43 第三章:再会の夜 ――遊天の魂が残した“絆”
婚約から幾日。王宮の裏庭――
岬は一人、遊天の墓標の前で静かに語りかけていた。
「……遊天。
あなたが繋いでくれた絆で、私はここにいるよ」
月光が差す静かな夜。
ふと、風が揺れ、足元の草が優しくさざめいた。
「――泣くな、岬。せっかく綺麗な顔してんのに」
その声は――懐かしく、あたたかかった。
「……遊……?」
振り返ると、淡い光の輪郭が、木陰に浮かび上がっていた。
魂の残響、最期の想いが、岬の前に現れた。
「最後まで見守ってやれなくて、ごめんな」
「でも、俺の中でずっと信じてた。
お前が“誰の力も借りず、誰かと共に歩ける”って」
岬は涙を堪えながら、笑った。
「一人じゃなかったよ。レオンがいてくれた。
遊天が、繋いでくれたの」
遊天は少し照れたように、頭をかいた。
「……そっか。なら、もう思い残すことはねぇな」
「行っちゃうの?」
「……でも、また会える。きっと、お前が笑って生きてる限り。
それが、俺の誇りだからさ」
光はやがて、静かに夜風に溶けていった。
ただ一言、最後に響いた声だけが、空に残った。
「――しあわせになれよ、岬」
岬はその場にしゃがみこみ、手を胸に当てた。
「うん……うん、絶対なるよ。……ありがとう」
そして振り返ると、そこにはレオンがいた。
何も言わず、そっと岬の肩を抱き寄せる。
「行こう、岬。君となら、この先も越えていける」
「うん。……兄さんの想いごと、未来へ運ぼう」
二人の影は寄り添い、夜の静けさの中、
やがてまた――新たな物語が始まろうとしていた。
一気に思うままに書き上げたのでおかしなところもありますが、自己満足なので十分です。読んで下さった方ありがとうございました。