5~詐欺師、嫉妬される~
5~詐欺師、嫉妬される~
俺とリリは森を歩いている。
俺の後ろからは先ほどから殺意の視線を感じている。
≪5分前≫
「リリ様、どちらへ行かれるのですか?」
「あら、マウロ。ちょっと果実を取りにお散歩へ行こうかと。」
マウロとやらが俺をにらみつける。
100%の笑顔を発動し、俺は挨拶をした
「こんばんは!僕の名前は・・」
「シャドウとかいう余所者が我が村へ来たのは知っている!」
「マウロ!失礼じゃない!シャドウは記憶を失って聖域の草原で一人でいたのよ。さっき村についたばかりだっていうのにその態度は何?」
「リリ様、まさかこの男と二人で村の外にでるおつもりではございませんよね?」
「二人で行くわよ!」
「な!?そのような事は断じてこのマウロ、見過ごす訳にはまいりません。私もお付き添い致しますぞ!」
(なるほど。こいつは俺が憎いらしい。初対面で悪印象を抱かれてしまった場合、その原因を取り除けば、コロッとその印象は逆転する・・・たぶんこいつはリリが好きで心配なだけだろうな。わかりやすいやつだ。)
詐欺スキル:初対面で悪い印象を持たれても大丈夫。きっかけを掴み挽回すればギャップが発生して、一気に好印象を持ってくれます。
「それは心強い。是非とも一緒に来てもらえませんか?」
(こういう時は俺から頼む方がこいつも気持ちが良いだろう。)
「お前に言われなくても付いていくつもりだ。お前に頼まれたから同行する訳では断じてない事だけは理解しておけ。」
「もちろんです。僕はなんの役にも立たないただのヒューマン。リリさんにはとても親切にしてもらって感謝していますが、村長の一人娘を連れ出して何かあっても責任は取れません。ハーピィー族に殺されてしまっても文句が言えません。見たところマウロさんはとても強く賢そうだ。そんなあなたが付き添ってくれるなら僕は全ての責任をあなたへ押し付けられます。ああ、もちろんこれは言葉のあやというやつですよ。気にしないで下さい。ですが僕は本当に弱く、魔法も使えないただの役立たずだという事は宣言させてください。何かあっても何もできません。なので何かあった時はあなたが責任をもってリリさんだけでも守ってくださいね。僕の事は置き去りにしたってかまいません。」
詐欺師の手口:褒めながらマウントをとって、責任を先に相手へ押し付けておく。
「も、もちろんリリ様だけは必ず我が守る。」
「マウロ、あなたに守られるほど私は弱くないわよ?」
(え?どゆこと)
「それはそうでしょう。ですが念のためです。リリ様。この森には悪い虫がいるやもしれませぬ。」
マウロはそういって俺を再度にらみ付けた。
そんな事があり俺とリリが歩く後ろを殺気を漂わせた無骨なハーピィー(男)が付いてくるという構図が出来上がった。
ずーっと俺を睨んでる。序盤は少し打ち解けようと話かけたが俺の話は全て無視してくる。
さすがにむかついたので俺もこいつを気にしないことにした。
(それにしてもこのマウロってやつよりリリの方が強いのか。人・・いや鳥は見た目によらないという事か・・・)
「そういえばリリ、」マウロの殺気が強まる
「・・・さん、はここではかなり強いのか?・・・ですか?」
「マウロの事は気にしないで、シャドウ。ハーピィー族は女の方が強いのよ。男は家で子供たちの世話や、食料(青い虫だろうな)の採集などが主な仕事よ。」
(マウロよ。お前、よく付いて来れたな。)
「そうなのか。僕の一般常識では男の方が強く、女は守るべき対象っていうのが一般的だと思うのだが・・・」
「まあ種族的な違いはあるわよね。ハーピィーはそういう種族なのよ。ちなみにエルフも女社会の国らしいわよ。」
リリの話によると、ハーピィー族にはいくつかの村があるらしく。その中心がグリフォンの木の村みたいだ。現在ハーピィー族には女が3人しかいないらしい。女が生まれる確立がかなり低いとの事。ちなみに全て姉妹だそうだ。一人娘じゃなかったのかよ!と思ったがそこはスルーした。未だに結婚していないのはリリのみで、リリの姉2人は別の村にいるそうだ。3姉妹の中でもリリは一番美しく強いととされており、アイドル的な存在らしい。まあ俺には関係の無い事だ。なぜなら俺は虫を踊り食いする女は興味が無いからだ。強い魔力持ちが基本的には結婚する権利があるらしく、村ではマウロの他の結婚できる権利を持つ男が9人いるらしい。そんな状況ならマウロの俺への嫉妬心が殺気じみているのも納得だ。そのうちの一人が長老のジルだが、さすがに自分の娘との結婚はしないだろう。ところでリリのお母さんは?と思って尋ねたが、リリとマウロが苦い顔をしたのでそれ以上は突っ込まなかった。
そんな話をしながら10分ほど歩いていると青い果実のなる木が見えてきた。
(虫もそうだったが、なぜここの食べ物は青いものばかりなんだ。青って食欲薄れる色だろ!)と思ったが虫よりはましだと自分を納得させたのだった。