【Side】 エトランジュ ~もう一つの再会~
昨日、ガゼル様にも援護してもらってルーカスをやっつけたの。
ガゼル様、援護してくれて、優しく笑いかけてくれたの。
私、すごく嬉しかった。
“ エトランジュ ”
私を呼んでくれた、カゼル様の声。
もう一度、聞きたいな。
私に差し伸べてくれた、ガゼル様の手。
取りたかったな。
ルーカスに邪魔されて、届かなかったの。
私――
まだ、とっても、ガゼル様のことが好き。
ガゼル様、私を追ってきてくれたわけじゃないよね?
だけど、そうじゃなかったら、どうしてここに……?
気になって、昨日の夜は、よく眠れなかったの。
翌日の朝礼で、新任の教官の紹介を頂いてすぐ。
ガゼル様、私を追って聖サファイアまで来てくれたんじゃないかって、私の勘違いだったら恥ずかしいから、真っ先にガゼル様を訪ねてみたの。
そうしたら、グレイス様と鉢合わせて。
少し、嫌な予感はしたの。
出直した方がいいかもしれないと思ったけど、グレイス様、私に笑いかけてくれたから。
ご機嫌がよさそうで、一緒でもいいのかなってほっとしたの。
グレイス様がノックして、ガゼル様が姿を見せた。
「久しぶりね、ガゼル様。まさか、私を追って天界までいらして下さるなんて!」
えっ……。
なんだろう、胸がドキドキする。
グレイス様がますます麗しく微笑まれて、私に仰ったの。
「ガゼル様は私の元婚約者なの。もうひとつ情熱を感じなくて、婚約は破棄させて頂いたのだけど。ガゼル様、失って初めて気がついて下さったのね。私がいないと駄目だって! それで、天界まで追ってきて下さるなんて!」
そう、だったの……。
そうよね、私を追ってきてくれるくらいなら、お慕いしていますって伝えた時に、応えてくれたはずだもの。
どうしよう、涙がこぼれそう。
どうして、期待したんだろう。
「そういうわけだから、ここは遠慮して下さる? エトランジュ」
「…はい……」
「ごめんなさいね、エトランジュ。ガゼル様は私一筋なの。あなたのものにはならないわ」
「いえ……お邪魔して、ごめんなさい……」
「待っ……」
心配そうな、優しいガゼル様の声に、つい、振り向いてしまったけど。
「ヒュゥ、お熱いねぇ。聖女サマとの恋愛はご法度ですよ、教官サマ?」
彩朱様の声に、ドキンとしたの。
「エトランジュ、大事な話があるって言ったじゃないか。まだ、オレをさけるの」
「あ、違っ……ごめんなさい、彩朱様。今から、うかがいます……」
今日は、彩朱様とのお約束があったんだけど、午後でもいいのかなって勝手に思ってしまって、先にガゼル様を訪ねたの。
引きとめようとしてくれたガゼル様が、少しだけ気になったけど、ガゼル様は優しいから。
きっと、私が泣いてしまっていたのを、心配してくれただけだよね。