着替えてみる
「じゃあ、キュー。オレは部屋の外で待っているからね」
「うん、兄様」
兄様を部屋の外で待たせて、着物や洋服を物色する。
兄様が選んでくれた服はどれもこれも高級な上にセンスがいいから逆に迷うけど。
これにしようかな。
着物の着付けも、この世界に来て学んではあるのでさらっと自分で着た。
「兄様、着替えたよ」
そう声をかければ、兄様が部屋に入ってくる。
「…うん、可愛い」
部屋に入ってきて兄様は、優しい表情で私を見つめて褒めてくれる。
妹、だなんて優しい兄様が機転を利かせてくれた言い訳だけれど。
本当に妹として可愛がってくれる兄様は、この短時間で大好きになった。
「とても似合うよ、キュー」
「ありがとう、兄様」
春らしい桜色の着物は、しかしデザイン自体は落ち着いた柄で。
女の子らしい色合いだが、柄はそこまで子供子供してないのがお気に入りポイントだ。
今のキューケンちゃんとして生きる私にはたしかに似合うだろう。
「ふふ、じゃあ前の服は捨てるね」
そう言って近くにいた教徒にさっきまで着ていた服をパスする兄様。
教徒はそれを受け取るとゴミ箱へ捨てに行った。
私としては特に未練もないので別に構わないが。
「キュー、兄様はキューを捨てたりしないからね」
「兄様、ありがとう」
「キューも、勝手に逃げたりしないでね」
逃げたりとはなんぞや。
どうせどこにも行くあてなどないのに。
「うん、どこにも行かないよ」
「良い子」
兄様に撫でられるのは、やっぱり好きだ。




