表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢は辺境伯に溺愛される~戻ってこい? お断りします~  作者: 冬木ゆあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/12

第12話 選んだ未来

 アメリアはジュリアンの部屋をノックした。弱々しい返事が聞こえ、ドアを開けると、カーテンを閉め切り、薄暗い部屋でジュリアンはワインを飲んでいた。アメリアはドアを閉め、カーテンを開けた。


「このような暗い部屋でお酒を飲んでは体に悪いですわよ」


 ジュリアンは眩しそうにしながら、アメリアを見た。


「何の用だ」

「単刀直入に申します。わたくしと婚約破棄をしてください。それから、メアリー嬢に執着するのも、もうおやめになって」


 ジュリアンは顔をしかめた。


「執着?」


 アメリアはジュリアンの緑の瞳を見つめた。


「そうです。エミリー嬢はジュリアン殿下に怯えていらっしゃいます。気づきませんでしたか?」


 それにジュリアンは困惑したような表情を見せた。


「嘘だ。エミリーは病気になってしまった。だから、登城できないだけで……。見舞いにいっても……」


 そこでジュリアンは言葉を止めた。なにか思い当たる節があったようだ。


「エミリー嬢は笑顔で迎えてくださいましたか?」


 ジュリアンは弱々しく首を横に振った。


「エミリーはわたしが婚約を申し込んでから、笑顔を見せなくなった。それも病気のせいだと……」


 アメリアはジュリアンの隣に椅子を置き、そこに座って、手を取った。


「あなたはずっと大切な人を追い詰めていたのです」


 ジュリアンは頭に手をやり、うなだれた。


「アメリア、あなたもわたしから離れていくのか……?」


 アメリアはうなずいた。


「あなたが、私と婚約破棄するときにおっしゃったんですよ。『せっかくなら愛する人と結婚した方がお互いのためだ』と」


 ジュリアンは緑の瞳から涙を流している。


「ムーア伯爵のもとに戻るのか?」


 アメリアはうなずきながら苦笑した。


「そのつもりですが、ルイがまた望んでくれたらでしょうね。なにせ、一度婚約を破棄しておりますから」


 アメリアは立ち上がった。そして、ドアを出る前に振り返った。


「どうかお元気で。ジュリアン殿下」


 後ろ髪を引かれる思いで、ドアを閉めた。どっと疲れが出て、ドアにもたれかかる。子供の頃からのジュリアンを思い出し、こんな結末になったことがアメリアにとって残念でならなかった。


 自室に戻り、出迎えたエマに言った。


「ジュリアン殿下との婚約を破棄したわ。お父様に手紙を書いて……」


 そこでエマがアメリアを抱きしめ、優しく背中を撫でた。そこでようやくアメリアは自分が泣いていることに気づいた。


「エマ、私がしたことは正しかったのかしら……」

「お嬢様、大丈夫です。エマはいつでも味方です」


 アメリアはエマに縋りついて泣いた。

 それから、ロバートに手紙を書き、翌日には迎えが来た。馬車に乗り、窓の外をぼーっとした様子で眺めているアメリアを、エマは心配そうに眺めていた。

 フィリップス公爵家につき、両親のロバートとヴァネッサに出迎えられた。そのままアメリアは自室へと向かい、エミリーに手紙を書いた。エマに届けさせると、エマはまた返信を持って帰ってきた。翌日に訪問することが決まった。


 翌日。

 アメリアはジョーンズ家を訪ねた。エミリーは相変わらずやつれた様子だったが、その顔には笑顔があった。二人はソファーに座りながら、話していた。

 エミリーは一通の手紙をアメリアに渡した。それはジュリアンからの手紙だった。


「読んでいいの?」


 エミリーがうなずいたのを見て、アメリアは手紙に目を通した。そこには謝罪が書かれていた。


「アメリア嬢のおかげです。ジュリアン殿下の廃太子の報を受け、婚約者も久しぶりに顔を出してくれました」


 そういうエミリーは嬉しそうだ。エミリーはアメリアの手を取った。


「アメリア嬢もムーア伯爵のもとに戻るのでしょう?」


 アメリアは少し間を開けてからうなずいた。


 アメリアはフィリップス公爵家について馬車を降りると、大きく息を吸った。


 ――覚悟を決めなければ……。


 自室に戻ったアメリアは、エマに言った。


「手紙を書くわ。紙とペンを用意してくれる?」


 エマは机に紙とペンを置きながら尋ねた。


「今度はどなたに書くんですか?」


 アメリアは椅子に座って、エマを不安げに見つめた。


「……ルイに」


 それを聞いたエマは満面の笑みを浮かべた。


「それはよいアイディアです。速達で出しましょう!」


 エマが外出の支度をはじめたので、アメリアは紙を前に、書く内容を思案した。


 ――まだ待っていてくれているかしら……?


 アメリアは手紙を書きはじめた。


『三度目の婚約破棄です。こんな私でも妻にと望んでくださるのなら、迎えに来て』


 そう綴った。


 それからアメリアは落ち着かない日々を過ごしていた。

 手紙を出してからまだ五日。ルイスのもとに届くにはあと十日はかかる。それから返信をしてくれたとしても、届くのは一か月先だろう。


 ――今すぐにでもムーア領に行って、ルイに会いたい。けれど、今は婚約者でも何でもない。ルイの今の気持ちもわからないのに、押しかけるわけにはいかない。


 そう自分に言い聞かせ、アメリアは気晴らしに庭でお茶をしていた。まだ三月の上旬で少し肌寒いが、コートを着ていれば外にいられる陽気だった。


「お嬢様!」


 突然、正面で給仕していたエマが驚いた顔でアメリアを呼んだ。アメリアは驚いた顔でエマを見上げた。


「いったいどうしたの?」

「う、うしろ! ご覧ください」


 アメリアが振り返ると、そこにはルイスがいて、アメリアはゆっくりと立ち上がった。


「ルイ……」

「アメリア、来てしまった」


 ルイスは少し気まずそうにそう言った。アメリアは正面の空いている椅子を手で差した。


「おかけになって」


 ルイスはそこに座り、窺うようにアメリアに視線を向けた。


「建国祭に出席するため、王都に来てみれば、王太子が第二王子になっていた。きっかけはフィリップス公爵が第二王子についたことだと聞いて、話を伺いにきたら、公爵からアメリアが戻っていると聞いて、会わずにはいられなかった……」


 アメリアは表情を綻ばせ、手をルイスの方へと伸ばした。


「私もルイに会いたかった。手紙を書いたのよ。その様子じゃ、行き違ってしまったようね」


 ルイスはその手に自身の手を重ねる。


「いったい何があったのか。聞いてもいいかい?」


 アメリアは苦笑しながら、ルイスと別れてからのことを話した。それを聞いたルイスは困惑したような表情を見せた。


「……随分と危ないことをしていたんだね。アメリア、君が無事でよかった」

「あなたのもとに戻りたい。ただそれだけだったのよ」


 ルイスは立ち上がり、アメリアの横に立ち。アメリアの頬にそっと手を添えた。


「……抱きしめてもいいかい?」


 アメリアは微笑みながら両手を広げ、ルイスの首に手を回した。ルイスは壊れ物に触れるかのように優しくアメリアを抱き寄せた。

 それからルイスはアメリアの前にひざまずき、ポケットから指輪を取り出した。


「アメリア、俺と結婚してくれないか……? 本当は新年会の後に言うつもりだったんだ」

「……ありがとう、ルイ。とても嬉しい」


 アメリアは笑顔を浮かべながら、一筋の涙をこぼした。アメリアが差し出した左手に、ルイスは指輪をゆっくりとはめた。それをアメリアは愛おしそうに眺めた。そして、アメリアはルイスに視線を向けて、目を瞑った。ルイスは微笑み、アメリアの腰を抱き寄せ、優しく口づけをした。


「愛しているよ、アメリア」

「私もよ、ルイ」


 二人は額を合わせ、幸せそうに微笑んだ。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

そして、ブックマーク、評価していただいたみなさま、本当にありがとうございました。

執筆の励みになりました。

次回作もどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ