兄様は私と約束をしたいらしい
「…ねえ、キュー」
「なに?兄様」
兄様が真剣な表情で私を見つめる。
「キューが変わらないでいてくれることが嬉しくてね、兄様はキューがもっと大好きになったんだ」
「嬉しい」
「それでね、だから大好きなキューとお約束をしたいんだ」
そう言って兄様は優しく笑う。
「お約束?」
「うんそう。兄様とずーっと一緒にいようねってお約束」
「うん、する。ずーっと一緒、お約束」
私は左手の小指を差し出した。
すると兄様は自らの左手の小指を絡ませる。
「指切りげんまん」
「嘘ついたら針千本のーます!」
「指切った」
いつもの謳い文句。
ずーっと一緒という約束。
とても幸せな約束。
兄様は蕩けきった幸せ溢れる笑顔を向けてくれる。
私も嬉しい、だけど。
「兄様?」
「うん」
「あのね、小指がムズムズするの」
兄様は絡ませた小指を離さない。
そして、絡ませた小指がなんだかこそばゆい。
それだけでなく、なんだかゾクゾクと寒気がする。
「大丈夫だよ、キュー。オレを信じて」
「う、うん。信じてるよ」
兄様のことは信じている。
約束も後悔していないし、本当にずーっと一緒にいたいと思ってる。
だけど、どうしてこんなに小指がこそばゆいのだろう。
どうしてこんなに寒気がゾクゾクとするのだろう。
どうしてこんなに心臓が嫌な音を立てるのだろう。
「…はい、完了だよ」
ふと、兄様がそう言った。
その瞬間こそばゆいのは収まった。
ゾクゾクした悪寒も、嫌な予感を感じた時のようなダメなタイプの心臓の鼓動もすぐに落ち着く。
…なんだったんだろう。
「よく頑張ったね、キュー」
「…?キュー頑張ったの?」
「うん、すっごくよく頑張ってくれたよ」
どういうことなんだろうか?
「兄様、よくわからない」
「うん、まあわからなくてもいいんだよ。これでちゃんとお約束出来たんだもの」
これでちゃんととは?
わからなくてもいいと言われても困るし。
「兄様、キューにも教えて」
「…ふふ。まあいいか。キューのわかるように説明してあげるね」
兄様はやっぱり、嬉しそうな顔で笑ってそう言った。




