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神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました  作者: 下菊みこと


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キューの話

「…襲われた、とかもまあ気になるんだけど。取り敢えずそれは置いておいて…キューに、もっとその話を聞いても良いかな」


「うん…」


「キューは、前世の記憶があるんだね」


こくりと頷かれた。


…正直な話。


それが、本当にキューの前世かはわからないと思う。


たしかにキューはとてもとても聡明な子だ。


それが前世の記憶があるからと言われたら、逆に納得しやすいとは思う。


けれど、孤独で聡明な幼子が愛されない理由付けとして考えた妄想の可能性も捨てられない。


だが、どちらにせよ。


「…その記憶が、キューを苦しめたの?」


「キューは、ずっと愛されなかったから。それに、死んじゃう時知らない人に刺されたの。すごく怖かった」


「そう…辛かったね」


ぎゅっと、力の入らないぐったりしたキューの手を握る。


偽の記憶にせよ、本当に前世の記憶があるにせよ。


怖かっただろう。


ずっと。


そんな記憶に苛まれていたのだから。


「そして、それを襲われて思い出したんだね」


こくりと頷かれた。


多分、フラッシュバックって奴だろう。


普通に思い出したのではなく、急に…そして脳裏に焼き付いて離れない。


そして過呼吸。


なるほど。


「で、きっかけはムーンリットだね?」


「うん」


「襲われて怪我をして、血を見てそうなった」


「うん、でもその人すぐ取り押さえて守ってくれたの」


守れていないじゃないか、とは思うが。


確認する限り怪我は引っかき傷で、幸いそこまで大きくも深くもない。


多分、しばらくすれば完治するだろう。


感染症にだけ気を付ければちゃんと治る。


急なことで対応が遅れたものの、その後は頑張ってくれたのだろう。


「…わかったよ。大丈夫、さっきも言ったが今回は許すよ」


「うん」


概ねの事情はわかった。


キューの、今まで知らなかった部分も知れた。


取り敢えず、キューの肉体の無事は確認できた。


あとは精神的な疲労を和らげ、ぐったりした身体を回復させれば良い。


「…キュー、ずっとずっと辛かったんだね。よく頑張ったね」


「兄様…」


「大丈夫。キューの大事なお目付役は罰しないし、キューの前世のことも引いたり拒絶したりしないよ」


「本当?」


「本当。その記憶ごと受け止めるよ」


そう言えば目に見えてホッとした様子。


やはりそこが最大の不安だよね、わかるよ…うん。


「これからは、前世のことで不安になった時も兄様に頼って良いからね」


「うん…」


安心したら眠くなったのか、うつらうつらするその頭を撫でてやる。


「いいよ。寝て。起きたら身体も楽になる頃だろう」


「うん…」


「起きても兄様は、キューの味方だよ」


「うん…」


魔除けのおまじないとして、眠るキューのおでこにキスをした。

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