32 ◆ 第二幕:岬の覚悟と、男たちの決断
静けさの中、レオンが一歩前に出る。
「岬。君がどんな選択をしても、私は君を尊重する。だが……王国の未来を揺るがす“鍵”である以上、危険も伴う。だから、今ここで、誓ってくれ」
「……何を?」
「自分自身を、絶対に見失わないと。――誰かに愛されても、憎まれても、君が君でい続けると」
岬は少しの間だけ、瞳を閉じ、頷いた。
「誓うよ。私自身で在り続けるって」
それを見届けた遊天が、ゆっくりと歩み寄り、手を差し出した。
「……だったら、俺は黙って支える。兄として、お前が立ちたいって言うなら、俺は“背中を守る”って決めた。逃げたりしねぇよ」
岬はその手を、そっと握り返す。
(私には、この二人がいてくれる――)
そして、レオンがその横に並び立ち、言った。
「今夜をもって、私も決断した。岬、君を王国の“鍵”としてではなく、たった一人の女性として……傍で見守る」
その言葉に、遊天は肩をすくめた。
「……まったく、やりづれぇ相手が増えたな」
三人の感情が、激しくぶつかりながらも、ようやく一つの方向へと動き出す。
その夜。
ラヴィーナの陰謀を暴くため、三人は「彼女の動きをあぶり出す作戦」に出ることを決意する。
岬は、あえて表に姿を見せて自らを囮とし、ラヴィーナが放つ刺客や工作員を引き寄せる。
遊天とレオンは、それを影で援護しつつ、裏で繋がる貴族や密偵を潰していく。
その中で、岬は民衆の中に自らの居場所を見出し、レオンは王家のしがらみを振り払い、遊天は「守るだけの兄」から「共に進む兄」へと――それぞれの成長が始まっていく。