兄様が過保護になった
あれから数日、兄様が過保護になった。
私のそばから離れようとしない。
というのも、ムーンリットのことや私の前世の記憶のこともあるがそれだけではなく。
どうやら兄様の側仕えの彼と私のお目付役の彼は今特別な任務を与えられているらしい。
「二人が帰ってくるまで、兄様のそばにいようね」
そう聞いて最初、私が側仕えの彼の代わりになるのだと思っていた。
が、兄様がお目付役の彼の代わりになってしまった。
もちろん普段のお仕事はせざるを得ないが、その時間私は境内ではなく部屋で待てとのご下命だ。
そのせいで兄様の自然ふれあい体験がしばらく中止となってしまった。
二人とも早く帰ってきて!
「おや、キュー。それはなに?」
「前に兄様におねだりした編みぐるみセット」
仕方がないので私は、編みぐるみ作りのセットを兄様に要求した。
だって、もちろん兄様のための自然ふれあい体験だったけれど私にとっても良い気分転換になっていたから…それを禁じられ部屋で待機するのなら、暇つぶしの道具は欲しい。
という、名目で。
「え、兄様がお仕事の時にやるんじゃないの」
「特別任務に行ってる二人が帰ってくるまでに四つ作るの」
「…ああ」
そう、兄様お察しの通り。
みんなでのお揃いの品だ。
「どうせなら兄様だけとお揃いにすればいいのに」
「ある意味そう」
「え?」
「私と兄様のが色違いのキツネさんで、二人のがクマさん」
「…キツネ」
一瞬、兄様の顔色が曇った気がした。
けれどすぐに取り繕う兄様に、心配だけれど触れないで欲しいのだろうと敢えてスルーした。
「うさぎでもいいよ」
「…いや、せっかくならキツネをもらうよ」
少しは好きになれそうだし。
その言葉にやはり何かあるのだなぁと思ったが、突っ込まないと決めたから突っ込まない。
「二人はクマさん好きかな」
「キューにもらった瞬間好きになるよ」
編みぐるみなど生まれて初めてどころか前世でも経験がないが、なんでもチートな兄様にアドバイスを受けつつ数日かけて四体作り上げた。
いい加減二人が心配になってきた頃、二人が帰還する。
「ただいま戻りました」
「お待たせして申し訳ございません」
「おかえり、二人とも」
「おかえりなさい!」
ちょうど編みぐるみが出来上がったタイミングで帰ってきてくれたのが嬉しくて、珍しくテンションアゲアゲで二人に抱きつく。
ちらっと兄様を見たら二人をジト目で見てたので、割とすぐに離したけど。
そして、四人で編みぐるみを分け合った。
兄様は複雑そうに黄色のキツネを見つめ、二人は涙を流してクマを拝していて、私はみんなでお揃いが嬉しくて部屋の一番目立つ場所に飾った。
ちなみに二人が戻ってきたのでその日から兄様の自然ふれあい体験が再開されて、また楽しい時間が戻ってきた。




