思ったより容赦ない
さてさて、二人が戻ってきてからまたまた数日が経ち。
落ち着いてきた頃に、特別任務とはなんだったのか兄様に聞いてみた。
「え、そんなことを気にしていたの?」
「うん」
「その場で聞けばよかったのに」
なんだ、聞いてもよかったのか。
特別任務とのことだったから、だめかと思っていた。
「ムーンリットを処すのにちょっとね」
「…?」
処す?
処すって言った?
え?
「に、兄様、なんて?」
「ああ、処すと言ってもさすがに打ち首とか拷問じゃないよ」
え、怖い。
普段のめちゃくちゃ優しくて温厚な兄様の口から出たと思えない言葉に戦慄する。
「ただほら、やったことの責任は負わせないとね」
「え、うん」
そりゃそうだけども。
「それに見せしめの意味もあるし」
「見せしめ!?」
だから言葉のチョイスが怖いよ!
おおよそ幼子の口から出ていい言葉じゃないよ!
「あと、全教徒たちにオレがいかにキューを愛してるか教えなくちゃ」
「それは素直にありがたいけども」
兄様の愛を見せつけてくれれば、ムーンリットみたいに私に意地悪する人は…増えるか減るかの両極端だろう。
そして、見せしめの意味を込めて処すならばおそらく減る方に動く。
とはいえ。
「…お、穏便に済ませたりとか」
「無理」
いい笑顔で言い切られた。
ああ、これは無理だ。
止められない。
普段優しい人ほど怒らせちゃいけないのだ。
私も気をつけよう。
「まあ、安心していいよ。ただ単に貴族社会で孤立無援…まで行かなくてもそれなりに浮いた状態にしてやるだけだから」
「それ子爵家のご令嬢にとっては致命的では」
「ムーンリットだけでなく、子爵家ごとだから大丈夫だよ」
「何が大丈夫なの?」
兄様、それオーバーキルだよ。
多分わかっていらっしゃるとは思うけど。
「まあまあ、いいじゃない。見せしめなら派手にやらないとね」
「キュー決めた。キュー一生兄様を怒らせない」
「そもそも兄様がキューに怒ることなんて一生ないよ。諭すなり叱ることはあるだろうけど」
兄様の甘々な言葉にまあそうだろうな、と思えてしまうくらいには甘やかされている。
だからこそ。
だからこそ見えない地雷には気をつけないといけないなと肝に銘じる。
大好きな人に、嫌われたくないからね。
「兄様、大好き」
「オレも大好きだよ」
心の中でこのぬるま湯のような幸せがずっと続くように祈りつつ、子爵家の面々にはせめて苦しまずに逝けと合掌した。




