番の過去を把握した
「なるほどね…」
パラディース教に来るまでの、キューの過去を把握した。
嘘をつかずにきちんと申告してくれて助かるが、どうやらオレの番は思っていた通り恵まれない人生を送ってきたらしい。
神の子扱いもまあ、煩わしいものはあるが…忌み子扱いに比べれば些細なものだろう。
赤子のうちからそんな扱いを受け、しかもその記憶が消えずにある状態。
それどころか前世では親の暴力まであったのがわかった。従ってさえいれば大丈夫だったのだろうが、それはなんと空虚な人生だろう。家を飛び出して大正解だ。
「キューは偉いね。ちゃんと兄様と出会ってくれて」
「えへへ」
可愛い生き物をぎゅっと抱きしめる。
オレの番は偉い。
誰から愛されることもなく最期には通り魔に殺されたという前世の記憶、誰からも愛されず赤子のうちから忌み子扱いされていたという今世の記憶。
どちらもキューを苦しめたと思うとむかつくが、一方でそれら全てがキューを構成する記憶だと思うと愛おしい。
だから、記憶なんて結局はどうしてやることも出来ないのだしオレに出来るのは。
「可愛いね、いい子だね」
「ふふ、兄様くすぐったい」
褒めながら戯れつく。
こうして愛を注ぐことで、オレの番を癒してやれればいい。
「兄様はキューのまるごと全部が大好きだよ」
「キューも、ケモミミも宗教も全部ひっくるめて兄様の全部が大好き」
オレの今までも全てを受け入れてくれるという番は、やはりオレには無くてはならない子だ。
オレも番の今までを全て受け入れよう。
しかし、受け入れた上でどうするかは別の話。
前世の親どもは手の出しようがないが、今世の親は話が別だ。
キューを捨てたならば、それ相応の報いを受ける覚悟もあるだろう。
「けどまあ、まずはこっちだね」
「…兄様?」
オレのつぶやきに首を傾げる番に、微笑む。
「兄様はキューの兄様だからね、キューの痛いところは全部兄様が治してあげないと」
そう、微笑んでやった。
番にとって、オレはまだ「兄様」だからね。




