どうしても兄様の看病がしたい
「…兄様」
兄様のいない一日というのは暇で。
明日の朝にはおそらくケロッとして戻ってくるとのことだがやはり寂しいし暇。
ここの教徒には同じ年頃の子供もいるらしいが、子供は子供用の区画にいる。
いや、別にそっちにも遊びに行けるが…本来この年の子供ってなんかこう、手がかかるというかぶっちゃけ面倒くさいイメージしかない。
私や兄様や、お貴族様育ちのムーンリットとかはまた別枠なわけだ。ムーンリットについては年相応の幼さというかわがままは私に対して発動していたが。
「会いたいなぁ」
菓子で元気になったと思ったら、またしょげてしまう私に彼はどうしたものかと困り顔。
そんな困らせたいわけではないが、私としてもどうしたらいいかわからない。
兄様がいないのは寂しい。
寂しいものは寂しいのだ!
なんて、年相応なことを言って見せても彼は私の前世の記憶について知っているので騙せないだろうし。
「看病したいなぁ」
だからまあ。
こうやって。
チクチクと良心に訴えかけて頷かせる作戦しか取れないわけだ。
「きゅ、キューケン様、いけません」
「うん、わかってるよ。キュー、ちゃんと大人しく待ってるよ」
「キューケン様…」
健気でしおらしいアピールも欠かさない。
ここに来てからというもの、幼女キューケンちゃんの皮を被り続けていたので猫被りが上手くなってきた。
「…でも、寂しいな」
うん。
いやわかる。
兄様には兄様の退っ引きならない事情があるから、私を自室に連れて行ってまで引き離したのはまあわかるよ。
だから本当は兄様のことを思えばこそ良い子にしなきゃいけないのは自覚してる。
でも考えてみてほしい。
「キューね。ここに来てからあんまりわがまま言ったことないの」
「う…」
「キュー、いい子?」
「は、はい…」
なので、本当に本当にたまのわがままなのだ。
「すごくすごく珍しいキューのわがまま、兄様なら叶えてくれたかな…」
「ぐふぅっ…!」
良心の呵責に彼の心が折れかける音が聞こえてくる。
あとほんのひと匙で彼は禁を破ってでも私のわがままを叶えてくれるだろう。
でも、やめた。
「なんちゃって」
「え」
「誰かがそれを叶えてくれたら、その誰かが兄様に逆らったことになっちゃう。それはやだよ」
うん、それは嫌だ。
だからやめておく。
「きゅ、キューケン様…」
目に見えてホッとした顔の彼に、その代わりと一つ頼みごとをする。
「でもキューね、我慢たくさんする分ご褒美が欲しい」
「菓子ならありますよ」
「ううん、違うの」
彼の目を見て言った。
「下山した先で売ってある、賞味期限一日のメロンパン。買ってきてくれる素敵なお兄さんはどこかにいないかなぁ」
我ながらあざといなぁとは思うが、幼女キューケンちゃんは容姿が整っているのでギリギリ許されるだろう。うん。
一方で言われた彼は、顔が引きつっていた。
さもありなん。
さて、どうする?




