用な男の、不器用な愛。