エピローグ:円環の始まり
――そして、時間は再び巡る。
二〇二四年、東京。
深夜の住宅街は、まるで世界から切り取られたように静まり返っていた。
等間隔に並ぶ街灯の冷たい光と、湿ったアスファルトの匂い。
そんな見慣れた日常の風景の中、古びた電柱の影に、不釣り合いな影が一つ落ちていた。
十五年の孤独な準備。
全てはこの日の、この瞬間のために。
深くフードを被った男――かつての冷酷な執行官であり、今は全てをやり直すために時を遡った亡霊、綾小路蓮は、手の中で秒針の止まった懐中時計を弄んでいた。
「……やっぱり、俺が直接あの時代に飛ぶのは無理か。同じ時間軸に『俺』は二人存在できない。」
蓮はひとり、暗い路地で呟く。
「俺が一六〇〇年に行っても、蓮は蓮と相殺して消える。だからこうするしか、方法がないんだ」
その瞳には、途方もない後悔と、血を吐くような決意が入り混じっている。
「……そろそろだな」
蓮の喉から漏れた声は、ひどく掠れていた。
「あいつの、『絶対勝利』が必要だ。どんな理不尽な状況でも、世界の「理」をねじ曲げて勝利を確定させる……あの異常な力が」
その時、反対側の歩道から軽快な足音が聞こえてきた。
山口愛里。
制服姿のまま、スマートフォンを片手に歩いてくる。
イヤホンを片耳に引っ掛け、何かの動画を見ながら笑っている。
何も知らない。
無敵の力を持ったまま現代を生きる、かつての敵。
いや、今の彼にとっては、たったひとつの希望の光。
そしてもう一つ。
たったひとりの、謝りたい相手。
死なせない。
今度こそ、誰も死なせない。
その確信だけが、十五年間、蓮を生かし続けていた。
彼女が電柱の横を通り過ぎ、街灯の光と夜の闇が交差する境界に差し掛かったその瞬間――蓮は弾かれたように顔を上げた。
「愛里!」
――今度は、違う結末にする。
――END.
ここまで読んでくださり、圧倒的感謝です…!本当にありがとうございます!
面白かった、ここがツッコミどころだ等々、皆様からの感想をドシドシお待ちしております!
ちなみに名前の通り『語彙力皆無マン』がお送りしておりますので、語彙力の無さはデフォルト仕様です。どうかご容赦くださいませ…!
もしかしたら、続きを書くかもしれません。




