3~詐欺師、村へ行く~
3~詐欺師、村へ行く~
遮道はお姫様だっこで運ばれていた。
35歳になってまさか自分が女性にお姫様だっこされるとは思ってもいなかった。
(悪くない!)
遮道は自他共に認める【おっぱい星人】なのだ。
リリ・グリフィンは元の世界でいうところの推定Hカップはあった。(ハーピィーだが)
遮道がよこしまな気持ちになっているのを気にも留めずには彼女はものすごいスピードで飛行する。
体感だが時速100kmくらいではないだろうか。
そんな事を考えていると草原の先に森らしい影が見えてきた。
「森に住んでいるんですか?」
「ええ、そうよ。私たちが住む森には様々な種族が暮らしているわ。」
「へぇ、ハーピィー以外にはどんな種族がいるんですか?」
「獣人族以外にはドワーフやリザードマン。あとは野蛮なエルフも一応住んでいるわ。残念ながらヒューマンはいないわよ」
(まさに異世界ファンタジーだな。しかし野蛮なエルフとは・・・!?あまり深入りはしたくない。ここは流そう。しかしエルフか・・)
「この世界には魔法はありますか?」
「魔法?そんなのあたりまえじゃない。確かにあなたからは魔力を感じないわね。ヒューマンでも普通は魔法は扱えるはずよ。」
「え?それじゃあ僕は魔法を使えないって事?」
「さぁ~、魔法には属性や魔力量に個人差があるから。ごくまれに魔力もたずに生まれてくる子もいるみたいだけど・・」
(おいおい、せっかく転生したと思ったら魔力がないだと!?転生特典とやらのよくわからんスキルは使い方も説明書も無し。これじゃあハードモードも良い所だ。)
「スキルについては何か知っていることはありますか?」
「スキル?聞いた事が無いわね。魔法の一種かしら?魔法にも色々あるから・・・」
(おっと、スキルについてはあまり深くは触れさせない方が良さそうだ。なんせマインドコントロールなんていう如何わしいスキル持ちだなんて知られたら明らかに拒絶されしまう。人は一度信頼を失ってしまうと再構築はかなり難易度が高い。マインドコントロールはばれないようにしなければまったく意味が無いのだから。ただスキルについてはテストをしなければ・・・)
「そろそろ着くわよ。あそこに見える大きな木が私たちが住む村の長老たちがいる~大樹グリフィン~よ。
「えっと、どっちの木かな?汗」
大樹は2本あった。
「あっちに見えるのがそうよ。もう一本は・・・」
「ああ、なるほど。エルフが納めている村かな?」
「そう。野蛮なエルフはこの森を支配できると勘違いをしているの。まあ寿命も長いし魔法に長けた種族である事には変わりないんだけど。でも森中の他の種族たちはエルフとはあまり関らないようにしてるのよ。」
「それは・・・どうして?」
(あ・・・面倒だから聞かなきゃ良かった・・・)
「エルフどもはゴブリンやオーガを支配していてね。奴隷の様に扱っているのよ。」
「それは確かに野蛮ですね。」
「だからあなたも関らない方がいいわよ。」
(なんかエルフのイメージと違うなー。まあ俺には関係無い事だ。)
「そうするよ。ところで、ヒューマンは近くに住んでいるっていうのは知らないのかな?」
「ヒューマンはこの大陸にはほとんどいないわよ。私も見るのは初めてなの。」
(おいおい、マジか。大陸ってなんだよ。俺はハーピィーと子作りなんかやだぞ。ああ、人間よ。どこにいるんだ。いつか必ず。この大陸から抜け出さねば・・・)
村に着くと、長老っぽいハーピィーが出迎えてきた。
「ようこそ、グリフィンへ。私はこの村の長老のジル・グリフィンと申します。娘のリリは失礼など無かったですかな?」
(こいつ長老の娘だなんて一言も言ってなかったじゃねーか)
「いえいえいえいえ、全然全然全然。とても親切にしてくださり、危うくあの場で死ぬところを救って頂き本当に感謝のしようがありません。命の恩人です。ありがとうございます。しばらくこの村に滞在させて頂いても宜しいでしょうか?もちろん村の仕事などなんでもさせて頂きますとも!村にご迷惑はお掛けしません。」
詐欺師の手口:相手に考えさせる時間を与える隙もなくこちらの用件をソフトに伝える。※相手が面倒だと思わせてしまわない様にするコツが必須
「ええ、もちろんごゆっくりしてくだされ。空いている家を自由にお使いください。リリご客人を案内してあげなさい。」
「はい、お父様。その後もどってきましたら詳しいお話を。」
かなり太い木が沢山ある。
(その木をくりぬいた形で窓的なものが沢山見える。おそらく木の中に家があるんだろう。とりあえず今晩はここで休ませてもらおう。しかしなんだか疲れたな・・・)
「ここを好きに使って!何か困った事があれば大樹の方へ来てくれれば私はいるから!あと、そこに保管してあるものを食べると良いわ♪それじゃ」
リリの指を指す方に大きな箱が見えた。
「分かりました。本当にありがとう。とても助かりました。」
※100%の笑顔で俺は感謝を告げた。