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夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第一章 もう一度、君と。
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第5話 さようなら

 今日の午後には、エトランジュが聖サファイアに向かうという日。

 このまま、エトランジュを行かせていいのか心は迷い続けていて。

 とても綺麗で、可愛らしくて、無邪気な少女だった。

 だけど――

 私を顔だけで選んでいそうなエトランジュと婚約することに、後戻りできない契りを結ぶことに、恐怖にも似た感情はあって。


 後から思えば、グレイスに顔だけだと言われたことを気にしていた私は、本当に『そう』だった。

 優麗さにしか自信を持てずにいたのは、私自身だったんだ。


 エトランジュが私に会いに来て、中庭で待っていると伝えられた時には、とても驚いたけど。


「エトランジュ?」

「ガゼル様」


 あの日と同じ。

 エトランジュの澄んだ翠の瞳が私を見詰めた。

 夜闇に零れた月の光のような銀の髪が風に揺れて、幻想的なまでの美しさだった。


「どうしたの?」

「手を、つないでもいい?」


 くすっと笑って、私からつないであげたら、エトランジュがひどく嬉しそうに微笑んだ。

 可愛らしいな。


「あの……」


 会いたかったのは私も同じだったのに、私には、エトランジュに会いに行く勇気さえ、出せなかったんだ。


「お慕いしています。ガゼル様のお妃様になれたら――よかっ……」


 ――なんて?

 エトランジュの瞳から真珠の涙がぽろぽろ零れた。


「エトランジュ」


 抱き寄せて、エトランジュのやわらかな唇にキスをして、離したくなくて抱き締めたけど、言葉が見つからない。


「あと少しだけ――」


 エトランジュが囁いた。


 私は何をして――

 まだ十五歳のエトランジュが、傷つく覚悟で想いの丈を吐露してくれているのに。

 心を決められないまま、『あと少しだけ』の時間は、瞬く間に過ぎてしまった。

 何も言えない私に、エトランジュが切なげに微笑んだ。


「ありがとう。さようなら、ガゼル様」

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