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アリに食われたゾウ

公子さんは生きていましたw

「知らない天井だ……」

 まさか、言ってみたいセリフ上位であるこれが言えるとは……。ってか、どこだここ?保健室にしては、豪華じゃないか……?個室だし。


「それ、エヴァ?」


「うぉ!あいったたぁ……。なんだ、勉か……。びっくりさせるなよ。エヴァ、知ってるの?」

 だから……気配が薄いんだよお前は……。


「うん、全部見た」


「そうか、私はやっぱり。かじさんが好きだな、あのフランクな感じと色気がいいよなぁ」

 かじさんになら、抱かれて、捨てられてもよき。


「俺は、アスカ……かな」


「あぁ、お前は、女の尻に敷かれたいタイプなのか、まぁ。賢明だな……。てか、ここ、保健室?」

 グイグイひっぱって欲しいのは一部の女だけなのだ。男を尻に敷いて、一生ヒモ生活……最高……。まぁ、それが出来るのも、選ばれし者のみだが。


「ここは、病院」


「はぁ?何で?」

 おいおい、入院とか!保険証ねぇから、等価交換だぞ!10割負担!無理だって!私を錬金しても、せいぜい洗濯ばさみが出てくる位だぞ?


「手……気付かないの?」


「え……。何これ?折れたの?」

 頭のこぶの方が痛くて気づかんかった。


「ヒビ……。殴られた時、入ったみたい」


「あぁね、キャベツ生活の弊害か。てか、金ねぇんだから、保険室で良かったのに。骨のひびくらい、牛乳と煮干しで治るんだし」

 いつも、キャベツだから、風邪ひいてもヤクルトで治るのだ。栄養吸収率100%。パチ屋でヤクルトを飲んでるばぁさん達は、正しいのだ。


「でゅふ……。牛乳と煮干しじゃ治んないよ。ここ、僕んちの親がやってるから、お金はいらないよ」


「そ、そうなんですね……お世話になります」

 でゅふって。……笑い方よ。


「殴られた頭の検査とかあるから……2,3日は安静だって」


「そうか」

 ふむ。まぁ、悪くないな。殴られて3日タダ飯。たまには良いこともするもんだ。慰謝料は、まさきがふんだくってくるだろう。


「あの、公子さん……ありがとう……ーー」


「お目覚めになられた様ですね。私、この子の父親で、ここの副医院長をやってます。谷川ひさしと言います」


「ど、どうも」

 だから。ノックした後は、返事があってから入れって。お前は、うんこしてるときにドアを開けられても平気なのか?うちのアパート、鍵壊れてるから開くんだぞ?


「この度は、愚息をイジメから救っていただいた様で……ありがとうございました。こんなか弱そうな女性に助けて貰うなんて、本当に情け無いヤツだ」


「すいません」


「すいませんね。本当にコイツは誰に似たのか、勉強も駄目。スポーツも駄目で、あの女が浮気でもして作った子供かも知れませんね。ハッハッハ」


「そ、そうなんですね」

 子供の前でそんな話しをするんじゃない、そしてハッハッハって。ブラックジョークが過ぎて笑えんわ。


「お金の方は心配いらないのでゆっくりして行って下さい。息子の恩人ですので、大歓迎です。一応、こんな愚鈍で役立たずの息子でも、息子ですのでね。ハッハッハ」


「……」


「おい、お前は黙ってないで、お礼とかちゃんと言ったのか?」


「ありがとうございます」


「まだ、言って無かったのか?この馬鹿が……。すいませんね本当にコイツは馬鹿で」


「おい、勉……。私をおんぶしろ」


「え?」


「帰る」

 これ以上は、無理だ。


「え?どうされたんですか?何か気に障る事でも?」


「ありすぎだ。馬鹿。勉!早くしろ」

 まったく、あたた……もうちょっと優しくおんぶしないか……。はぁ、震えてるじゃないか……。


「馬鹿……?」


「あぁ。アンタがどれ程偉いか知らんが、この子が役立たず?お前は馬鹿だ。そして、その目は節穴だ……。ここで検査とかされたら、殺されるかもしれん、行け、勉」

 あらあら。ポカンとしちゃって、あぁ、気持ちいいわ。ムカつく金持ちは、私の敵だ。


「ふ、節穴ってあなた、私の事知らないでしょう、そして、そいつの事も!」


「あぁ、知らん。知らんけど、人に優しく出来る優しい人間だって事は知ってる。じゃ、お世話になりました。行け」

 勉はピヨの大事な友達なのだ。まだ、1日だけどね。


「まったく、ろくなもんじゃねぇな……」

 本当に、毒親ってのは話にならん。どいつもこいつも、自分の事ばっかりだ。人の気持ちを考えて生きろっての、他人の事など考えたくないからと。万年孤独でいる蠱毒な私を見習え!


「ご、ごめんなさい」


「なにが?」


「うちの親が……というか、僕が……弱いから」


「それやめろ。ありがとうございますでいいんだ。子供が大人に気を遣うな、つまらん」


「ごめんなさい……」


「だから……。あやまるな。勝てねぇもんは勝てねぇんだって、アリンコがゾウを倒す話し知ってるか?あ、おいあそこでコーヒー買え。尻ポケットに財布があるから……。馬鹿!何処さわってんだ!」

 お尻は良いけどそこは駄目だ。新品の未開封なのだ。まぁ、たまに使うので新古品だけど、子供にはまだ早い。


「ご、ごめんなさい。ってかおんぶいつまで?」


「家まで。お、ご苦労……はぁ、勉、お前は気がきかんな、開けろよ」


「僕だって、片手……いたっ……もう」


「ほら、出来たじゃないか、ご苦労……」

 はぁ~。染みる~ってか、てか本当にしみる……いてぇ。口の中切ってるわ。


「で、アリンコが何なの?」


「あぁ、そうだった。あれは凄い事だとして語るような、馬鹿な大人にはなるなよ。お前はゾウになるんだ」


「殺されて死ねって事?いった……。ゲンコツしないでよ」


「あの話しはな、数の暴力の話しだ。孤独なゾウを虫けら達がよってたかって殺すんだ。ゾウは大きいだけで、別に悪くないだろ?」


「でも、それは、自然界の……いたっ」


「馬鹿者、ここは日本だサバンナは無い。ライオンもダチョウもゾウもいない、キリンも中々来ない」

 本当に、赤が熱かった頃が一番ヒリついたのに、色んな柄作り過ぎだ。


「キリンが来ない?」


「何でも無い。こっちの話しだ。ゾウだ。ゾウは無数のアリンコと一人で戦ったんだぞ?凄いじゃないか、ゾウは。ゾウがアリコンに何かしたか?」


「巣を踏んだかも、もしたしたらアリンコを踏んじゃった……いたいってもう」


「正論を言うヤツは嫌われるぞ、モテないぞ。だから人の話は黙ってきけ」


「聞いてきたのは、公子さんじゃ……いたいってば……わかったよ」


「いいか、ゾウは優しいんだ。プレミアだしな。だから、優しくて大きい男になれ、そういう事だ」

 うん、良いこと言った。スッキリ~!


「アリンコ関係無くない?いたい!もう!おろすよ!」


「フフフ……それでいいんだ。我慢する事は無い怒れ、親父にもそうだ。あれは、駄目な親だ。そしておろすな、貧血でまだふらふらする」


「もう……。怒れって、無理だよ……学費だって、生活費だって出して貰ってるし」


「金か……せちがれぇ世の中だなぁ……おい」

 金かぁ、私も欲しいなぁ……。


「でも、高校出たら家を出るから良いんだ。もう少しの我慢だから」


「そうか、なら程々に頑張れ。家出先と、仕事は紹介してやるから、グレたくなったら言え、何とかしてやる。まさきが」

 アイツ、顔が広いし金持ってるからな。私が借りてる。138万3560円の取り立ても、してこねぇから。子供のひとり位大丈夫だろ。


「まさき……さんてさっきの?」


「あぁ、良く出来た弟だ、いつか私は殺されるかもしれん」


「でゅふ……。公子さんジャギなの?」


「だはっ。お前のその笑い方よ……。知ってるのか?ジャギ」

 面白いから、つられて笑ってしまうわ。


「いつも、学校で本読んでるから……」


「友達は?」


「家があれだから、あんまり近寄ってこないんだ。それに、アイツらがいつも来るから……みんな離れてって」


「そうか、なら問題ないな。学校の友達は学校の友達だ。そして、友達なんかいなくても死なん」

 私は毎日元気だ。友達紹介キャンペーン以外には何も困らん。


「その考え方、さみしくない?」


「全然。さみしい時はひとりカラオケでも行ってアニソンでも熱唱すればいい」


「もしかして、公子さんて友達いない……いた!」


「お前、個人情報保護法って知ってるか?逮捕されるぞ」


「暴行罪も……いたいよ、もう!」


「お前はまったく……。おし、ここまで良いぞ、良く頑張った。降ろせ……よし。駄賃にこれやる」


「え、飲みかけ……てか、殆ど入って無いじゃん」


「おいおい、お姉さんが飲んだコーヒーのカンカンだぞ?間接キス出来るチャンスだ。飲んだらすてとけ」


「いらな……いって!蹴らないでよ。捨てとくよ」


「よろしい。あ、学校の自転車あれ乗って帰って良いぞ。通り道だったらな」


「通らないから、明日持ってくるよ」


「何で?いらんなら置いとけよ。明日帰りに乗るから」

 二度手間が過ぎるぞ。こいつお節介で、迷惑かけるタイプか?


「いや、手……。レジ打てないじゃん。一時おやすみでしょ?」


「あぁね、頼むわ……それと、これピヨにわたしといて……。うまい棒はしばらく無いから」

 レジどころか、パチも……いや、スマートなら打てるか、右手は無事だし、青たんスゲ~けど。


「わかった。でも、5000円も何で?」


「理由はピヨに直接聞け。そして勉も話せ。友達は別に居なくてもいいけど、居てもこまらんだろ?ボッチ同士仲良くしろ」


「でゅふ……なんだよそれ、じゃ公子さんも……いって!マジで痛いって!」


「舐めるな小僧、お友達はいっぱい。いる」

 エアー友達のユリアとお銀ちゃんとムムちゃんにマリンちゃんにウリンちゃんにワリンちゃんに……とにかくいっぱいだ。優しいかと言われれば、そうでも無いけど、塩対応位が丁度良い。友達なのだから。


「お嬢様!どうされたんですかそのお姿は!」


 「あ、あの、これはその……」

 病院の入院服のままだったわ。それに左手にギブス……。どう説明したものか……。


 「あ、あの、僕、谷川と言います。公子さんが僕をイジメから助けてくれて、それでその……」


 「谷川くんが、ここまで送ってくれたんです。ありがとうね。谷川くんもう、大丈夫だから、帰っていいよ」

 ね、谷川くん帰りなさい。きょどってないで、ね。早く帰るのだ。私はここでは良い子なのだ。さっさと、帰れぇ!


 「あ、あの、では、失礼します」


 「ど、どうしたのかしらあの子。凄い怖い物を見た顔をしてたけど……あの子も怪我してるんじゃ……」


 「いや、相当、怖かったみたいです……」

 公子さんの睨みはひと味違うのだよ。子供の頃。まさきを顔だけで1000度は泣かせたからな。


 「ささ、早く中へ、もう、ふらふらじゃないですか、よっと……フフフ……お嬢様はもっと太らなければいけませんね」


 「す、すいません……」

 ほぉ……見た目以上に力持ちだな。今日は、学校から部屋まで。おんぶに抱っこ……。小さいのもたまにはいいもんだ……。




 「さくらさん、谷川君のお父さんから電話がありました。大変でしたね。体調はどうですか?」


 「大丈夫です」

 あの七三分け、変なこといってないだろうな。言ってたら、病院に爆弾仕掛けた。ってまさきに電話させてやるからな。覚悟しとけよ。


 「怪我のショックで錯乱していた……。とおっしゃって心配されていましたが、大丈夫そうで良かったです。これ、お見舞いです」


 「あ、ありがとうございます」

 シュークリーム!うまそうじゃねぇか!良くやったじいさん!しかし、さくらだけに錯乱とは、上手いこと言うじゃねえの。あの七三分け……。


 「それで、さくらさんをこんな目に合わせた学生ですが……退学にして、被害届を出して人生を終わらせてもいいでしょうか?」


 「え!いや、駄目ですよ」

 いや、怖ぇ事言うなって、じいさん!そんなキャラじゃないだろ?本性知らんけど。


 「何故ですか?僕、凄く怒っています。さくらさんが何故こんな目に……。僕はまた娘を……」


 「いや、相手はまだ子供ですし……ね。怪我はしたけど、生きてますし……」

 本当は殺してやりたいが、まさきに頼んだので今頃、死に目に会ってるだろう。24時間サンドバッグか?前は。私を蹴飛ばしたヤツを顔だけ出して2日間山に埋めてたな。舎弟のりゅうきと一緒に。蹴ったヤツの顔も身体も虫食われやらで、キモかった。


 「じゃ、泣き寝入りですか?」


 「いえ、一度はチャンスをあげないと……」

 生きるチャンスを……。2度目は絶対殺す。


 「はぁ、さくらさんは優し過ぎます。では、流石におとがめ無しとはいかないので、二人は停学にしておきます」


 「はい。あ。あと……」

 もう、誰かはわかってんだな。勉か言ったんだろう。


 「はい。やっぱりやりますか?」


 「いえ、谷川君の事なんですけど……」

 病院での事は一応言っといた方が良いだろう。学校の生徒の事だ……。私だけでは無理だ。


 「なるほど……。そんなことが……。それでさくらさんどうしたいのですか?」


 「私……ですか?」

 どう?……私どうしたいんだろ?


 「何かしたいのなら、協力しますが、家庭の問題なので、あまり力になれないかも知れませんねぇ」


 「そう、ですよね」

 そりゃ、そうだ……。私は今、何を期待したんだろう?何がしたかったんだ?


 「色々とあって、少しお疲れのようですね……今日はもう、おやすみになってください」


 「はい……」

 頭が悪いのにボコボコ叩かれて、さらにおかしくなったのかもしれん。寝よう……。それがいい……。


 「そうそう、腕のギブスがとれるまで、家で安静にしていて下さいね。お仕事はいっとき、おやすみです」


 「はい、わかりました……。おやすみなさい」

 まじか!?わ~い!やった~!祝ニート生活!バンザ~イ!


さてさて、さっそく心に変化が現れてきた。公子さん。次回はお家での話し……。家の秘密が明らかに……。


ブクマ:評価:コメント等々よろしくお願いします。

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