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偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


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第三十三話◇守ると決めた日。 〜財前慶一郎視点


◇◇財前慶一郎視点


(…っ、くそ、油断していた。)


結局一時間もせずに和田と宮西は帰ったが、宮西の言葉が頭の中を何度も反芻する。


『…同じクラスの天宮って奴。多分伊集院さんのこと、めっちゃ狙ってるよ?』


(…天宮が同じクラスだというのはわかっていたのに。)


桜子さんからその名前が出ないからすっかり忘れていた。きっと、僕に気を遣って話さないようにしていたのだろう。


 そういえば、桜子さんの様子が数日前おかしかったことがある。


『…私以外の女の子の事を好きになったらダメですよ?』


もしかして、天宮に何か不安になるような事を言われたのだろうか。


(っ、僕は何を安心していたんだろう。)


あんなに可愛くて美しい桜子さんが誰かに狙われるなど、当たり前のことなのに。


 ──それをわかっていながら、合宿という特殊な環境で気を抜いていた。


 …彼女は、僕の婚約者だ。それなのに、同じ教室で彼女を狙う他の男が毎日隣に座っている。


 その光景を想像しただけで、胸の奥がざわつく。


(…明日からは、昼休みになったら、必ず迎えに行こう。)


こうなったら直球勝負だ。婚約者である桜子さんを迎えに行くのは、何もおかしいことではないのだから。


◇◇


「なあ、あれ見ろよ。」

「スゲェ、写真撮りたい。」


次の日はとても暑い日だった。


 …いつも琵琶湖ランの時は上着を着ていた桜子さんがTシャツ一枚になっている。身体のラインが全て出てしまっており、酷く扇情的だ。


(──っ、)


思わず生唾を飲み込んでしまう。


 ハイエナのように男共が桜子さんを舐めるように見ている。


「──桜子さんっ!!」


僕は急いで桜子さんの元に駆け寄ると周囲を威嚇する。スマホが回収されており、写真を撮れないことが救いだった。


「ほらー。財前君心配してるじゃん。やっぱり、我慢して上着着てきた方が良かったんじゃない。」


そう言って城之内さんが心配そうな顔をした。


「──でも、熱中症になるのも怖いですし…。すみません慶一郎様。」


「…いいんです。でも、なるべく僕以外の前では身体のラインが出るような格好は避けて頂けると…。」


その後なるべく彼女と一緒に行動して、ジロジロ見られないように注意した。それを見て、やっと桜子さんが自分の格好の危うさを自覚したようだ。


「ごめんなさい…。今度から走るまでは上着を着ておきます。」


そう言って桜子さんは眉尻を下げた。


 琵琶湖ランがスタートすると、やっと男子生徒が周りからいなくなったので、僕は城之内さんに頭を下げてから走り出した。


「うおおおおおおおおお!!!!!」


僕は先程の桜子さんの姿を思い出し、頭の中が煩悩で爆発しそうになった。


 Tシャツ越しでも隠しきれない彼女の身体の曲線が、どうしようもなく目に焼き付いてしまう。


 ──あんな姿を他の男も見たのかと思うと、嫉妬で気が狂いそうだった。


 僕は何人もごぼう抜きすると、いつの間にかトップでゴールしていた。


◇◇


「──桜子さん!!」


僕は昼休みになると、すかさず席を立って桜子さんを迎えに行った。


 すると、桜子さんが驚いたような顔でこちらを振り向く。


「…慶一郎様?!」


その隣には──。


「あれ、財前君。…やっと迎えにきたんだ。


 ──だよね、随分余裕だなって思ってたんだ。


 僕だったらこんな可愛い婚約者がいたら、心配で仕方なくて、毎日迎えに行くのになって思ってたから。」


ニコニコと毒を吐く天宮がいた。その後ろには、気まずそうな顔の宮西がいた。


 僕は悔しくてギュッと拳を握り締めるが、なるべく平静を保つ。


「ああ。全くもってその通りだな。忠告ありがとう。

 ──これからは毎日迎えに来ることにした。

 桜子さん、宮西。行こう。」


すると、桜子さんは天宮に律儀にペコリとお辞儀するとたたっと駆け寄ってきてくれた。


「慶一郎様っ。迎えに来てくださってありがとうございますっ。」


桜子さんの可愛らしい笑顔に胸が締め付けれられながら、僕は頷く。


 ちなみに宮西は少しだるそうに腕を肩の後ろに回してカバンを持ってついてきた。


「いやぁ、結構演習よりひたすら暗記する教科が多くて眠くなってくるわ。」


そう言って欠伸をした。


「…だが、その分努力が顕著に表れやすいということだ。頑張れよ。」


「…ああ。」


そんな事を話しながら食堂に行く。


 すると、今日も城之内さんと四之宮が並んで座っていた。

 城之内さんが一生懸命四之宮に話しかけているが、四之宮は神妙な顔で頷いている。


(──それにしても、まさか城之内さんが四之宮を好きになるとはな。)


実は、昨日少しだけ二人になった時に桜子さんにその事を打ち明けられたのだ。


 確かに四之宮は面白いしとても良い奴だ。それに今はTHE 受験生といった格好をしているが、見た目も悪くない。


 ──だが、少し変わっている。城之内さんの気持ちにはまだ四之宮本人も含め、誰も気付いていなさそうだ。


 城之内さんの向かいに座る和田は嬉しそうにニヤニヤしていたが、僕達に気付いて手を上げた。


「おーい!こっちに席取ったぞ。」

「──ありがとう!」


そう言って席に着く。ちなみに今日のランチのメニューはカレーらしい。他の三人はもう食べ始めていたので、僕達も慌てて並ぶ。


「慶一郎様、宮西さん、お腹減りましたね!」


桜子さんが笑顔で僕と宮西に笑いかけてくる。


「いやー、伊集院さん可愛いわぁ。財前マジで羨ましい。…まぁ、天宮じゃなくても狙われてもしょうがないかもな…。」


声を顰めて宮西がそんな事を言ってくる。


「そうだな…。油断していた。」


今もたまたま桜子さんの前を通り過ぎた男が二度見している。


「マジで今日迎えに来て正解だったと思う。彼氏がいるって知らなかったみたいで、天宮以外にも騒いでた奴もいたし。


 天宮が結果的に間接的に守ってるような感じになっちゃってたんだよね。」


その言葉がずしんの胸に響く。


「──そうか。」


「…なんか、婚約者が可愛かったら可愛いで、大変だな。伊集院さんも、城之内さんもモテてる自覚なさそうだけどさ。…愛想もいいもんだから、逆にハラハラするわ。

 ま、なんかあったら報告するわ。」


俺が御礼を言うと宮西に背中をポンポン叩かれた。


◇◇


「財前、ちょっといいか?」


午後の授業が終わると、先生に呼び出された。


「はい。」


目の前に座ると先生が真剣な目で僕に尋ねてくる。


「事前に提出された学力査定や小テストを見た。

 財前ならどの学部でも入れると思うんだが。


 ──工学部にしているのは何か理由があるのか?」


「…行きたい研究室がその学部なので。将来婚約者の会社でマーケティングに携わる予定なので、最先端のデータサイエンスが学べる場所が良いと思っていて。」


その言葉に先生は顔を上げる。


「え?!お前その歳で婚約者いるの?!…凄い、流石はお坊ちゃんは違うな。ちなみにどんな子?」


と聞かれて僕は答える。


「…国立文系クラスの伊集院桜子さんってわかりますか?」


「──はいはいはい!!あの子ね!!わかった!あの髪の長い子だろ?!良いなぁー。凄い美人じゃん!

 

 なんだよ、お前ら婚約者同士で同じ大学志望してんの?!青春だな!」


そう言われて思わずはにかんでしまう。


「一緒に受かれたらいいのですが。」


「…二人ともA判定だろ?今の所問題なさそうだけどな。ま、あくまでも今の所、だけど。


 よし、じゃあ次は反省会だな。ギリギリになってごめんな。」


そう言われて少しホッとする。


「いえ、気にかけて下さりありがとうございます。」


僕は御礼を言うと、少し擽ったい気分で席を立った。


(…二人で受かれば春から同じ大学、か。)


そんな事を思いながら気合いを入れ直した。



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