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夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第三章 たとえ、光の神を敵に回しても。
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【Side】 蒼紫 ~闇主の気配~

「やれやれ、結局、そうでなくとも遅れているというのに、何の指導も受けずに帰ったか――」

「取り急ぎ、金華か彩朱あたりの指導を受けるのではないでしょうか」


 光を司る金華と、炎を司る彩朱は初めから、光の聖女であるグレイスとの相性がよく、闇の聖女であるエトランジュとの相性は悪い。

 グレイスが少し本気を出せば巻き返せるはずで、金華と彩朱からの評価さえ、エトランジュよりも低いままでは話にならない。


「堅物の金華がグレイスのやりようを許すかな」


 グレイスがガゼル公子に恋愛感情を持っているというのは、最大限、好意的な解釈の仕方だ。

 そうでない場合――

 聖女として不適格な対抗意識で、グレイスは好きでもないガゼル公子をエトランジュから取り上げて、優越感を楽しんでいたということになる。


 金華も彩朱も、いずれにしても、いい顔はしないだろう。


「ガゼル公子とは何でもないと感情に任せて否定していたが、その場合、彼女の品性に対する評価がさらに凋落(ちょうらく)することに気づく知性もない、か」


 年相応と言ってしまえばそれまでだが、聖サファイアを統べる光の聖女は、ごくふつうの十五歳の小娘には務まらない。

 群を抜く逸材であることを要求され、厳しく教育、選抜されて即位に至るのだ。

 もっとも、私としては、そんなのは建前だと思っているが。

 金華あたりは本気でそのつもりかもしれないと、見ていて思う。


「私とあなたの評価を正攻法で獲得するのは難しいと見て、エトランジュを妨害しようとしたのでしょうが」


 光の使徒の中でも、ろうたけて優しく寛容な水蓮でさえ、辛辣な物言いだ。

 グレイスはもう、駄目だな。

 彩朱とて、あれはもう彩朱の方がエトランジュに恋愛感情を持っているだろう。 

 光の使徒の中でも若手の彩朱と翡翠は、エトランジュのガゼル公子に対する一途さに胸打たれて応援するうちに、好きになってしまっている。

 聖サファイアの聖女と光の使徒との恋愛はご法度だが、エトランジュが一途にガゼル公子を想う姿を見ているから、エトランジュに限って光の使徒との間違いを起こすはずはないと、自分の方が間違いを、彼女に恋心を抱く可能性は失念していた――というところだろう。覚えのある感情だ。


「なめられたものだ」


 皆さんは気がついていらっしゃらないでしょうけど、と言わんばかりだったグレイスの口ぶり。

 あれは(かん)に障った。


「エトランジュのこと、どうしますか」

「気は進まないが、金華に報告するしかあるまい」


 今朝になって、ガゼル公子の雰囲気が変わっていた。

 あれは闇主の気配だ。

 エトランジュと契ったのだろうが、いつになく怜悧な瞳をして、隠すつもりもないようだった。

 当然だろう。

 エトランジュなら、聖サファイアの聖女になれる資格を有しているというのは、聖サファイア側の勝手な都合だ。

 彼女はもとより、オプスキュリテ公国の闇巫女なのだから、聖サファイアに譲ることはできないと、少なくとも、ガゼル公子は考えているということだ。


 こちらとしても本命はグレイスで、エトランジュと競争させることで成長を促す狙いだったというのに、グレイスは競争のテーマを正しく選べなかった。


「デゼル様とサイファ様、あちらの大公陛下がどう出てくるかもわからぬしな」

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