これでオレの番
キューはオレを疑わない。
キューはオレのすることに余計な疑問をぶつけない。
ただ、ずーっと一緒という約束の証だと喜ぶ。
ずーっと一緒にいられることを喜ぶ。
なんて可愛い生き物だろうか。
「…これでずーっと一緒だからね」
「うん」
花が咲くような笑顔。
オレがどんな悪いことをしているかも知らないで。
可愛い可愛い、オレの番。
「ふふ」
「兄様嬉しそう。キューもね、嬉しい」
疑うことを知らない子ではない。
聡明な子だ。
しかし、オレのことを疑うことはしない。
健気で愛おしいオレの番。
そう、キューは今この時よりオレの番となったのだ。
「愛してるよ」
「ふふ、そればっかり」
愛している、の意味が。
これまでの、妹に対する純粋な愛ではなく。
番とみなした女に対するものだなんて、まだこの子には教えない。
…まさか幼い頃からこんな苛烈で醜い、けれど甘美で幸福な感情を抱くことになるとは。
自分が人の子より恐ろしいほど成長が早いのも、それがあのクソギツネの影響なのもわかっていたことなのだが…これはさすがに予想外。
「…キューがさ、オレを大好きでいてくれるから。兄様がキューを大好きになったのも、当然の流れだよね?」
責任転嫁する。
だって、たとえ妖に片足を突っ込んでいようがキューの存在がなければこんな感情とは一生無縁だっただろうから。
オレが悪いとは思うけど、オレだけのせいじゃないと思う。
「当然じゃないよ。すごく特別なこと。キューは幸せ」
心底嬉しそうにそんなことを言うこの生き物が愛おしい。
守りたい、幸せにしたい、そばに置きたい。
独占したい、自分だけのものでいて欲しい。
多分良い感情、絶対悪い感情。
色んなものがごった煮になった愛。
「…騙し討ちしてごめんね」
「ううん。兄様との約束の証だもんね」
嘘ではないが。
そもそも約束の証だというのなら相手の承諾は必要で。
一方的なものなのに喜んでくれるのは愛おしいが、本来はもっと怒るべきだ。オレを大好きでいてくれるキューには、オレを怒るのは無理だろうけど。
それに、これはずーっと一緒にいるという約束の証と言えばそうだと言えるが。
ようは、番の証なのである。他の妖連中に見せつけるものだ。これはオレのものだから手を出すなよと。オレはあのクソギツネのせいで妖としての力も強いから、他の妖には手は出せまい。あのクソギツネは例外だが、手を出してきたら泣かす。
「キュー、左手は大事にするね。手を洗っても落ちないよね?大丈夫だよね?」
「左手以外も大事にしようね。何をしても落ちないから大丈夫だよ」
健気にも刺青を残しておこうとするキューにキュンとする。
番の証と知らないとはいえ、可愛すぎる。
本人に番となったことを伝えるのは、そして人間として制度的に正式に番となるのは当分先にはなるが。
オレはこの番を永遠に大切にすると心に決めた。




