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29 ◆ レオンの選択 〜王子として、ただの男として〜
宮廷会議の場。
「異邦人を擁するとは何事だ!」「王家の名に泥を塗るのか!」
老臣たちの怒号が飛び交う中、レオンは静かに立ち上がる。
「私は彼女を信じている。彼女は我々の敵ではない。むしろ……未来を救う存在だ」
会議室が静まる。
その堂々たる声音は王子としての矜持そのものであり、同時に、彼女への確かな想いの証だった。
だが、私的な空間に戻ると、彼はひとり悩む。
手のひらに残る、岬の指に触れた微かな温もり。
彼女に触れるたびに、王子ではなくただの男になっていく自分。
(この想いを貫けば、彼女をさらなる危険に晒すかもしれない……それでも)
「――私は君を、手放すつもりはない」
そう呟くその目は、迷いながらも強く。
王子としての責任と、ただ一人の女性を想う心の狭間で、彼は――岬を選び続ける覚悟を固めていく。