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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

没故 潰れよ 穴㌘

作者: HORA

俺の名前は名倉亜武(なぐらあむ)(19)。高校卒業後に動画投稿サイトのY〇U TUBEに毎週末に心霊企画の動画をあげると決めて投稿を続けている。ストックしていたネタは僅か2カ月(8回分)で尽き、その後は近場の心霊スポットを訪れ動画を自撮り棒で撮影・編集しては20分程の動画にして投稿。独りでやっているので編集はお粗末なものである。フリー素材を拾って作っているのでどこかで聞いた音楽、どこかで聞いた効果音、どこかで見た編集。投稿を重ねるごとに投稿動画に愛着や達成感こそはあったが、閲覧数、登録者数、いいぞ!といった評価は増える事はなく、収益化の見通しは立っていなかった。


高校では県内有数の進学校に通ってはいたが、部活が終わった後の勉強の追い込みがうまく行かなかった。スポーツや推薦で大学が決まった友人や学力が十分に足りている友人が周りに多かったためか、ムードが受験という感じにならなかった。高校3年の秋冬という最も受験にとって大切な時期をそいつらと一緒につるんで遊んでしまい、結果わずか数点が届かずに大学受験に失敗し浪人生となってしまった。


周りの友人は皆が大学に進学し、新しいステージへと足を踏み入れている。今更後悔しても遅いのだが、完全に取り残されてしまった俺は浪人生になったと周りに言うぐらいであったら、Y〇UTUBERになったと言いたかったのだ。何か自身の立場を惨めだと認めたくなかった。1年後の地元での集まり、もしくは2年後の成人式までには有名Y〇UTUBERとなり、大学生活を満喫しているやつらを見返そう。と、安易に考えてしまっていた。


今思えば俺の人生は中盤は上手く行くのだが終盤で散々な結果となる事が多かった気がする。


小学校2年の時に始めた習い事のスイミング。初日にいじわるをしてきた1つ年上の先輩がいた。その先輩はその行為をコーチにしこたま怒られていたのだが、それを根に持たれたのか、長い間一度も口を利かず無視しあっているような関係になった。

そのいじわるな先輩のタイムを抜くために小学2年から小学5年まではぐんぐんと実力を付け、1つ上の先輩と並ぶ程のタイムを出せていた。あと少しでタイムが抜けるというタイミングでその先輩は中学に進学してスイミングを辞めてしまった。噂では中学では水泳は完全に辞めてソフトテニス部に入ったらしく、その時に俺は何とずっと張り合っていたのだろうと虚しくなってしまった。結局小学6年では、自身の小学5年の記録を抜く事すらできずに、自身も小学校で水泳を辞めてしまった。


中学の部活は団体競技のハンドボール部を選んだ。理由の1つは水泳と違って団体競技なので皆でわいわい楽しめるのではということ。もう1つは中学から皆がスタートさせる部活であるということ。バスケやサッカーであると小学校組が多数おり、中学から始めたのではレギュラーになれないだろうと考えてだ。

1年後半からメキメキ上手くなり、レギュラー入り。2年では県大会で上位にまでいった。しかし3年に上がるタイミングで、1,2年と俺達を指導してくれたハンドボール経験者の監督が転勤して俺達の中学を離れてしまう。3年で新たに顧問となったのは新任教師でハンドボール未経験者。大切な3年夏の最後の大会では【1年から3年までを満遍なく出場させる】と言う謎の采配で地区大会でまさかの1回戦負け。毎日走っていたハンドボールのコートは負けた日から一度も近寄ってすらいない。


高校でのボート部も中学をなぞった様に同様の展開。ボート部を選んだのは個人・団体の両方があり、監督コーチの試合中の采配は競技に影響しない。水泳に競技の仕組みとしては近い。個人競技の水泳と団体競技のハンドボールの良いとこどりのように感じていた。

1年でガンガンとタイムを更新し続け、2年でレギュラーを獲得する。チームメイトとも仲良くなり県大会のベスト8入賞を果たす。3年夏の最後の大会の日、風邪を引き出場できないまま個人も団体も迷惑をかけつつチームも地区予選敗退して引退。


もちろん全国制覇という結果で無ければ誰しもどこかで負けて引退という結果となるのだが、そういう話ではない。ただただ不満を抱えたまま終わってしまうのだ。しかもそれを次に活かし、上手くやれば良いと毎回のように思うのだが、僅か半年後の大学入試においてもやらかしてしまう。学校生活で成績は常に上位をキープできていた。中学・高校と6割程しか得点できていない相手を見下していた。

「対して努力せずに8割程取れている俺よりも点数低いってどーよ?授業聞いてるだけで8割なんて簡単じゃん。」

しかし自身も同様に9割取れている相手から見下されていたと気付くのが遅すぎた。努力が当たり前の相手に努力をしていないと見下されていると気付くのが遅すぎたのだ。


だがそうは言ってもプライドの高い俺はY〇UTUBERを職業として解釈。4カ月経った8月現在、未だ1円も稼ぎを出せていないながら投稿を定期的に続けている。動画のストックは全く無く毎週土曜の19:00の投稿に向けて、大抵土曜の18:50頃まで編集作業をしている。


土曜夜の投稿の後、日曜は夜まで休み、そこから次の心霊スポットの下調べを行なう。独りで原付バイクにて向かうために近所の交通の便(べん)や、コンビニの有無をマップで調べる。また心霊スポットのいわれや歴史なども動画撮影中に語ることになるので台詞におこしていく。その心霊スポットで俺が言わなかった情報が別のY〇UTUBERや心霊を取り扱うサイトに()っているとかなり悔しいので、徹底的に調べ尽くしておく。あくまでネット上で調べるだけで、その地域の図書館の歴史民俗コーナーから該当の心霊現象を探すまではやらない。Y〇UTUBEの視聴者層はそこまで深い情報を求めていないだろうからだ。


水曜日か木曜日の夕方に動画撮影のセットをリュックに詰めて、心霊スポットの近場のファミレスかコンビニに寄る。食事や軽食をしつつREC中の台詞(セリフ)を確認して夜を待ち、心霊スポットへ。そこで動画を撮影してから深夜に自宅に帰りすぐにPCのHDDに録画データをコピー。動画の見どころ部分と分かりにくい発言部分だけ思い出しながら文字起こしをしてから朝方に眠る。

そして金曜、土曜に編集作業。動画が20分程になるように編集する。テロップを入れ、音楽や効果音を入れるなど。今や慣れたもので早ければ4時間程で投稿できるまでに持っていけるようになった。

ただ動画が面白いかどうかは別である。心霊スポットで心霊現象が起きたことはこれまでに無い。それっぽく驚くリアクションなどはしているのだが、何の不可解な現象をも撮れていなかった。浪人生という側面もあったのだがもう勉強は一切できていない。大学受験をしていた頃が遠く過去のことのように感じられる。今すぐ動画投稿なんて辞めて、浪人生として勉強に取り組んだ方が良いだろう事はうすうす分かってはいたが、ルーティンが出来上がっており辞める事ができなかった。たとえ登録者やいいぞ!、閲覧が伸びていかなくても。


7,8月の心霊スポット巡りには別の問題があった。1つは同業者。とは言っても、相手はプロなのかアマチュアなのかは分からない。ネットやSNSに載っている心霊スポットには、他の撮影者・肝試しに訪れている大学生、一般人などがおり、出会うと双方にビビるのだ。2つ目は虫だ。夜の林や森、廃墟を行くと照明に群がる虫が恐ろしい程に寄ってくる。虫除けスプレーなどなんのそので、撮影していても動画としてあげるのを躊躇うレベルで画面内に大小様々な虫が納まる。払っても払っても纏わりついてくるので潰すのだが体液が飛び散り体や機材に付く。虫がダメで動画を見てくれないと困るのでモザイクを動画に終始入れ続けるのだが、編集にも相応に時間がかかった。


別のY〇UTUBERの数万回再生されている心霊スポットを回る動画を見るも、自身の動画との大きな違いは見られないように思う。しかし、自身の再生数は伸びずコメントも来ない。多くの人に周知してもらい見てもらえれば登録者も増えるはず。やはりバズる何かがとっかかりとして無いとダメなのか?どこか有名人が紹介してくれないと駄目か?有名Y〇UTUBERとのコラボをしていかないと伸びないのか?色々と戦略を考え、まずは同様に心霊系のY〇UTUBERにコラボ依頼のメッセージを多数送る。


自身がどうして心霊コンテンツを選択したのか?これは消去法であった。話術一つでコンテンツが作れるほど口は上手くない。協力してくれる友人はいない。ゲーム実況は浪人生でもあるという僅かなプライドからゲームは好きだが選択できなかった。ファッションなども小中高と制服で服装には興味を持ってこなかった。

その一方で、心霊コンテンツは各地に無数に存在している。言ってみれば学校ごとにあるほどだ。更にちょっとした音や光などのわずかな異変があるだけで、いや、異変すら無くても深夜、心霊スポットを撮影している雰囲気だけで十分楽しんでもらえるはず。人の心を動かすハードルが低いように思う。

撮影の流れも非常に単純であり、独りで行なうにはこれしかないと思うようになった。心霊スポットとなったいわれ(・・・)等を冒頭に語り、雰囲気を作った後は心霊スポットを自撮りしながら巡るだけ。べらべら話す必要が無い。足音と息遣い、大げさに驚く声などがあれば成立する。編集も少なく回しっぱなしの方がむしろ臨場感があって閲覧数は良い程であった。


100人以上のY〇UTUBERに送ったコラボ依頼のメッセージの大半は返事すら無かったが、一部良識のある人は断りのメッセージを入れてきてくれた。やはり無名で1度もバズってすらいない相手は見向きされなくて当然だろう。だが断りのメールの中で知り合いのY〇UTUBERを紹介してくれるという内容があり、しばらく連絡を取り合った結果、隣県の大学2年生、一人でY〇UTUBERとして活動している新名(あらな)という人物なのだそうだ。新名(あらな)という人物の投稿されている動画を確認してみる。金髪で派手な服装。指輪をしてネックレスをじゃらじゃらとつけたチャラい小男の新名(あらな)が雑多なコンテンツ、、歌ったり、踊ったり、視聴者とLIVEで会話したり、実験的なことをしたり、を投稿している。その大学生Y〇UTUBER新名(あらな)も大して有名だとは言えないし動画も正直面白くない。それでも登録者数が3桁いるので、やはり現役大学生という付加価値はあるのだろう。直接やりとりをして心霊系コンテンツと説明しコラボに協力してもらえることになった。


俺としては初めてのコラボ。しかも、してもらうという立場であったので気を遣い、台本を作りメールで送ったり打ち合わせを打診したりしたが、

【あ~。そういうのあんまり好きじゃないんだよね。その時のノリでいいっしょ。夏休み中はこっちも遊びとかバイトとか自分のY〇UTUBEの企画とかで忙しいからさ。そっちはいつでも良いよね?浪人生なんでしょ?日時はこっちが決めるからさ。】

と言った返事が返ってくる。贅沢は言えない立場であるし、確かに夏休みやら関係なくこちらは自由がきく。ただ新名(あらな)という1つ上の大学生のノリにはついていけそうにない。メッセージで2,3回やり取りしただけで新名(あらな)という人物とのコラボを既に後悔し始めていた。


1週間程して昼12時過ぎ。新名(あらな)からメッセージ

【今日の夜の予定がポシャっちゃったからさ。今夜いっとく?】

その日は自身の動画撮影のために別の心霊スポットに行くつもりであったが、新名(あらな)に合わせる事にした。何か非常識な感じの文面ではあったが、ある意味うじうじと撮影を引き延ばされて、ずっと悩みの種となるよりは、さっ!と、ぱっ!と終えられた方が楽だな。と気持ちを切り替えて、こちらからもメッセージを送る。

【はい。お願いします。コラボ助かります!では新名(あらな)さんの大学近くのファミレスT〇MAT〇〇NIN〇に21:00に来ていただいておおまかな流れを確認しましょう。撮影機材やら台本はこちらで用意しますが、新名(あらな)さんの方でも撮影して投稿していただいても当然構いません。】

【り】


簡素な返事ではあったが承諾を得た。そして、夜20:40。原付で2時間程かけて新名(あらな)の通う大学近くのファミレスに到着しドリンクバーを注文しつつ新名(あらな)の到着を待つ。今回の心霊スポットは新名(あらな)の大学構内における心霊の噂を撮影するのだ。

独りでの撮影であれば台詞(せりふ)を噛んだり間違えても簡単に撮り直し編集で何とかすることができるが、コラボであると迷惑がかかるのでいつも以上に冒頭の台詞をしっかりと入れる。かといって台詞に気が行き過ぎても、やり取りが下手であったり間が空いたりするとコミュ力を低く見られてしまう。年こそ1つ上だが偏差値は20も下の3流大学生にコミュ症呼ばわりされるのだけは勘弁したいので上手く返したい。本日は別の心霊スポットに行く予定であったので憶えていた記憶をいったん追い出して、しっかり今夜の分の流れと台詞(せりふ)を憶えておく。


ふと時計を見ると21:14。待ち合わせの21:00を過ぎても新名(あらな)は来ていない。スマホの通知も無い。ドリンクバーを取りに行きつつ店内を見回してもそれらしき人物はいない。このまま音信不通になってしまうことを考えて緊張だか、ストレスだかで滝のような汗を全身からかく。メッセージをこちらから入れるが返信が無い。



21:57。あと3分程連絡が無ければ帰ろう。今から自宅に帰っても日を跨いでしまうな…と思っていた時に新名(あらな)はやってきた。

「わり。こいつらと一緒に飲んでてさ。携帯見てなかったんだわ。じゃ行こっか。時間遅いからさっさと撮っちゃおう。」

突っ込みどころだらけだか、音信不通という最悪の結果に比べればなんてことはない。ただ気になったのは新名(あらな)の他に友人と思われる4人が一緒にいたことである。しかも全員手ぶら。歩いてここまで来たらしい。

「今日さぁ、(たける)ってやつが車出してここにいる5人と出掛ける予定だったんだけど、(たける)に今夜ぁ急にバイト入っちゃってさー。だから急遽でゴメンね!あっと、誰だっけ?あー亜夢(あむ)君、亜夢(あむ)君。で、え?撮影機材?あー。まぁ、、スマホでいいっしょ。こいつら?俺は撮影の時って映るのは俺だけだけど周りに友達呼んで気持ちを盛り上げるタイプなんだよね。」

なんだこいつ。1歳上だけど大学に入ると馬鹿になるのか?今日駆り出されたのは…つまり(たける)ってやつのバイトのせいか…。まぁスマホはえらくお高いものみたいなので撮影は問題無いだろうが、盛り上げてもらうタイプって意味が分からない。確かに新名(あらな)の投稿した動画を見た際にフレームの外から野次のような声が聞こえていたが、それはこいつらだったのか。大学までは1km程。新名(あらな)と友人4人は徒歩で来ていたのでだらだらと30分程の道を大学まで歩くハメになった。俺は原付を押しながら新名(あらな)と友人4人のくだらない酔っ払いの会話を薄く聞きながら何故か10m程先を大学に向けてとぼとぼと歩く。


大学の正門からの撮影で始まる。あとは流れで回しっぱなし、編集でどうにかする予定。

俺と新名(あらな)の2人が、俺の自撮り棒のカメラのフレームに入り撮影(REC)を開始する。新名(あらな)の友人達もスマホで外から動画撮影をしているようだ。




撮影はまぁ散々だった。深夜3時過ぎに自宅に帰り、いつものルーティンで動画を見返す。眠気は感じていない。

俺が撮影の冒頭、大学で広まる心霊現象の噂やその体験談などを紹介している最中に外野から野次が多数入る。

「女性だけじゃないよ。」「え?俺はB棟って聞いたけど?」「え?そんな時間やっけ?24時ぴったりって聞いたけど?」「そうそう。確か金のネックレスをしてたら助かるみたいな」「俺つけてんじゃーーん。いえーい。」

そもそもが新名(あらな)と友人4人はお酒を飲んでいるからか、全く恐れを感じていないのだ。テンションもノリノリであり、どんどん行きたい方向に進み自由に発言する。カメラのフレームから新名(あらな)が何度も外れ、俺が追いかけてフレームに入れるという追いかけっこを何度もしている状態であった。撮影中にも関わらず新名(あらな)の友人達は好き勝手どうでも良いことを話し、新名(あらな)もまさかそのやり取りに加わり会話を始める。こいつらの存在の方が俺にとって特大ホラーであった。

撮影が終わりコラボに対してお礼の言葉を伝えたが、新名(あらな)はこんな遅くまで拘束されただとか、こんなのどこが面白いの?とかぶつぶつ文句を言いながら、友人達と帰っていった。


しばらくはボツにするかどうか悩みはしたが何とか編集、編集、編集、で15分程の動画にしていつも通りの土曜19:00に初のコラボ動画として投稿したのである。自身では客観的に見れない動画の出来ではあるので結果がどう出るのか楽しみではあった。




BANされた。



しばらく何が起こったのかが分からなかった。自身のチャンネルを開くためにログアウト、ログインを繰り返すが出るのは機械的なメッセージ。

【ガイドラインに違反していたため、このアカウントを停止しました。】

それから自身の過去に編集したHDDに保存してある動画を最新のコラボ動画から(さかのぼ)って一から全てを見返し、何か問題は無かったかを丸3日程かけてチェックしたのだが、ガイドライン違反に該当する部分は発見できなかった。Y〇UTUBEに問い合わせのメールを送っても返事が無い。わずか5カ月弱ではあるがずっと続けてきた活動に終止符を打たれ絶望感に打ちひしがれた。


そこでふと新名(あらな)の方で撮ったコラボ動画がどのようになったかと、何気なく新名(あらな)のチャンネルを見てみる。


するとあのコラボ動画がバズっていた。閲覧回数は10万回を越え、新名(あらな)のチャンネル登録も以前の10倍以上になっている。タイトルは

【まじもんの霊が映ってる!閲覧注意!】

動画を確認すると、新名(あらな)の友人がスマホで撮影していた動画。その中に確かに白いふさふさの何かが画面の端を出たり入ったりする様子が確認できた。あー。でもこれ新名(あらな)の友人の一人が腰からさげていた何か用途の分からない白い棒状のファーなんじゃ・・・?俺が一瞬で分かったと言う事は新名(あらな)やその友人達も分かっていて投稿しているということだろう。


捏造(ねつぞう)か…


俺はその日からしばらく新名(あらな)の大学に通いつめる。夏休み中ということで会える可能性は低い時期ではあったが、あの夜であっても構内に大学生は一定数いたので、部活やサークルなどの活動で大学に来ることがあれば会えると考えた。そして3日後、新名(あらな)の友人の1人だという(たける)と呼ばれている人物を捕まえてフレンドリーに話しかける。あの日急遽バイトが入っただかで会った事は無いが事情は聞けるかもしれない。


「いや~。俺もあの動画で映ってたでしょ?コラボ撮影手伝ってたんですよ~。まぁ俺の方は何故かチャンネルBANされちゃったんですよね。まぁもう大学入試のための勉強を開始する時期でしたし、登録も閲覧も全然伸びなかったので辞めようと思ってたので全然良いんですけど」

「そうなん?まぁ俺もあいつらも君の動画見てなかったけどさ。まぁ浪人生ならY〇UTUBE投稿なんて辞めちゃった方が良いよな。」

「あ、そうそう。新名(あらな)さんの動画はまだバズってるみたいですね。おめでとうございます!」

「みたいだな。内緒だけど、君んとこのチャンネルを通報したのは新名(あらな)だよ。」

「…へぇ…。…そうだったんですか??」

「そうそう。新名(あらな)とその知り合い何十人かで一斉にね。あの日撮影に参加した新名(あらな)と取り巻きの4人は確実に君のチャンネルを通報してるはずだよ。あ、俺はやってないからね。ちな、これ俺が言ったって内緒ね。」


なるほどね。Y〇UTUBEで成りあがっていくためにはそういうやり方もあるのか。社会は厳しいのだな。確かに新名(あらな)からすればバズった動画がコラボ動画だとすると都合が悪いのか。無かったことにするために手法ははっきりとは分からないが通報して弱小チャンネルを潰すことは一つの手なのかもしれない。新名(あらな)は心霊コンテンツに味を占めたらしく、それからも定期的に心霊現象が捏造(ねつぞう)されたやらせ動画を投稿し続け、登録者数と閲覧数を稼いでいた。




俺はY〇UTUBEで新規の動画チャンネルと投稿を計画する。

舞台とゲームを用意したならば、人を入れ替えるだけで1つのコンテンツで投稿し続けられるんじゃないか?台詞も、ルール説明をしてからは自らゲームに参加し楽しむだけで良い。負けた方が罰ゲームとして落とし穴に落ちるなんてどうだろう。大がかりな仕掛けではあるけれど何度でも使いまわせる。自宅の庭にセットを組んでしまえれば移動時間は0になるしな。呼ぶゲストはもう決まっている。


落とし穴を掘るだけで丸3日、自ら労働力になることで人件費、機材費はかなり抑え込んだが、それでもその他もろもろで費用は500万円程かかってしまった。しかしどれだけお金がかかろうがそんなことはどうでも良い。自宅の庭にテレビのようなセットを組み、大がかりなゲームを行なえるようにした。


【さぁ、今日も真っ赤になってしまう新たな被害者が訪れました。クイズニコニコY〇UTUBE!!動画投稿のプロとされているトップY〇UTUBERに関するクイズを出しますので私と対決してもらいます。向かい合う形の2つの滑り台の上に私と対戦相手。中心に落とし穴が配されており、落ちた方が敗者となります。問題に正解すれば滑り台はそのまま、間違えてしまうとなんとローションで滑りやすくなっている滑り台の角度が10度ずつ上がり、最終的にはどちらかが落とし穴に吸い込まれてしまいます。これまで50度という角度に耐えた記録がありますが、今夜は果たして更新なるか。落とし穴の中には大量のケチャップをぶちまけてありますので敗者は真っ赤になってもらいますよ!さらに落とし穴に落ちた後に第3の滑り台から大玉が落とし穴に向かって転がり敗者を押しつぶしてしまいます。】


どこかで見たコンテンツではあるが、一部でも変わっていれば苦情は来ないだろう。そんな動画を投稿し続ける。





「自称Y〇UTUBERの名倉亜武(なぐらあむ)容疑者(19)が自宅の庭で亡くなっているところを発見されました。Y〇UTUBEのサイト内へ名倉(なぐら)さんの投稿した動画に対して多数の人から警察へ通報がされており、事件が発覚したとの事です。なお、現在はその動画は閲覧が規制されています。


名倉(なぐら)容疑者の家の庭には名倉(なぐら)容疑者が自作したと思われる深さ2mの落とし穴が掘られていました。その穴に巨大な岩が転がり落ちる仕掛けが施されており、7人が中で圧死して亡くなっている状態で発見されました。身元が判明している3名は名倉亜武(なぐらあむ)容疑者。名倉(なぐら)容疑者の母親。そして名倉(なぐら)容疑者とトラブルを起こしており現在は連絡がとれなくなっているY〇UTUBERの新名(あらな)さんと見られています。警察では動画の解析や、聞き込みなどで未だ分かっていない4体の遺体の身元と、事件の捜査を進めているとのことです。」


享年19歳の俺の動画は数百万回の閲覧後にY〇UTUBE上から削除されてしまった。しかし有志によって保存拡散された殺人(スナッフ)動画がインターネットの中で、そして皆の心の中にも残り続けている。俺はついに有終の美を飾り有名Y〇UTUBERの仲間入りを果たしたのだ。

没故→BOTUYUE→Y〇UTUBE

潰れよ→TUBUREYO→Y〇UTUBER

穴㌘→アナグラム→名倉亜夢

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