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40 亡き兄の言葉 ――残された“想い”
翌朝、岬のもとに、白い封筒が届けられた。
差出人の名はなかったが、封蝋は遊天の持っていた銀の紋章と同じ。
震える手で開封すると、中には乱れた文字で綴られた手紙があった。
『岬へ。
お前がこれを読むころ、俺はもう近くにはいないかもしれない。
それでも、お前が笑ってる顔を思い出せたなら、それで十分だ。
俺はずっと、守ることしかできなかったけど、
レオンなら、お前を“前に進ませる”ことができる。
だから、怖がらなくていい。泣きたい時は泣け。
立ち止まってもいい。でも――
絶対に、“自分の未来”を諦めるな。
お前がこの世界に選ばれた理由は、きっとその先にあるから。
兄より』
「……遊天、ずるいよ……そんなの……」
岬は涙を流しながら、手紙を胸に抱きしめた。
その背に、そっと手を添える温もりがあった。
「……見てるよ、遊天は。君のすぐそばで」
レオンが囁き、岬の涙をそっと拭った。
「さあ、行こう。――未来は、ここから始まる」
岬は涙の中に、強くうなずいた。
空は晴れ渡り、澄みきった光が王都を包んでいた。