20 【三】岬 ―揺れる想い、交差する視線―
夜、窓辺に腰かけて、岬はぼんやりと外を眺めていた。
王都の夜景は美しく、どこか現実味がない。
けれど、その景色よりも、彼女の胸を占めていたのは、ふたりの男性のことだった。
(遊天は、最近少しだけ距離がある気がする)
助けてくれて、守ってくれて、そばにいてくれた。
からかってくるけど、優しい眼差しを知ってる。
なのに今は……彼の目が、自分をどこか遠くに見るようで、寂しさが募っていた。
(レオンさんは……優しい。真剣で、誠実で、話すたびに安心できる)
彼の手が触れた夜を思い出す。
胸の奥が、ふわりと熱を帯びる。
けれど――
「私……どっちかを選ぶとか、そういうことじゃない」
声に出した瞬間、心がざわついた。
(どちらかがいなければ、こんなに苦しまなくて済むのかな)
でもそれは、あまりに自分勝手な願い。
誰かを選ぶことは、誰かを傷つけることなのかもしれない。
ただ一つわかるのは――
(私はもう、誰かに守られるだけの子供じゃいられない)
明日からも、決断の連続だ。
父を探す旅も、亜雷族の真実も、これから向き合わなくてはいけない現実。
その中で、「想い」だけは、置き去りにはできなかった。