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15 ◆レオンの心の中 ――「王子として、男として」
“彼女”を見つめるたび、胸の奥がざわつく。
なぜだ。
なぜ、君はそうやって何の壁もなく、僕に言葉を投げかける?
王族に対しても、気を遣わずにまっすぐな瞳を向けてくる。
民の声を恐れず、未来を変えると言ってのける。
君のような存在は、危うくて、脆くて……それでも、どうしようもなく輝いて見える。
でも僕には、ラヴィーナがいる。
彼女は政治的にも最適な婚約者であり、幼い頃から隣にいた人間だ。
父からも、臣下からも、期待されている。
なのに――
なぜ、君を見てしまう?
なぜ、ラヴィーナに抱いたことのない焦りを、君に感じてしまう?
王子として、君を見てはならない。
だが、男として……僕の心は、すでに君の影を追っている。
君の笑顔に、僕の未来は揺らいでしまっている。