6~詐欺師、天秤にかける~
6~詐欺師、天秤にかける~
「はい!どうぞ♪シャドウ」
リリが青いりんごの様な果実を俺に投げてきた。
「おっと、危ないから投げないでくれ汗」
「あら、ごめんなさい!っと」
リリが木から飛び降りる。
「どう?これなら食べられそう?」
(なんかニヤニヤしてる・・・悪い予感がする。)
ただ俺は今ものすごく腹が減っている。8時間以上なにも食べてないからだ。
恐る恐る俺は青い果実を食べてみた。
(あれ?うまい・・・でもなんだろうこれは・・・)
「おいしいでしょ?どう?」
(何をニヤニヤしてるんだこいつは・・・)
「おい、なんでそんなに・・・」
シャドウは急に泥酔状態に近い感覚を感じた。
「おいこれ・・・」
「あ、ごめんなさいね♪これ食べると酔っ払っちゃうのよ♪ハーピィー族はお酒があまり強くないからめったにこの果実は食べないの♪この果実ってかなり強力みたいだからヒューマンのシャドウだったらどうなのかなって思って♪でもシャドウもそんなにお酒が強くないみたいね(笑)」
(リリお前、このくそ鳥類め!なんてものを俺に食わせやがった・・・それに俺はそこまで酒に弱い訳じゃないぞ!ほんの一口たべただけでこれってかなりこの果実危険だぞ。だから村には1つもなかったのか・・・くそ!食べた時はかなりおいしく感じたんだがな・・・ああ、意識がもうろうとしてきた・・。くそっ・・)
俺はフラフラしながら、必死に耐えた。もちろんこれ以上この果実を食べる訳にはいかない。
急に高濃度のアルコールを摂取した俺は立っているのもしんどくなって、その場に座り込んだ。その時
俺の頭上をものすごいスピードで何かが通過した。
(なんだ?何が起こった?)
「マウロ!下がってシャドウを守りなさい!」
リリの表情がこわばる。
「外したか・・・」
リリ「貴様は・・・」
マウロ「この場所は我らが領域、貴様らの様な者がなぜいる!」
そこには森と同じキレイな緑色の女がいた。耳が長い。まさにエルフみたいな見た目だった。
(エルフか・・・)
俺は持ってきていた水を一気に飲み干し、俺は泥酔状態の頭をフル回転させ、地面に伏せ頭を守った。
詐欺師の手口;酒は飲んでも飲まれるな!飲みすぎたと感じた場合は水を大量に飲む。酔っ払ってもボロがでるだけなのだ。
エルフが不適な笑みを浮かべ俺の方を見る。
「お前が聖域に侵入したというヒューマンか。偵察にでていたゴブリンの話は本当だったようね。」
(聖域ってあの何も無い草原地帯の事だよな・・・ハーピィー達も聖域って言ってたけど、あそこは何かあるのか?まあ良い。俺はこれどっちに付くべきか・・・明らかに攻撃的な態度のエルフは俺に対して不審な印象を感じている気がする。ハーピィー達はかなり友好的だ。マウロは別として・・・どうする俺!どうなる俺!)
(そうだ!一か八か、あのスキルを発動させてみるか!)
遮道は心の中でマインドコントロールをあのエルフに向けて放ったみた。
エルフの様子を見る俺。
「聖域にいたヒューマン、あなた名前は?」
(急に名前聞かれた。これは成功か?)
「ぼ、僕の名前は遮道大地と言います。ろれつが回って無くてすみません。この青い果実を誤って食べてしまい、泥酔状態なのです。あなたの名前は?」
≪キュア≫
エルフがそう唱えたとたん俺の泥酔状態が一気になくなった。
「これでちゃんとしゃべれる?私の名前はエイラ・フォン・エルフェン。あなたに話があってここまで来た。さっきの攻撃はごめんなさい。あなたを殺すつもりはなかったのだけど、邪魔なやからがいたので掃除しようと思ったら間違えちゃって♪弓矢は昔から苦手なの。」
「邪魔者っていうは私たちの事かしら?」
「あなたたち以外に誰がいるの?」
(こいつ、間違いで俺を殺すところだったのか?ふざけやがって、死んでたら呪ってやる。まあとりあえず、戦闘にならなくて良かった。これもスキルが効いた結果なのだろうか・・・わからないし実感もない。まずはこのエルフと二人で話をしなければ。たしかにリリとマウロは邪魔だな。)
俺はリリの耳元でささやいた。
「ここは僕に任せてくれ!」
リリは軽くうなずくとマウロと共に俺の後ろに下がった。
「エイラさん、あなたは僕に用があったはず。二人は関係ありません。ここで二人に危害を加えるのであれば僕はあなたを敵だと認識します。話があると言ってましたね。すこし離れた場所で話し合いをしませんか?もちろん僕と二人で。」
リリ少し納得いってなさそうな顔していたので「リリ、僕の事は大丈夫!もしもの時は大声で助けを呼ぶよ。少し待っていてくれないか?」と伝えるとリリは黙って頷いた。
(リリとマウロには申し訳ないが、ここはこのエルフと二人で話す必要がある。なぜなら俺がどちらに付くべきか、どちらが強いのか、それを判断しなければならないからだ。話次第では俺はハーピィーを見限ってでもエルフ側に付く必要がある。もちろんそれは最終手段だ。ここでハーピィー側を見限ってエルフについていった場合、俺はハーピィー側から嫌われる可能性がある。エルフ陣営でどういう扱いをされるかという保障も無い状態でだ。ハーピィーの村ではかなり良い待遇を今のところしてもらっている。だが、情や恩などは関係ない。こんな訳の分からない世界で生き抜く為にはなんだってする。生きる為に手段を選ばないのは当然。ただ慎重に話をしなければどちらからも恨まれてしまう可能性もある。裏切り者は基本的には信用されない。スキルの効果でこのエルフが俺に好意的になっているかどうかはわからない。そもそもスキルの効果や持続時間は今のところほとんどわかっていないのだ。スキルを信じ切ってはいけないだろう。わからないものは信じない。それが俺の信条なのだ。ハーピィーとエルフどちらにも良い顔をしつつ、俺自身は両者共とは敵対せず無関係を貫く。これが一番俺にとっては都合が良い。)
そんな事を思いながら、リリとマウロをその場にしてエルフと俺は一緒にその場から離れて行った。