案内
「さあ、キュー。我がパラディース教の総本山。ここの内部を紹介してあげようね」
「はい、兄様」
「案内はしてあげるけれど、しばらくは覚えるのも大変だろうから基本的には兄様の隣にいるようにしようね」
「うん」
ゴッドリープ様とやら…つまり今日から兄様となったこの人に、敬語で話すべきか否かまだ迷い中。
はいとうんが混ざっているのに兄様も気づいているようだが、判断は私に任せるらしくなにも言ってこない。
兄様と手を繋いで…お寺って認識でいいのかな、パラディース教の内部を紹介してもらう。
中は教徒たちが管理しているのか、すごく綺麗。
お祈りの部屋やお話を聞く部屋といった宗教の要の部屋は広く綺麗だし、居住空間も割ときっちりしている。
「教徒たちがしっかり掃除してくれているから、綺麗だろう?」
「うん、それに広いね」
「そうだよ。でも、本当に困っている人だけが総本山にいて大体の教徒は自立しているんだよ」
「そうなの?」
「うん。自立してこそヒトというものだからね」
なるほど。
兄様は本当に困っている教徒には手を差し伸べ養い、それ以外には自立を促す方針らしい。
宗教の要となる天主さまがその方針ならば、教徒たちも変なことを刷り込まれない限り基本道は踏み外すまい。
「兄様は優しくてかっこいいね」
「そうかな」
「うん。素敵な考え方」
本心から褒める。
兄様とは会ったばかりだが、変なことを言う気配もないし今のところ良い人に見える。
見目も珍しい色だろうけど、綺麗だし。
中身も今のところ良さそうだし。
多分一歳くらいしか私と変わらないだろうに、幼いのにしっかりしたすごい人だ。
「妹にそんな風に褒められるのは嬉しいな。キューもとっても素敵だよ」
「兄様、お世辞上手」
「世辞じゃないよ」
兄様に頭を優しく撫でられる。
兄様の手は不思議。
とても嬉しいし、落ち着く。
「ずっと兄様と一緒にいてね、キュー」
「?…うん」
他に行くあてもないし、当然そうなるけど。
兄様は、ただ微笑むだけだ。