第18話 違和感
光の十二使徒がそろったテーブルは、エトランジュには少し、威圧感があってつらそうな様子に見えた。
やっぱり、エトランジュには私がついていないと駄目だよね。
闇主が何から闇の女神を守るって、きっと、強烈な光からなんだ。
夜明けの公子ないし夜明け前の公子が闇主になる時、闇主は光と闇の両属性を併せ持つから、私にとっては、このテーブルは苦にならない。
兄に比べたら、私は少し闇に近いだろうけど。
「もとよりエトランジュはオプスキュリテ公国の闇巫女です。それがなぜ、こちらへ招かれたのですか?」
「聖サファイアの聖女は光の神リュミエールが聖別する。グレイスもエトランジュも光の神に選ばれた候補者だ」
……。
グレイスを聖別する光の神って……。
ううん、そうじゃないよね。
闇の神の依り代であるエトランジュを光の神が聖別してることの方をおかしいと思うべきなんだろうけど。
闇の神のご意向には違和感を感じないのに、光の神のご意向には違和感しか感じないのは、私がもとより、闇主となるべく生まれた夜明け前の公子だからなのかな。
おそらく、神々のご意向なんて人間の理解の範疇を超えているのがあたりまえで、私が闇の神を理解できるのは、闇の神こそがそれを望んでいるからなんだ。
「神による聖別となると絶対的なものとは感じますが、私はエトランジュを貴国に譲りたくありませんし、純潔を失っても、エトランジュは光の聖女たり得るのですか? 純潔である必要がないのに、結婚だけが許されないと?」
「そうよ! 優れた女性である光の聖女が結婚を許されないなんて馬鹿げているわ! エトランジュも黙っていないでなんとか言いなさいよ!」
グレイスが追随してきて、少し、疲れた気持ちになったけど。
今、何か見えた気がしたんだ。
グレイスが光の神に聖別された理由が――
グレイスに促されて、エトランジュも遠慮がちに口を開いた。
「あの、もしかしたら、光の使徒の皆様もご結婚できないのですか……?」
「そうだ」
しばらくの間、静かに考えている風だったエトランジュが、やがて、顔を上げた。
澄んだ翠の瞳には、凛とした意志の輝き。
「試験を続けましょう」
「エトランジュ!?」
グレイスがエトランジュの正気を疑うような声を上げた。
「今、聖サファイアには光の聖女が不在と聞きました。それでは、光の神を降ろせませんから――試験を続け、光の聖女が即位した後、光の神リュミエールを降ろして伺いましょう。光の聖女と光の使徒は、なぜ、結婚してはならないのか。光の聖女と光の使徒の存命中の退位についての光の神のご意向も」
「続けられないッ!」
グレイスが椅子を蹴立てた。






