39 静かな夜 ――想いが重なる灯の下で
即位の夜、王宮の高台にひっそりとした離れがあった。
レオンは、装束を脱ぎ、軽装のまま一輪のランタンを灯していた。
「……来てくれたんだな」
戸口に立つ岬は、白いドレスに身を包み、少しだけ戸惑いがちだった。
「……うん。なんとなく、顔が見たくて」
レオンは微笑むと、隣の椅子を軽く叩いて彼女を招いた。
「今日は、君に“王子”じゃなく、“レオン”として話したい」
「……私も、“未来の目”とかじゃなく、“岬”でいたい」
夜風が静かに吹き抜け、遠くから祝宴の音が響いていた。
「……遊天が、君を託してくれたとき、
本当は少し、嫉妬したんだ」
「え……?」
「兄のように、君のすべてを受け止められる自信がなかった。それでも、君が笑ってくれることが、僕の希望だった。……今もずっと」
岬は、ふと目を伏せたまま、静かに手を差し出す。
「じゃあ……これからは、支えてくれる? 一緒に……未来を歩いてくれる?」
「もちろん。君が望む限り」
手と手が重なり、どちらからともなく、肩に寄り添う。
「……ありがとう、レオン。遊天がいたから、今の私がある。
でも、これからの私は、あなたと共に在りたい」
二人の間に、確かな約束が灯された。