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夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第三章 たとえ、光の神を敵に回しても。
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【Side】 エトランジュ ~たとえ、光の神を敵に回しても~

 どう、しよう。

 庭園での夜は離れたくなくて、遅くまで、ガゼル様に抱いてもらっていたの。

 何もなかった顔で、試験を続けるなんてできないよ。


 私、どうなるのかな。

 私が責任を取らないといけないよね。

 ガゼル様に責任を取ってもらうのは違うよね。

 だって、私がオプスキュリテ公国の闇巫女なんだもの。

 ガゼル様のことも、公国のみんなのことも守らなくちゃ――


 聖サファイアに入国してからは、身にまとうことのなかった闇巫女の礼装を身にまとうと、私は金華様のお屋敷に向かったの。

 光の聖女が不在の間は、金華様と蒼紫様が聖サファイア側の責任者だから。



  **――*――**



 向かった金華様のお屋敷の前に、誰かいらしていて、私は目を見張ったの。

 懐かしい、短いケープのついた黒装束。

 肩にとめた大きな銀の羽飾り。

 後姿を見た時、お父様かと思った。

 私が困っていたら、いつだって、助けてくれたお父様が、聖サファイアまで助けに来てくれたのかと思ったの。


「エトランジュ」


 どきんとした。

 凛とした、優しい声。

 振り向いたその人は、ガゼル様で。


「ガゼル様……?」


 びっくりした私が口許を覆った手を優しく取ったガゼル様が、私の唇に口づけた。


「…んっ……」


 だめ、ガゼル様にされると、何にも考えられなくなって――


「たいした度胸だ。正面玄関から喧嘩を売りにいらっしゃるとは」


 門の向こうからかけられた、厳しい声にどきんとしたけど、ガゼル様にされた余韻で声が出なかった。


「金華様、まさか。畏れ多くて震え上がっていますよ。第二公子に過ぎぬ身で、大公陛下と闇巫女様、さらには光の十二使徒の皆様に背こうというのですから」


 背の高い金華様に、全然、震え上がっていないガゼル様が言ったの。

 すごい、余裕の立ち居振る舞いよ。

 心の中だけで震え上がっているのかな。


「闇主の礼装を持参では、最初から、そのつもりだったとしか思えないが――まぁ、いい。中へ」


 通されたのはいつもの執務室ではなくて大広間で、豪奢なシャンデリアが眩しかった。


「今日は千客万来のようだ。先客のグレイスと蒼紫もこちらへ招こうと思うが」

「わかりました」


 ガゼル様が落ち着いて対応してくれて、ずっと、手をつないでくれていて、すごく、ほっとしたの。

 私一人じゃ、絶対に、パニックだったもの。


 そうかと思えば、ぴんぽんぴんぽんぴんぽんて、呼び鈴が鳴り響いたの。

 この、子供かと思う呼び鈴の鳴らし方、絶対にルーカスよ。


「ガゼル、貴様――! その黒装束はなんだ! まさか、抜け駆けしたのか!!?」


 やっぱり、ルーカスだった。

 ガゼル様を見かけて、あわてて追ってきたのね。


「ルーカス、金華様に失礼よ。控えて。――ガゼル様には私から、闇主になって欲しいとお願いしたの」


 あ。

 ルーカスが真っ白な灰になった。

 ちょっと、面白いかも。


 だけど、ルーカスのアプローチなんて本気に取れないもの。

 お妃様はファンクラブ会員から選ぶべきよ。そうでないと、泣かされる二万人の女の子達が可哀相だもの。あの子達、きっと、本気でルーカスのことが好きなのに。


 あ、うん。

 会ってみたら中身にガッカリするパターンかもしれないけど。


 ううん、やっぱり、この中身にガッカリするくらいだったら、そもそも、ファンクラブなんてものに入らないよね。

 彼女たちにとってはそのままの、カリスマホストなルーカスこそが白馬の王子様なのよね。


「ルーカス! ……まさか……カミーラの手紙、あなたの差し金だったの!?」


 グレイス様の声に、フフンと、いきなり立ち直ったルーカスがカッコつけて艶やかな黒髪をかき上げた。

 この仕種、ルーカス・スタイル・ナンバーなんとかで、ファンクラブの女の子達がいたら黄色い悲鳴が上がって大変なの。


「カミーラの手紙がどうかしたのか、グレイス? 興味深いな、何が書いてあった」

「何って――!!」


 そこまでで、金華様に片手で制されて、グレイス様とルーカスの喧嘩はおしまいになった。

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邪神に滅ぼされるはずだった公国を救った優しい少年の物語です。
※ 先代の公子様も素敵だったのですが、邪神キラーの少年と先代の闇巫女様を争奪して敗れました。ライバルが神の領域に天然すぎました。


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