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夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第一章 もう一度、君と。
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【Side】 エトランジュ ~小鳥~

 公邸の庭園を探検していたら、巣から落ちてしまった小鳥を見つけたの。

 木の上に、たぶん、この小鳥の巣みたいなのが見えるけど、届かない。

 小鳥を持って、木登りできるかな……。


「なに、してるの?」

「小鳥が……落ちてるの」


 振り向いて、びっくりしたの。

 すごく綺麗な男の子。

 お月様みたいな、サラサラのプラチナ・ブロンドが風に揺れてきらめいてた。

 小鳥を差し出した手に、その人の指先が触れて、それだけで、ときめいた。


「届く?」

「うーん……私が君を抱き上げたら届くかな?」


 わぁ。

 小鳥を巣に帰してあげられるかもしれない。

 嬉しくって微笑んだら、その人が驚いたみたいに私を見てた。


「お願い」


 スマートな人なのに抱き上げるなんてできるのかなと思ったけど、軽々と抱き上げてくれて、いつもとは違う景色。


「届きそう。もう少し」

「気をつけて」

「――……帰せた!」


 同じ小鳥のヒナたちが巣にいるのを確かめて、戻したの。

 嬉しくて、その人にぎゅっと抱きついた。


「ありがとう」


 この人、腕の中がとっても優しいの。

 ルーカスとは全然違う。


「あっ……」


 そう思ってたら、抱き締められて、驚いたけど。

 心地好かったから、私もその人の肩に手を回して、頬をすり寄せた。

 父様にだっこしてもらう時みたいに優しくて、安心するの。


「髪、綺麗ね。お月様みたい」


 そう言ったら、急に、優しかった腕が冷えた気がした。


「どうしたの?」

「ううん」


 丁寧に道に下ろしてくれた、その人の袖をぎゅっと握ったら、今度は私が聞かれたの。


「どうしたの?」

「あのね」


 私はもう一度、前を見て、後ろを見て、その人を見た。


「迷子になったの」


 たぶん、公邸のお庭だと思うんだけど、広くてわからなくなって、迷ってたら小鳥がいたの。

 綺麗な男の子がクスクス笑った。


「闇神殿に帰りたいの。それか、公邸」

「名前を聞いてもいい? 私はガゼル」

「エトランジュ」


 あれ?

 ガゼルが少し、表情を硬くしたみたい。


「……公邸へは何をしに?」

「聖サファイアに行くから、出国手続きをしに」


 そう答えたら、もとの優しい笑顔になった。ちょっと、寂しいな。

 私、ガゼルの傍にいない方がいいのかな。


「公邸でいい?」


 聞いてもらえたから、ほっとして微笑んだ後、そわそわしてガゼルを見たの。


「ガゼルは、道はわかる?」

「?」

「あのね、公邸に行ったら冒険はおしまいだから、公園に行ってみたい」


 ずっと、ガゼルの袖をつかんだままだった手を、ガゼルがつないでくれた。

 少し驚いたけど、嬉しくて笑ったの。

 よかった。ガゼルの傍にいていいみたい。


「いいよ」

「ガゼルもどこかに行く?」


 聞いてみたら、ガゼルがなんだか楽しそうな顔で私を見たの。


「そうだね、渓流を見に行きたい」

「わぁ、私も見たい!」


 渓流だって!

 なにかな、なにかな、見てみたい。

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