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夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第一章 もう一度、君と。
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【Side】 大公陛下 ~激昂~

「ガゼル! エトランジュとはうまくいったの?」


 二階のテラスから様子を見ていた私は、部屋に戻ろうとするガゼルをつかまえて、浮き立つ気持ちを抑えて聞いたんだ。


「エトランジュの方から訪ねてくれるくらい仲よくなってたなら、早く言ってよ。つい数日前に婚約を辞退したばかりで、言い出しにくかったんだろうけどね? エトランジュ、すごく可愛いよね。ふふ」

「父上」


 ガゼルも年頃だからね。

 照れる気持ちもわからなくはないけど、グズグズしないで欲しいな。

 聖サファイアに留学されてしまったら、ガゼルが割り込む余地はなくなってしまう。

 グレイス様に気に入られて婚約を強いられた時には、もう駄目かと思ったけど、取り返しがつくうちに破棄して頂けて本当に良かったよ。


「急ぐから。正式に婚約を申し入れるよ?」

「父上!」


 なんだろう。

 いい雰囲気でキスしてたくせに、覚悟が足りないな。

 後で、少し心構えを――

 そんなことを考えていた私は、続くガゼルの言葉に愕然とした。


「婚約を申し入れるとか、そういう段階ではありません」

「何を言って――どういうこと、まさか、婚約する覚悟もなくエトランジュに手を出したなんて言うんじゃ」


 そんな真似、ガゼルに限ってするはずがない。


「……ガゼル?」


 私と目を合わせようとしないガゼルが、そうなりますと頷いた。

 私は激昂したのか、気がついた時には、話も聞かずにガゼルに手を上げてしまっていた。


「エトランジュはおまえに何の用で?」

「……お慕いしていますと……」


 信じられない。こんな、馬鹿なこと――!

 デゼルを争って先を越された時、サイファがデゼルにこういう真似をするんじゃないかと心配して、その時には、斬り殺してやるとまで思っていたのに。

 サイファは最後まで、そんな真似はしなかった。

 それなのに、まさか、私の子の方がこんな。


「ガゼル、エトランジュに何の不満が?」


 キっと、傷ついた瞳で私をにらむガゼルに、浮ついた気持ちは感じられなかった。


「今、不満がなければ、婚約するべきなのですか。グレイスの時だって、一方的に気に入られて、婚約を強いられて、十年も制約を受けたあげく――! つまらない人間だと、切って捨てられて。おかげで、私はグレイスとエトランジュの他には異性を知らない!」


 帝国からの圧力もあって、グレイスとの婚約を断り切れなかったことは、悪かったと思っているよ。

 ガゼルは絶対にエトランジュと結ばせたいと思っていたから、私だって残念だったんだ。

 だからといって。


「なら、どうして手を出したんだ。エトランジュだっておまえの他の異性は知らない。おまえはいったい、知る必要がどこにあると思っている」


 絶句するガゼルの様子に、私はただ、失望するしかなかった。


「エトランジュよりおまえの気に入る令嬢がいたら、乗り換えるつもりだとでも言うのか!」


 ガゼルがこれほど未熟なのでは、とても、婚約の申し入れなどできない。

 ガゼルがエトランジュを傷物にしてしまったこと、デゼルとサイファに申し開きも顔向けもできない。目の前が真っ暗になる思いだ。


「――グレイス様がなさったように」

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