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36 夜明け前の決意:ふたりの覚悟
その夜、ふたりはしばらく何も言わず、ただ寄り添っていた。
けれど、やがて岬がゆっくりと顔を上げた。
「私ね、もう逃げないよ。お父さんのことも、亜雷族のことも……遊天の遺してくれた想いも。
全部、私の中にある。それを……背負って、生きていくから」
レオンはその目を見つめ、深く頷いた。
「俺も決めたよ。王子として、お前を守る。
けれどそれだけじゃない。俺は、“お前自身”を守りたい。
岬という一人の人間を、これから先、共に歩む相手として」
彼の瞳には、迷いのない決意が宿っていた。
岬はその想いを受け止め、静かに頷いた。
「……ありがとう、レオン。私、強くなる。だから……一緒に、いてくれる?」
「いつだって、隣にいる」
夜が明け始め、東の空が淡く白んでくる。
新しい朝が、ふたりに差し込む――
失ったものの大きさを知りながら、それでも前へ進むために。