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28 ◆ 岬の行動 〜誰かに守られるだけではなく〜
王都の空気が、冷たく変わった。
ラヴィーナが岬の出自を暴露してからというもの、街中では彼女を「異邦の者」「災いの元」と囁く声が増えていた。好奇の視線、恐れの視線、そして、妬みと憎悪を混ぜたもの。
岬は、痛みをこらえながらも街を歩いた。目を伏せることなく、堂々と胸を張って。
(怖くないわけじゃない。でも、逃げたくない)
その背中には、遊天が黙って付き従っていた。兄として、剣として。だが、彼女はそれでも一人で立ちたかった。
――夜。
ひっそりと眠る庭園の石畳を、一人、岬は歩いていた。星の光が白く照らす中、剣を抜く。
「私は……この手で守りたい。誰かの未来を」
形見の竹刀を模して鍛え直した短剣を構える。
父が語った“未来の目”としての力、長老ゼイナの言葉、そして王国に忍び寄る陰謀――
彼女は、自らの意思で戦う道を選び始めていた。
その夜以降、岬は密かに剣の訓練を再開した。
守られる少女から、共に戦う者へ。
レオンにも、遊天にも頼るのではなく、彼らと並び立てる自分になるために。