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詐欺師は転生しても更正しない  作者: エイサム
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7~詐欺師、文明を知る~

7~詐欺師、文明を知る~


「さて、この辺でいいわ。で?あなたは何者なの?」


(さて、どういう話で持っていくか・・・まあここはある程度情報を握らせても問題ないだろう。)


「僕はヒューマンの遮道という者です。あなた方がいう聖域というのはあの広大な草原の事ですか?僕は気づいたらあの場所にいました。お恥ずかしい話ですが、それ以前の記憶が一切ありません。そこへたまたま通りかかったリリさんというハーピィーの女性、先ほどいましたね。彼女と出会い、村へ招待して頂いたんです。僕には魔法が使えない様なので、あの草原で一人で夜を過ごす事になっていたら死んでいたかもしれません。なので彼女は僕にとって命の恩人です。ゴブリンなどに襲われていたかもしれませんしね・・・」


「なるほどね・・・」


(この世界のやつらはなぜこんな胡散臭い話を信じるんだ。リリといい、こいつといい、人を疑うって事を知らんのかこいつらは。まあ俺にとっては都合が良い。このまま話をどうもって行くか・・・)


「村へ行く途中、ハーピィーやその他の獣人族たちとエルフやゴブリン、オーガなどが仲があまりよろしくないというのはチラっと聞きました。差し支えなければ理由を聞かせてもらえませんか?」


(あの時は関るまいと思っていたが、こうなってしまった以上情報を集めなければ!)


「別に対立している訳ではないの。そんなの私から言わせて貰えば獣どもが一方的に言っているだけよ。」


エイラの話によると、エルフがこの大陸に来たのは800年ほど前。以前はこの大陸の北方にある別の大陸に住んでいた様だ。だがヒューマンが支配する他の大陸ではエルフは奴隷として売買される事もあり、新天地を求めこの大陸へ。エルフはこの大陸がヒューマンに見つかるのを避ける為、大陸全体に超巨大な結界魔法と見えなくなる幻魔法をかけているそうだ。だからヒューマンがこの大陸にいる事自体に対して危機感を感じてしまうのも仕方ないだろう。


魔法と共に発達した文明の知識(この大陸に来る前の)を持つエルフはこの未開の地である大陸に文明開化をもたらした。エルフに従うものには安全な暮らしと十分な食料が与えられる。

この大陸に元々いたゴブリンやオーガなどは自然に生きるよりもエルフのもたらした文明の力に頼っただけだったのだろう。


ちなみに俺が最初に飛ばされた草原だと思っていたのはどうやら小麦畑だったらしい。この時期は緑で生い茂る草原も秋になれば金色に輝く小麦畑に様変わりするそうだ。ハーピィーたちや森に住む者たちはそんな光景を見て聖域と呼んでいるんだとか。そういう経緯もあってエルフ側もあの地域を聖域と呼んでいるみたいだ。


もちろんハーピィーや森に住む彼らは農作物には興味がないらしく争いという争いは今のところ起きていない。ただし安定した食料がもたらすものは人口爆発。今エルフ陣営は増えすぎた人口と食料難を抱えているらしい。まあ俺にはまったく関係がないが。


近年(ここ200年だが)では増えすぎたオーガやゴブリンが森へ侵入し、森に住む者たちを襲うという事件が発生していて、それの監視としてもう1本の大樹を監視塔として機能させているらしい。ハーピィー達からしてみたらエルフの指示で森に侵入してきたゴブリンやオーガが悪さをするという印象になってしまってもおかしくない。


ちなみに聖域(草原)は様々な種族の監視の元、どちらの勢力にも組していない中立を維持した種族のトレント(動く木)とフロッグマン(2足歩行のカエル)が管理していて、この2種族はこの大陸の食料を握っているようなもので手出しする事は禁忌とされている。ゴブリンやオーガもこの2種族は決して襲わないそうだ。


(これはかなり複雑で大きい問題だな。俺一人でどうこうできる問題じゃない。正直関った所で何もできん!それだけは自信を持って言える、さてどうしたものか・・・)


「ゴブリンやオーガ達って強いんですか?」


「え?エルフからしてみたらかなり弱いわよ?」


「じゃあ、ゴブリンやオーガたちってエルフにとって必要なんですか?」


「え?」


「いや、今の話を聞く限り、エルフと森に住む獣人族たちが対立する理由はゴブリンやオーガの素行の悪さが1番の原因な気がします。この2種族がこの大陸から排除された場合、食料問題の解決や森に住む彼らの安全問題も解決するんじゃ・・・監視塔を作り、森に迷惑が無い様に監視したりするのも現状では逆効果で反感を買っているだけな気がします。そもそもゴブリンやオーガをそこまでして管理してあげる必要がエルフ側にあるとは思えません。労働力などのメリットは、彼らがいなくなれば必要なくなるメリットです。彼らが排除された場合、余った大量の食料を手土産に森に住む者たちと交流するのもいいかもしれませんね。」


「確かにそうね・・・あいつらさえいなければこの大陸も平和に・・・」


詐欺師の手口:敵を摩り替える。共通の敵を作るとその他は協力的にになります。敵の敵は味方。仮に身内同士だったとしてもこの手法は効果が発揮されます。


「癌は取り除かねばなりません。癌は思いもしない隙に広がり、平和を蝕みます。これ以上彼らが増えた場合、エルフの手に負えなくなってしまう可能性もあるのでは?」


エイラの話だと人口比率はエルフ約500くらいに対してゴブリンが約500万、オーガが約100万人ほどだそうだ。これだけの人口バランス崩壊の中でもエルフの脅威にはなり得ないという事は・・・エルフ恐るべし・・・エルフと敵対するのだけは避けたほうが良いな。


(ゴブリンやオーガには悪いが、俺の為に排除される事を切に願う・・・小麦って事はパンとかあるのかな・・・)


「とは言いましたが、約600万の規模をこの大陸から排除となるど・・・かなり無理がありますね。そんな残虐な事をエルフに押し付けるのも気が引けます。」


「そんな事もないかもしれないわ!しかも殺したりする事もせずに♪」


「え?」


「元々エルフがこの大陸に来た時にもと居た大陸には転移用の魔方陣を構築してあるの。一方通行で戻って来る事はできないけど、こちらからあちらの大陸へは転移が可能なのよ。あとはどうやってゴブリンとオーガをその転移の魔方陣へおびき出すか・・・ね♪」


(くそ、そんな事もできるのか魔法は・・・俺も戻れるのであればその魔方陣で・・・いやでもリスクがでか過ぎるか・・・この世界の事はまだ何も分かってないんだ。ヒューマンの世界にはいずれ行きたいが今じゃない。あとはゴブリンとオーガをどう誘導するか・・・)


「良かったらその役目、僕に任せてくれませんか?僕に考えがあります。」


「本当?それは助かるわ!あなたはなんだか信頼できる気がするの。私人を見る目だけは自信があるのよ♪」


(こいつもだんだん馴れ馴れしくなって気がするな・・・人を見る目だと?そもそも人を見る目があると自称するやつは基本的に頭が悪い。まあゴブリンとオーガを騙してこの大陸から去ってもらうくらいなら俺にもできるかもしれない。そうすればひとまずエルフに恩を売れる。虫を踊り食いする種族ともこれでおさらばできるかもしれない。)


温かいスープとパンを想像しながら遮道は表には出さずに心の中でニヤリと笑うのであった。


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