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偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


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第三十二話◇教員用トイレの攻防。〜四之宮樹視点


◇◇四之宮樹視点


(なん、だと。)


僕は重大な事に気づいてしまった。


 この合宿が行われている建物の、男子トイレの中には基本、ウォシュレットがない。


 だが、トイレが混んでいた時にこっそり教員用のトイレに入って気づいた。


 ──教員用のトイレにだけはウォシュレットが完備されていると言う事を。しかも、少し設備も豪華で綺麗だった。


(くそっ、もっと早く知っておくべきだった。)


その事を知ったのはもう合宿が五日目になってからのことだった。公衆トイレにおける快適性は、精神衛生に直結する重要な要素だ。


 こうして僕は教員の目を盗んでこっそり教員用のトイレを使うようになったのだが。


(…こいつらは、教員用のトイレの前で、一体何をくっちゃべっているんだ?)


──そう。僕は今日も見つからずに用を足せたことに達成感を覚えながらトイレを出ようとした時だった。


 出入り口の前でなんと、この前の男と城之内さんが何やら不吉な話をしていたのだ。


「──だから、一回やっぱり試してみようよ!もしかしたらすっごい相性がいいかもしれないじゃない?」


どうやら男の方が城之内さんに肉体関係を迫っているようだった。


「──絶対満足させるから!!」


城之内さんは乗り気ではないようで、断っていたが、しつこく迫られているようだ。


「っ、ちょっと!!」


焦ったような城之内さんの声が聞こえる。


──盗み聞きは倫理的にどうなのかとは思う。だが、城之内さんの安全が危ぶまれる可能性がある以上、これは介入すべき事案である。


「──話は聞かせて貰った。君に必要なのはTE◯GAだ。」


僕は仕方なく、トイレの外に出ると、男の前に立った。


「は?何言ってんの、お前。」


男が訝しげな顔をしていたので、僕は切々と三次元の女性と肉体的接触を持つことで生まれる性感染症のリスクについて説明した。


 その上で、僕がもう一度TE◯GAをお勧めした上で、なんと出血大サービスで丁度リュックに入っていた未使用の卵型のものをプレゼントしてやった。


 すると、奴は強張った顔でお礼を言ってきた。


「…あ、ありがとう?」


きっと、TE◯GAの神々しさに恐れをなしたに違いない。僕は彼が理性を取り戻す事を祈りながら激励を送ることにした。


「──ああ、きっと大丈夫だ。君は立ち直れる。セックスに依存する前に君はTE◯GAに出会うべきだった。だが、今からでも遅くない。──応援している。行こう、城之内さん。」


そう言って、城之内さんが少しふらついていたから手を貸してあげた。


 ──転倒などしようものなら危ないからな。


(よし、これで、僕のミッションは終了だ。)


少し歩いたところで何故か城之内さんがゲラゲラと涙を浮かべながら笑い出した。


 その上で、


『女の子にどんな誘惑をされても靡かない自信があるか?』

『付き合っている人はいるか?』

『受験が終わった後、女の子に告白されたらどうするか。』


と意味不明な質問を矢継ぎ早にしてきた。


(──どうして城之内さんはこんな質問してくるのだろうか。)


単純にそんな事を考えて困惑してしまう。


 だが最後の質問に対して、『…その時に考える』と伝えると、何故か嬉しそうにニヤニヤし出したので、居た堪れなくなってしまった。


「…そろそろ食堂に行くぞ。きっとみんな待ってる。」


僕が声をかけると、何故か満面の笑みを向けられて──僕は不意に気づいてしまった。


(そういえば、この子は美人なんだったな。)


財前以外の周りの男達が騒いでいたのを思い出してしまった。


 だが、城之内さんが美人であろうとなんだろうと僕には関係ない。どうせ縁がないからだ。


(とりあえず、城之内さんが性感染症に感染することもなく、無事救い出せて良かった。)


そんな事を思ってしまった。


◇◇


 次の日、なんとなく心配になり城之内さんの教室をチラ見すると、彼女が僕の姿を見てパッと目を輝かせた…気がする。


(…なんだ?いや、きっと気のせいだろう。)


「っ、四之宮君っ!!来てくれたの?!嬉しいっ!!」


そう言って抱き付かんばかりに何故か駆け寄ってきたので、すかさず気まずくて避ける。


「…あー。昨日話していた男が同じクラスと言っていたから心配になって覗いただけだが。」


僕の言葉にさらに城之内さんが何故か頰を紅潮させて上目遣いで見てきて困惑する。


「…優しいんだね。」

「…?普通だが。」


僕がスタスタ歩いていくと、何故か付いてくる。


「あ、待ってよー。」


──まるで小型犬に懐かれたようだ。


 食堂に着くと、伊集院さんと財前が目の前に座っている。僕が財前の向かいに座ると、城之内さんが僕の隣に座ってジッと僕の顔を見てきた。


 何故か、斜め向かいの伊集院さんまで真剣な目で僕と城之内さんを見ており、財前は戸惑ったような顔をしている。


(…さっきから何なんだ?)


僕が訝しげに城之内さんを見ると、慌てて目を逸らされた。


「宮西と和田は?」

「ああ、先生に質問しに行っている。」


僕はなんとなく感心してしまう。


「そうか。あいつらも頑張ってるんだな。」


すると、再びキラキラした目で城之内さんが僕の方を見てくる。


「四之宮君って、友達思いだよねっ!!」

「…普通だと思うが。」


すると伊集院さんが突然、突拍子もないことを言ってきた。


「あのあの!!受験が終わったら良かったらみんなで遊びに行きませんかっ?!」


そう言われて僕は困惑する。


「──ああ。別に構わないが。だが受験まで、まだ数ヶ月ある。終わってから考えても良いのでは…?」


僕がそう言うと、財前が口を開く。


「…二人は受験のモチベーション維持の為にインセンティブが欲しいらしい。」


「──なるほど。それは一理あるな。わかった、良いだろう。」


すると城之内さんと伊集院さんが手を取り合って喜んでいる。そんなに喜ぶほどのことだろうか。


「まあ、詳細を詰めるのは受験が終わってからだな。」


僕がそう言ったところで、和田と宮西がランチのお盆を持って帰ってきた。どうやら先生に相談していたのは宮西で、和田が一緒に話を聞いてやっていたらしい。


「…ただいま。どうした?宮西。深刻な顔をして。」


「…うん。実は俺さ。文転しようか迷ってて。

 ほら、俺の父さん税理士だからさ。法学部もいいかなーなんて。」


その言葉に僕は目を見開く。


「──そうか。」

「どう思う…?」


宮西に心配そうな顔で言われて僕は考える。


「良いと思うぞ。職のことまできちんと考えているなら尚更、な。」


「ああ、入ってからが大変かもしれないが、宮西は結構お調子者で弁も立つからな。

 ──弁護士なども向いているかもしれない。」


僕と財前の言葉に、宮西が泣きそうになっている。


「…二人とも。ありがとうっ!」


「…ということは、宮西君は、国立大文系コースに変更するのかな?」


隣で首を傾げる城之内さんに宮西は頷く。


「うん。明日から変更してもらうことにしたよ。」


「──!!じゃあ、明日から、私と同じ授業ですわね。宮西さん、よろしくお願いします。」


伊集院さんがそう言うと、宮西が嬉しそうに頷いた。


「うんっ!宜しくねっ。伊集院さん。良かったー。一人でも知り合いがいて。」


こうして、宮西は次の日から伊集院さんと同じ授業を受ける事になった。


◇◇


 ──コンコン。


 次の日。僕と財前がそろそろ寝ようと準備をしていた時、ノックの音が響いた。


 すると、UNOを持った宮西と和田が立っていた。


「…どうしたんだ?先生に見つかったら大変だぞ。早く入れ。」

「…いや。ちょっと話したいと思ってさ。」


そう言って宮西と和田が部屋に入ってきた。


 僕達は小声でUNOをしながら話す。


「…宮西。今日から文系クラスだっただろう。どうだった?授業はついていけそうか?」


僕が尋ねると、宮西は頷く。


「ああ。授業は全然余裕。…ただ。」


そう言って何故かチラッと財前の方を見る。


「…なんだ?」


財前がその視線に訝しげな顔をする。


 すると、宮西が言いづらそうに切り出した。


「…同じクラスの天宮って奴。多分伊集院さんのこと、めっちゃ狙ってるよ?」


その言葉に財前の顔がヒクリと引き攣った。



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