森山さんちのさくらちゃん
森山さん家の事情。
「嫌な物を見つけてしまった……」
家捜しなんてするもんじゃ無いな……。
最初にネタばらし。バラさないと無理だって……だって部屋の中で見つけてしまったのだから……。遺書っぽい物を見つけてしまったのだから……。娘……さくらちゃんの……。
さくらと言っても、私は生きてるぞ?死ぬ気は無い。この家の娘、森山さくらちゃんのだ……。名前まで一緒かよ……。
朝、たつえさんに起こされ、朝食をいただいた後。2度寝するはずだったのに……。懐かしさのあまり……。ついつい、机にあった中学生の教科書を、流し読みしてしまったのだ。
そして見つけた……。机の引き出しの下にある、隠し引き出しに……。そこに、残る。一枚の紙に……。
まさきが同じ事をして。よくお小遣いを隠していたから、無意識的に調べてしまった。
まぁ、それは殆ど私のお菓子に化けたのだが……これは、お菓子には化けない……。化けるのならば、オバケにだろう……。
ここ!事故物件ならぬ。事故部屋じゃねぇか!おい!とんだ所に閉じ込めてくれたな!じいさん!
『私は、お父さんの言う。良い子にはなれませんでした。ごめんなさい。学校にお友達も本当はいませんでした。ごめんなさい。おかあさんもお父さんも家にいなくて。本当は毎日さみしかったです。でも、良い子にしないとと思って、言えませんでした。ごめんなさい。私は本当は学校でイジメられていました。ごめんなさい。もう、学校に行きたくありません。ごめんなさい。でも、怒られたくもありません。ごめんなさい。今まで、ありがとうございました。さようなら。さくら』
自分の親にあやまり過ぎだ……。馬鹿者……。孤独……。いじめ……。私には一応。弟と妹がいる。この子は家でも独り……外でも独り……。あの像の様に独り戦って。多くのアリンコに心を殺されたのか……。
……いやいや……!違う違う!どうせ実は。家出でした~!テッテレ~ってオチだ!きっとそうだ!
じいさんも、妻と二人事故で死んだ。って言ってたらからな……。
「……………………。」
自殺って……事故じゃねえよな?自己は自己だが……。自己死で死んだとかなら……。奥さんまで、自己死しちゃってる可能性があるぞ?
うぉぉぉい!!!いってぇ!……風でカーテンが揺れただけかよ……。脅かすなって!燃やすぞ!机に腕を思いっきりぶつけただろが!ヒビが進行して、割れたらどうすんだ!
はぁ……。煙草吸った後、窓。閉め忘れてたわ……。しかし。これ……。窓でいいんだよな?ベランダへの扉?引き戸?窓?サッシは違うか……。ベランダ前のガラス窓の引き戸。後で、ググろ……。
どうしよう。何か怖くなってきたんだが。寝る前に恐怖動画とか、見るんじゃ無かったわ。信じてねぇけど、お化け屋敷の臨場感とか……やなんだよ……。
とりあえず、下に行って。たつえさんに聞いてみよ。何か、知ってるだろうし。
……………………。辞めときゃ良かった。
号泣じゃねぇか!大人の女性がぐっふぐっふいいながら泣くとか!これは、ただ事じゃねぇ!どうしよう。とりあえず……逃げるか?あ、おい!抱っこするな!何処へ連れて行く!2階?部屋に監禁するのか?
「ご覧下さい……」
階段上がって右奥の右の部屋……?…………書斎か?難しそうな本がいっぱい。売ったら結構お金に…………。たつえさ~ん!勘弁して!こんなの見せるなよ~。オバケの方がましだって……。
まぁ、当たり前だけど、暫く使って無いのみたいだな。埃が凄い……。そして……。あの輪っかの付いたロープと……絨毯のドス黒い染みよ……。
はぁ、やだ……。やっぱ、出て行こうかな。ここ……。
「私は……あの子の母親でした」
「え?」
じゃぁ、さくらちゃんは……じいさんとたつえさんの不倫で生まれた子って事か?
「私は、旦那様……たもつの元妻なんです。この子が死んで……。一度は別れたのですが……。その後、借金しながら、自堕落に生きている所を……たもつに色々と助けられまして……そのお礼にと。ここで働いているのです」
「そうなん……ですね」
失敬、邪推が過ぎた。しかし……重い重い!話しが重い!思いが重い!こんなのに関わりたくないから、孤独でいるのに!
まぁ、孤独なのは、元々の私の性格がよくないせいなのだけれど。
自覚はちゃんとしているのだ。しかし、お友達のいない。私にだけ優しい。お金持ちの。お友達が欲しい。これが本音なのだから仕方が無い。
「ごめんなさいね……急に……。本当は黙ってるつもりだったんだけど……。もしかしたら……。手紙に気付かない私達に、あの子が怒って。あなたに想いを託したのかも知れないわね……」
「………………」
私も邪推が過ぎたが、たつえさんアンタも大概だな!いい話風にしようとしてるが、託されても困る!
あぁ~憂鬱だ……。パチンコ行って脳味噌空っぽにして、夢詰め込みたい~……。あれ?って事は、じいさんが言ってたパチンカスの奥さんって……たつえさん?おぉ……。仲間がおった……。
この子の境遇は、可愛そうだが。死んだこの子を想ったところで、私には何も出来ん。陰陽師でも、ネクロマンサーでも無い。普通のおばさんなのだ。
そして、時間は死人ではなく、生者の物なのだ。なので私は、私の未来を見よう。未来のお話しをしよう。
「あの……たつえさん……行きたいところがあるんですが……」
「え?何処ですか?」
って訳で。やって来ました!地元の住人の憩いの森!はぁ、嫌な事があった後はこれだ!
「はぁ~、今はこんなにきらびやかで仰仰しいのばかりなんですね」
「どうしよう……やっぱ、海ですかね何年やって無いんですか?」
家に引き籠もってから、何年パチンコやって無いんだろ?まぁ、パチンコ行かないから、引き篭もりって訳でも無いが……。
「えっと、あの家に戻ってからなので、10年ほどですかね?」
「なら、あんまり内容は変わって無いですね~」
10年前……4号機の終わり頃か?もうちょい前か?後か?……はぁ、あの頃に戻りたい……。
「私は……休憩所にいるので……終わったら……」
「いや、来たら打たなきゃ、ほらほら」
過去の縛りだか、自戒の念だか知らんが。パチンコに来たら。Wi-Fiを盗むか、本を読むかひたすら打つ!これしかない!
「でも……娘が……」
「あのね……。たつえさん。毎日娘を思って、ひっそりと生きるのもいいと思うけど、自分を許す許さないも自分次第でいいと思うけど。それ、毎日。楽しい?」
私は無理だ……。たとえ誰が死のうと……好きなことはする。
お前は冷たい人間だ。それは人を愛したことが無いからだ。とか言う人間もいたが……とりあえず蹴飛ばした。
「楽しいって……それは……」
「それってさ、娘のせいで今は好きなこと我慢してるんだよね?そんなの死んだ娘が可愛そうでしょ。まぁ、たつえさんがそれでいいっていうなら……!!!!!」
いったぁ……。だから人と関わるのは嫌なんだ……。
「私が!いままで!どんな気持ちで生活してきたか!昨日、今日あったばかりのあなたに!私の一体!何がわかるって言うのよ!!!!」
いや……わからんて……わからんからこうして殴られてる訳であって……。友達もいない訳でありまして……。また……やってしまった……。
おいおい……ここ、パチンコ屋だぞ……。養分ども、そして強敵よ。シーンとするな。自分の台に集中しなさい。はぁ、たつえさん。怒って帰っちゃった……。
まぁ、いいか。今夜はもう、アパートに帰ろ。明日も、明後日も……。自分の巣穴が一番良い……。自分の為にも、人の為にも……。
「はぁ~ダル……」
店員は来るわ。恥ずかしいわでうてんかった……。ってか。また口切ったし……。
「……あれ?カギかかってる。何で?」
いつもはカギかけてねぇのに……。あれ?カギ……。何処だ?そもそもこのアパートカギあったっけ?いや、無いわけないだろ馬鹿者。本当に……馬鹿者め……。
「さくらさん!良かった!いた!さがしましたよ!」
「じ、森山さん……。なんでここに……まだ、昼……」
アブね、じいさんて言いそうだったわ。しかし、家出がもうバレたか……。まぁ、行くとこ……ここかパチ屋位だしな……。バレるか……。
「たつえさんから連絡があって……色々と……聞きました。たつえさんとけんかしたようで……」
「はい……」
怒ってないのか?ニコニコしちゃって……。笑顔の裏で激怒とかは、嫌だぞ……。怒るなら、最初からコラってしてくれ……。
「ちょっと……ドライブしませんか?」
「はい……」
私……。コーヒー渡せば、ほいほい付いていく軽い女だと思われてるのか?120円の女だって……。まぁ、行くけど。行くとこ無いし、鍵ないし。それに、価値を見いだしてくれてるだけありがたいのか……。
はぁ、痛い……。せっかく。口の中の傷になれたのに、また、血の味がする……。
それにしてもじいさんは、勉と違って気が利くな。ストロー付きのカフェオレチョイス。それにストローをちゃんとさして渡してくれるなんて、本当に優しいな……。何で?……って……娘に似てるからか……。
「いやぁ、たつえさんが、あんなに慌てて焦ってるのは久しぶりでしたから、どうした物かと思いましたよ……。あんなのは、娘が死んだとき以来です……。たつえさんに……全部、聞きましたよね?娘の事。何があったんですか?」
「実は……」
お前は知りすぎた!とかいって。このまま、海にドボンとかやめてね。海沿い走ってるけど……。
マリンちゃんもウリンちゃんもワリンちゃんも、リアル海にはいないから助けてくれないんだ。サムは論外どっちでも出てこん。
「おやおや。へぇ~……。家から出たんですか?たつえさんが……13年間、庭にくらいにしか出なかったのに……」
「そう……なんですか?」
13年って。引き篭もりのレベルが私の非じゃねぇ!ヤバいだろ。私は頭が悪い病気だが。13年閉じこもるって心の病気じゃねえのか?普通に見えたのに……。何か、悪いことしたな……。
「たつえさんは……。妻は、娘が死ぬ前からパチンコ三昧で……。私も、仕事の帰りに、妻と一緒にするパチンコが楽しみでした。そして、娘の気持ちをずっと。ないがしろにしていた事に、無くしてやっと……気づきました。ご飯や、勉強道具や、お小遣いをあげておけばいい。そう、思ってました……」
「そう、ですか……」
大人って言ってもそんなもんだろ。大人になりたくて、大人になるヤツなんてそんなにいない。だけど……親には願ってなるもんじゃ無いのか?知らんけど。
「娘の手紙……読んだんですよね?どう思われましたか?」
「……。親に対して……あやまり過ぎだ。と思いました」
「そうなんですよね……。もう、遅いですが……言って欲しかった……。怒って欲しかったと……今更……思います。ハハハ、親なら気づけよ馬鹿って話しなんでしょうけどね……」
「……」
まぁ、そうだとは思うが……。私も気付かないだろうな……。たつえさんの気持ちもわからずに。ビンタされるくらいだしな……。
「たつえさんは僕と離婚した後は、借金しながらギャンブル三昧で、見つけた時はその……夜の怪しいお店にいました……。あ、僕が行ったんじゃ無いですよ。たちんぼって言うんですかね?あれで、たまたま知り合いが見つけてくれまして……」
「……」
だから……話しが重いって……。そして、ソープくらい知ってるわ!にゃんにゃんなお店だろ?お試しの日給狙いで働こうと思ったけど、ガリガリ過ぎて無理だったわ。ご苦労賃で2000円貰えたからいいけど。
「それで、借金等等を僕が払って、今の感じになったんです。あの部屋はそれまで、僕の自戒の念でそのままにしていたんですが、娘が妻に合わせてくれたんだ。と思ったら、何だか自戒の念でそのままにしているのが、娘に申し訳なくなりまして……。娘に大事なことを教えて貰った。と思うようにして、片付けようとしたんですが、今度は妻がね……」
「自戒にしちゃったんですね……」
それから13年ずっと……。てか、天国の娘よコイツらに天罰でも喰らわせたらどうだ?良いように使われすぎだぞ?まぁ、無理か、死んだら、金どころか米粒ひとつも持って来やしねぇからな。
「それから、週末の買い物以外はずっと……。家から出なくなっちゃいました……」
「そうだったんですね……」
無いものにすがりたい気持ちはわからんでも無いけど、すがりきる気持ちは、私にはわからん……。いくら神頼みしても、パチンコには勝たん。御百度参りしたが、普通に負けたわ!紙は死んだ。:キミチェ。
「でも、今日は家を出て、パチンコ屋さん行ったんでしょ?僕は心が踊りました……。また、妻とお出かけ出来るんだって……。なので、さくらさんには、とても感謝してるんです。ですから……たつえさんを許してあげて貰えませんか?勿論。嘘をついていた僕もわるいので、ちゃんとあやまります。すいませんでした」
「ちょ!前見て!良いから!私も悪かったから!前!」
運転中にこっち向いて頭下げんな!怖ぇわ!
「おや、うっかり。では……さくらさん。家に戻って来てくれますか?」
「……。わかりました」
行くとこねぇしな……。にしても、たつえさんと会いづれぇ……。
「ありがとうございます」
「だから、前見ろって!」
まだ、死ぬ気はねぇんだって!孤独で蠱毒な私だが、死ぬ気はないのだ。生きる気満々なのだ。
「ハッハッハ。良かった良かった」
「はぁ……」
溜息しか出らん。何がそんなに嬉しいのやら……。まぁ、結局。色々と割り切っても……さみしいんだろうな……。危ない!闇落ちしそうになった!危ない!明日こそパチンコ!行くぞ~!
「お嬢様!すいませんでした!私は何という事を!」
「いえ……私も考えが至らず……すいませんでした……」
いや、土下座は辞めて、そしてそんなに本気で泣かないで。流石に私も心が痛むって……。ちょ……だから……。抱っこしなくて良いんだって。部屋まで自分で戻れるから……。
「本当に……ごめんね……」
扉の隙間から覗きなさんな。子供みたいに……。もう、いいから……。はぁ、何か疲れた……。
「さくらちゃんよい、戻って来ちゃったけど……化けて出ないでね……」
しかし、つくづく人の幸せってのはそれぞれ違うんだなぁ……。面倒くさ……。
ふぁ~……ねむ……ちょっと昼寝しよ……。自分専用の脳味噌が人の情報入れすぎて破裂しそう……だわ……。
さてさて、色々と巻き込まれ中の公子さん……公子さんはなぜ?こうなってしまったのでしょうか?次回……わかるかも?w
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