表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~  作者: 冴條玲
第二章 聖サファイア
23/37

第12話 気高き恋がたき

 私は目を見張ってルーカスを見た。

 彼にその力があったとして、彼にとってそうすることは、敵に塩を送ることでしかないはずなのに。


「俺はトランスサタニアン帝国の第一皇子だぞ? なぜ、それくらいのことができないと思う」

「――それは、その代わりにエトランジュを諦めろということですか」


 いつかのように、ウグッとなったルーカスが爆笑した。


「あほうかおまえ。不幸づらをしてエトランジュの同情を引くなと言っているんだ。不幸づらをしていないおまえと俺なら、エトランジュが俺を選ばぬわけがない!」


 ルーカスの自信には、ここまでくると、心底、感心してしまう。

 エトランジュがきっぱり「私がガゼル様を好きなの!」と言ったばかりなのに、私の不幸づらに同情しての気の迷いと信じて疑わないんだ。

 でも、カッコイイよね、やっぱり。

 傲慢不遜、力任せの強行突破だけど、ルーカスには卑劣さや嫌らしさがない。


「おまえの立場などわかりたくもないがな。おまえこそ、俺の立場がわかるのか? 第一皇子なのに、妾腹だからと愚弟に皇太子をもっていかれ、男なら自分で稼げと小遣いはなし。だが、母上はこの俺に最高の容姿とスペックと地位を与えたもうた。母上の仰る通り、男なら自分で稼げばいいことだ。ルーカス様ファンクラブの二万人の女どもから、月に銀貨数枚の会費を集めて抽選で握手会でもしてやるだけで、チンケな公国の公子様よりは高収入だろう」


 高笑うルーカス。

 つい、小声でエトランジュに「彼、そんなことやってるの?」と聞いてみたら、エトランジュが疲れた顔でうなずいた。


「月に金貨一枚の会費を支払う特別会員なら、握手会でルーカスの気に入った一人、ルーカスにキスしてもらえるんだよ。先月は壁ドンサービスもつけたみたい」

「特別会員になりたがる女性、いるの?」

「三千人いるって言ってた」

「……そ、そう………」


 なんだか、グレイスの異母兄だけはあるっていうか。

 それでも、嫌がる女性に無理強いしてるわけじゃないみたいだから、みんなが幸せなら、それでいいか。


「ルーカス様、そのお話……本当に、公国に帝国からの圧力がかからないように、グレイス様の興味を私から失わせることができるのですか? できるのであれば、どうか、お願いします」


 私が言われた通りに頭を下げて頼んでみたら、ルーカスが感心した顔で私を見た。


「言っておくが、グレイスとの復縁は望めなくなるぞ? エトランジュにフラれたからといって、元の鞘に納まるつもりなら大間違いだ」

「私がエトランジュに望まれなかったとしても、グレイス様との復縁は望みません」

「よく言った、任せておけ」


 ドンと胸を叩いて請け合ったルーカスが、直後、私にビシっと指を突きつけた。


「そこ! 今すぐ、エトランジュから離れるように。勝負がつく前の手出しは許さん」

「あ」


 それは、そうだね。

 名残惜しかったけど、エトランジュから離れた。


「グレイスは俺も気に食わん。エトランジュの方が本命だったというなら、貴様もなかなかどうして、見る目はあるようだがな。この俺に敵わぬことに気づかぬあたり、身の程知らずめが」


 エトランジュが小さく「ルーカス、それ、ブーメラン」って、つぶやいてた。

 なんだかんだ、仲はいいんだよね。幼馴染(おさななじみ)だもんね。

 エトランジュって、ルーカスにはほんと遠慮がない。


 十日もあれば十分だって、ルーカスは言ったけど。

 本当に、翌週にはグレイスの興味が私から失せたんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


★☆ 悪役令嬢と十三霊の神々 ☆★

↓ 完結まで無料で読めます ↓
悪役令嬢と十三霊の神々


【漫画】はじめての邪神戦 ~悪役令嬢と十三霊の神々~


★☆ シリーズ作品のご案内 ☆★

少年と舞い降りた天使

【新連載】サイファ ~少年と舞い降りた天使~


邪神に滅ぼされるはずだった公国を救った優しい少年の物語です。
※ 先代の公子様も素敵だったのですが、邪神キラーの少年と先代の闇巫女様を争奪して敗れました。ライバルが神の領域に天然すぎました。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ