薬を盛られたようです
兄様は普段は私と独占しあいっこしているが、さすがに教徒たちのカウンセリング中は私を手放す。
もちろん私もそれを当然だと思うし、だからその間は自然ふれあい体験の準備をして待つ。
待っていれば兄様が戻ってきて、穏やかな時間を二人で過ごすのが日常。
けれど今日に限っては違った。
ドスドスとすごい音を立てて兄様が現れた。お顔がものすごい不機嫌。
「え、兄様」
「キュー!」
ぎゅーっと強い力で私を抱きしめる。
どうしたことかと思えば何も告げずに部屋へ戻る兄様。
兄様は一人で部屋に篭り、側仕えの彼が教えてくれた。
「その、キューケン様」
「うん」
「大変申し訳ございません。ゴッドリープ様は…教徒の一人に媚薬を盛られました」
「…うん?」
媚薬って…え。
「え」
「ですがその女教徒には手を出していません。そして外部の教徒だったためそのまま破門を言い渡されました」
「そ、そう。兄様は大丈夫なの…?」
「強力なもののようで、大変お辛そうですがキューに酷いことをしたくないから部屋にいれるなとの仰せで」
「そっか…」
肝心な時に役立たずは嫌だけど、今回ばかりは本気で近寄らない方が良さそう。
「わかった、私は大人しくしてるね」
「はい、それがよろしいでしょう」
「しかし、ゴッドリープ様はこんな時ですらキューケン様を大切に思っていらっしゃるのですね」
ボディーガードの彼が思わずといった調子で口走り、手で口を塞いだ。
「うん、そうだね」
「すみません、こんな時に」
「ううん、私も思うから。兄様は本当にすごい。それに、ここまで愛されてるって思うと嬉しい」
「そうですね」
「でも、やらかした教徒さんには罰が下って欲しい」
私がそう言えば黄色い尻尾が視界の端に映って消えた気がするけれど多分気のせいだろう、うん。
その後、日が暮れても部屋から出ない兄様。
他の教徒には媚薬を盛られましたとは言えないから秘密で、風邪をこじらせて部屋にいるってことにしてある。
私は兄様が心配で眠れなくて、結局夜更かししてしまった。




