兄様に花を贈ったり虫を捕ってきて見せたりする
思い立ったが吉日。
ということで、兄様に色々な経験をさせたいと思ったあの日以降毎日境内に出ては様々な草花を採取して兄様に見せている。
兄様的には、自然と触れ合う機会もそう無いのでかなり好評だ。
特にお花は、飾り気のないささやかな花でも部屋に飾ってくれるほど好評だ。
そういう時の兄様の柔らかな表情に、やり甲斐すら見出している私がいる。
「キュー、お待たせ。今日はどんなものを見せてくれるの?」
「兄様!」
今日も兄様は、仕事が終わってすぐに私の部屋にきた。
その表情は最初の頃に見た暗いものではなく、ワクワクした表情で。
兄様にとって、この仕事終わりのひと時が楽しみになっている証拠だろう。
そう考えると、兄様の役に立っているようで嬉しい。
「これです、兄様!」
「これは…動物だね?りす、と言ったかな」
「はい、リスです!」
こうして、草花でなく生き物を見せることもある。
前に一度、兄様に小動物を見せるために捕獲する際怪我をしたことがあった。
小さな引っかき傷程度だがその時の兄様の慌てようがとんでもなかったから、それ以降は教徒の皆様に捕獲をお願いしてはいる。
そんなこんなはあったが、兄様的には野生動物との触れ合いはとても嬉しいらしくこれもまた気に入ってくれている。
リスも図鑑でしか見たことがないらしい兄様だから、とても嬉しそうにカゴに入れられたリスに手を伸ばす。
「…ああ、愛らしいね」
「そうですね、兄様!」
「まるでキューみたいだ」
「え?」
「小さくて、可愛くて、なのに必死に生きていて…そしてオレを癒してくれる」
ど直球に褒められると照れる。
だが、まあ。
兄様の役に立てているなら、これほど嬉しいこともない。
「ふふ、キューが兄様の癒しになっているなら良かった」
「キューがいなければ、兄様はもう生きていけないよ」
「ふふふ、兄様ったら」
くすくす笑っていると、兄様に後ろから抱きしめられる。
「キュー、ずっと一緒にいようね」
「はい、兄様。ずっとずっと一緒だよ」
後ろから抱きしめてくる兄様の腕をぎゅっとする。
兄様はそれで安心したらしく、腕を離した。
兄様も、聡明な人とはいえまだ幼子。
きっと、ふとした瞬間不安になることもあるんだろうな。
そんな兄様の支えになれていれば嬉しいな。
「…さあ、キュー。そろそろリスさんともバイバイしないとね」
「うん、境内に帰してくるね」
「待ってるよ」
草花の採取をした場合はそのまま飾るなり押し花にするなりするのだが、小動物を捕まえた場合は兄様が満足したら境内で逃す。
ペットにはしないのは、兄様のこだわりだ。
自由な生き方は誰にも邪魔できないものだと。
やっぱり兄様って、下手な大人よりかっこいいよね。




