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偏差値70なのに恋愛経験0の二人の理性が崩壊するまで〜財前慶一郎と伊集院桜子の恋  作者: 間宮芽衣


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第二十五話◇会えない二週間と、夏の予感〜財前慶一郎視点


◇◇財前慶一郎視点


「…はぁ。」


思わず漏れた溜息に、自分でも驚く。


「──どうした?財前。」


四之宮が怪訝そうに覗き込んできた。


 実は、僕が風邪をひいてしまったせいで、先週はお見舞いで桜子さんに少し会えただけだった。


 そして今。


 期末テストまで、あと二週間である。


 二週間前のお見合いの儀の後、桜子さんや家族と話し合って決めたのだ。


 ──テスト二週間前から、テストが終わるまで会わないと。


「…桜子さんに、テストが終わるまで会えない。」


すると宮西と和田が生暖かい顔でこちらを見てきた。


「あーあ。伊集院さんに会えるようになってから、財前って大体それしか悩んでねぇよな。俺も事務の女の人とデートしたいわ。」


「幸せな奴だな…。」


そんな事を話していると、四之宮がクイッと眼鏡を上げた。


「三人とも受験期にたるんでいるぞ。今日は図書館で全員で志望校の赤本を1回分解こう。そして、終わったらアイスを食いにいくぞ。」


「えー、金ねぇよ。」


宮西がそんな事を言い出したので僕は溜息を吐く。


「じゃあ僕が奢ってやるよ。最近作ったアプリが結構ヒットしたからな。」


すると、四之宮が心配そうに僕を見てきた。


「──財前。君が優秀なのはわかるが、受験期にわざわざアプリを作らなくてもいいんじゃないか?」


四之宮の言う通りだ。僕は勉強に集中できなくなった時に気晴らしに可愛い黒髪の女の子が勉強すると励ましてくれるアプリを制作した。


 それをAppleストアで販売したのだが、そのアプリが思いの外ヒットしてしまった。


 ちなみにもちろんモデルは桜子さんである。だが、本人の許可は取っていない。その女の子、『Sakura』が可愛すぎると今巷で話題になってきてしまっている。


 ──まあ、イラストなのでバレる事はないだろう。


「まあな…。気分転換のつもりだったんだが、思いの外ヒットしてしまい、自分でも驚いている。」


ちなみに、僕は桜子さんにそっくりな女の子よりも、やっぱり本人に会いたい。


「…あまり無理はするなよ。」


四之宮の言葉に僕は頷くと、四人で図書室に移動して勉強した。


 ──この四人で一緒に勉強するのもあと半年ほどかと思うと感慨深い。


 すると、宮西がこんな事を言い出した。


「──なぁ。全員同じ大学に受かったらさ。またこうして四人で勉強しようぜ。」

 

宮西の言葉に思わず笑顔になってしまう。


「…僕も同じ事を思っていたところだ。」


そんな僕の隣で和田がボソリと呟く。


「俺、大学に入ったら絶対鉄研に入るわ。」


「いいんじゃないか。とりあえず、全員で受かれるように頑張ろうな。」


こうして僕らは四人で集中して勉強した後、近くのショッピングモールにアイスを食べに行った。


 ──期末テストが終わったら、もう少しで、夏休みである。


◇◇


 家に帰ると、桜子さんから何か荷物が届いていた。


 箱の中にはCDと、GABAチョコレートが五袋、そして久しぶりに手紙が同封されていた。


『慶一郎様。

 お元気ですか?


 その後、お身体の調子は如何でしょうか。

 もうすぐ期末テストですね。


 僭越ながら、最近私がよく聞いている『集中力を高めるアルファ波ミュージック』を同封させていただきます。


 音楽には周囲の雑音を消すマスキング効果があるそうです。


 さらに、クラシックやアルビエント等のゆったりした音楽は脳をリラックス状態にし、セロトニンが放出され、アルファ波を作り出すそうです。


 また、そうすることで集中状態を維持できる、とのことです。会えない期間は寂しいですが、お互いに頑張りましょう。


 追伸──恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり

人知れずこそ 思ひそめしか。


 最近、クラスて慶一郎様とお会い出来るようになってから『可愛いくなった』と褒めて頂ける機会が増えました。…恥ずかしいですが、嬉しいです。


 テストが終わって、早くお会いできますように。』


その手紙を見てじわじわと嬉しさが込み上げてくる。


 調べてみると、これは拾遺集の壬生忠見の和歌らしい。恋をしたのを周囲に秘密にしていたのにバレてしまい恥ずかしい、といった内容である。


(──こうやって調べてみると、和歌も面白いものだな。)


僕はCDプレイヤーに早速もらったCDをセットする。


 すると、なんだか優しい音色の音楽が全身を包み込むように聞こえてきた。


 僕は、気合を入れると真剣な目で問題集を解き始めた。


◇◇


 ──そして二週間後。テストが終わり、順位が張り出された。


「すっげー。四之宮が生物と数学が一位、財前も数学と古文と物理が一位か。半端ねえな。」


和田が感嘆の溜息を吐いた。


「──そういう和田も10位以内に入っててすげぇじゃん!何したの?俺、二十六位だったわ。」


宮西が羨ましそうに言った。


「スタサプやってみたんだけどさ。結構俺に合ってたみたいで。不思議とスマホいじるのだったら苦にならないんだよね。」


そう言って和田が宮西にスマホの画面を見せている。


「へぇ…。いいじゃん!俺もやるわ。これならそんなに高くないし、親も出してくれそう。」


二人が盛り上がっている横で、僕はソワソワしていた。


(──この一位になった喜びを桜子さんに早く伝えたい!!)


すると、四之宮が僕の方を生暖かい目で見てきた。


「──財前。あまり羽目を外しすぎるなよ。

 それより、明後日から夏休みだ。

 皆でこれに行かないか?」


それは予備校の夏合宿のちらしだった。


 職員室の目の前に置かれていたらしい。全部で二週間で、合宿最終日に、全国模試を受けるというスケジュールになっていた。


「行くーー!!」

「俺もっ!家にいるより集中できそうだしな。」


僕もその言葉に少し考えたあと、頷いた。


(…二週間、桜子さんに会えなくなってしまうが。


 仕方ないか。)


「──ありがとう。四之宮。僕も行く。」


こうして高校最後の夏休みは、友人達と二週間合宿に行くことになった。


 早速僕は桜子さんにLINEする。


『──桜子さん。

 期末テスト、お疲れ様でした。


 実は夏休みは友人達と二週間、合宿で関西に行くことになりました。


 その前に良かったら貴女にお会いしたいと思っています。』


暫くすると、桜子さんから返信が返ってきた。


『──その合宿、丁度私も朱里さんと一緒に受けようと言っておりました。

 

 …では、夏休み中は毎日慶一郎様にお会いできますね。』


その言葉に、僕の頭の中でリーンゴーンと鐘が鳴り響いた。


(なん、だと。)


僕が固まっていると、四之宮が怪訝そうに僕を覗き込んできた。


「──財前、どうした?」


「…桜子さんもどうやらこの合宿を受けるそうなんだ。」


その言葉に三人が目を見開く。


「えー!!」

「羨ましいぞっ。この野郎!!」


宮西と和田が騒ぐ中、四之宮が嬉しそうに笑った。


「…良かったな。」


こうして僕はドキドキしながら夏休みを待つこととなった。

 

 ──その後、僕達は四人で再びドラッグストアに行った。夏休みの合宿に向けて、DHAとEPAを再び大量に購入する為である。


「──あ。」


宮西の言葉で振り返ると、この前ドラッグストアで遭遇した、コンドームカップルのうち、女生徒だけが違う男と歩いていた。


 新しい男も、近くの偏差値43程度の学校の男だった。

 

 僕達四人は固まってその二人を凝視してしまった。


 すると、男の方がドヤ顔で買い物かごにコンドームを三箱入れていった。


(…あ、なんかすごい既視感だな。)


「ありがとうございましたー。」


店員の声と共に二人がドラッグストアを出ていく。


 脳裏に過ぎるのは、この前あの女生徒と歩いていた少し腹の立つ顔の男子生徒だった。


「…なんか、あの時は腹立ったけどさ。

 あの男、ちょっと可哀想だな。今何してるんかな。」


宮西のその言葉に僕達は黙り込む。


「──さあ。知らんが、3年生の校章を付けていたからな。焦って勉強してるんじゃないか?」


四之宮の言葉に僕は頷く。


「ああ。きっとそうだ。頑張ってるといいな。」


僕は名前も知らない元コンドームカップルの男に心の中でエールを送った。


参考:ヒーリング音楽がもたらす驚きの効果

https://croix.asia/magazine/healing-music-effect/#:~:text=3.,%E3%82%92%E6%9C%9F%E5%BE%85%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E3%81%A7%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%25E3%2580%2582

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