私にも縁談が舞い込んだ
「ゴッドリープ様はまさに神の子に相応しいお姿だな」
「お美しいことこの上ない」
「だがキューケン様もまたお美しい」
「少し喋り方は拙いが、天女と見まごう素晴らしい女性だ」
「お美しいキューケン様には、それに見合う素晴らしい男が必要だろう」
天女かぁ、照れるなぁ。
しかし幼女キューケンちゃんは、無事傾国の美女レベルの成長を遂げた。
みんながそう言い出すのもまあわかる。
前世の私とは似ても似つかないからなぁ。
ふと姿見の前でくるりと回ってみると、着物を着た美しい女がふわっと舞った。
「…うん」
この女が私だなんて。
そうは思うけど、これは現実だ。
兄様の妹なのだからこのくらいの美しさは必要不可欠だとは思うけれど。
「まあ、驕らず謙虚にいきましょう」
美しいのは純然たる事実だが、中身が伴って初めて褒められるものになる。
キューちゃんの中身は紛うことなき私自身なので、まあお察しなのだ。
ここに来てからというもの猫かぶりは上手くなったけれど。
さて、そろそろ行かなくては。
姿見の前から離れて、部屋を出る。
「キューケン様、キューケン様」
自然ふれあい体験の準備に境内に出ていたら、一人の結構な年齢の教徒に手招きされる。あのお爺ちゃん教徒はお寺には住んでなくて、たまに現れる神出鬼没なお貴族様だ。
ちなみに今までお目付役だったクマさんをあげた彼は、私が十八になった時にお役御免になった。
無論私が大人になったから。そして、彼にやっと自立して生活する目処が立ったからでもある。
同じくクマさんをあげた兄様の側仕えの彼も、自立した。二人で寺を出て、下山して暮らしているらしい。
新たに私のボディーガードに抜擢された教徒のお兄さんは、あんまり喋ってはくれないけれど優しい。兄様の新たな側仕えの教徒も熱心な人だ。
「どうしたの?」
ボディーガードのお兄さんとともに手招きされた方へ行くと、お爺ちゃん教徒さんは釣書を見せてきた。
「キューケン様ももう嫁にいく歳でしょう。ワシのひ孫はいかがでしょう」
「兄様を通さなくていいの?」
「ゴッドリープ様を通すと握り潰されますので」
冗談だか本気だかわからないことを言って笑うお爺ちゃんに私も笑う。
ボディーガードのお兄さんはそれを困った顔で見ていた。
「じゃあ、釣書だけあとで目を通しておくから部屋に持って帰っていい?」
「もちろんです、良いお返事を期待しておりますぞ」
にっこりと笑って下山するお爺ちゃんを見て、あの人はきっと百歳を超えても生き永らえるタイプだなぁなんて思った。
部屋に戻って釣書を見てみると、なかなか好青年。
伯爵家の三男かぁ…なるほどぉ…ほうほう、商才があって自ら商会を設立したと…結構資産もありそうな。
でも、まだ兄様と一緒にいたいんだよなぁ…婚約するのはいいにしても、結婚は先延ばししたいなぁ。
そんなことを呑気に考えていたから、ボディーガードの彼がいつの間にか退室していることにも気づかなかった。




