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神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました  作者: 下菊みこと


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とりあえず前世の傷を癒そうか

「痛いところ?」


「今世も前世も散々だったから、胸が痛むんだろう?」


「…うん、思い出すとやっぱり悲しい」


でもね、と番は続ける。


「兄様と会えたから。全部そのためだったから。だから、いいんだ」


「そっか」


なんて健気で儚い。


そしてその上で強い。


けれど。


「もう無理をする必要はないよ」


「わっ…」


胡座をかいて、キューを膝の上に乗せる。


「今まではそうして耐えていたのだろうけど。その言葉も嘘ではないのだろうし、オレは嬉しいけれど。そろそろ、自分のために泣くことも覚えないとね」


「…でも」


「キュー」


膝の上に乗った幼子に優しく語り掛ける。


「素直になって、兄様に甘えなさい」


「…ふ、ふぇ…う、うう…ぐすんっ」


オレの声には特殊な力がある。


やろうとすれば、相手の感情を引き出すこともできる。


もちろん感情を改竄するなんて芸当は無理だが、本人が隠している本音ならばいとも簡単に剥き出しにさせられる。


「兄様…兄様ぁ…」


「うん」


「うっ…ぐすんっ、うぇ…きゅ、キューね、本当はいつもとっても寂しかったの…ぐずっ」


「そうだね」


「キューね、兄様に会うまで寂しかったの、悲しかったの…う、うぅ…うぇえええええっ!!!」


普段聡明で大人しく可愛らしいキューは、その顔をぐちゃぐちゃにして大声で泣き始めた。


そんなぶちゃいくな顔もなお可愛い。


喚くような声も愛おしい。


溢れ出る涙さえ勿体無く感じる。さすがに舐めたら引かれるのでやらないが。


そんなことをしていたらドアの向こうから、キューが心配でこっそり外からちらちらと様子を気にしていた教徒たちが焦り出す気配を感じるがどうせ入ってこれないので放置。普通の声量の声は聞こえてないだろうが、この喚きはまあ聞こえるよね。諦めて聞いてて。


「兄様ぁー!キュー寂しかったのー!」


「うんうん」


「うわぁああああんっ!!!」


「そうだね、たくさん泣いていいんだよ」


涙は流れても流れても止まることはない。


けれどその代わりに、傷がたくさんついていたキューの心は重しになっていた苦しみが軽くなることで段々と修復していく。


「キューなんにも悪いことしてないのに!みんな意地悪だったの!うぇええええんっ」


「酷いなぁ」


「キューいい子にしてても褒めてもらえなかったぁっ!弟はちょっとしたことで褒めてもらえたのにぃっ」


こうなれば当然、今まで言えなかった不満も出てくる。


そうすればそうするほどキューの心は自由になり、傷の治りも早くなる。


「いいんだよ。そんな理不尽、怒っていいんだ。オレが許すよ」


「うぇええええええ!ばかー、あほー、まぬけー!みんなみんな大っ嫌い!弟と兄様とここの人たちは好きだけどー!!!」


こんな時でもオレへの愛を叫ぶのかとちょっと笑った。


ドアの外でも、キューの叫びを聞いた教徒たちが「好き」と言われたとそわそわしてる。


キューは罪作りな子だなぁ。


人誑しの天才かなぁ。


なぜこんな子がよりにもよってクソ野郎どもにこんなにも傷つけられてしまったのか。しかもその環境で弟は好きだったとか天使かな?


「まあ、オレとしてはそんなキューだから好きなんだけどね」


「キューも兄様が好きぃいいいいい!!!」


あー、これはあとで喉が枯れるだろうなぁ。


でも胸の傷をそのままにしておくよりも何倍もいい。


喉は起きたらケアしてあげようね。


さあ、文句も涙も出尽くしたところで。


「…キュー、少し寝ていてごらん。兄様の腕の中で」


「ふぇ…う…」


泣き疲れたキューは、オレの声の効果で途方も無い安心感を感じてそのまま寝落ちした。


布団にキューを寝かしてやる。


さて…ぐちゃぐちゃになった顔を濡らしたティッシュで優しく綺麗にしてやって、一応濡らした冷たいタオルで目元と喉を冷やしておこうね。


これで不満も悲しみも一度は外に出せたから、胸の痛みはだいぶ違うはず。


あとは、まあ、ね。やることはひとつだけ。

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