part13 愛良と忠誠対決
「シークレット・フォーミュラ2」は「シークレット・フォーミュラ(https://ncode.syosetu.com/n0091gc/)」の続きです。
<登場人物>
・東京: 林愛良:武道家、スポーツインストラクター、蕭師匠を尊敬している。
・東京: 坂本崇高:空手家、スポーツインストラクター、愛良と幼なじみ。
・香港: 蕭師匠:古く続く武道流派の師匠。息子たちが小さい頃に、難病の妻に先立たれている。
・香港: 蕭明龍:表向きには師匠の長男ということになっている。実際は師匠の甥(師匠の弟の長男)。
・香港: 蕭明陽:実際は師匠の長男だが、師匠の次男で明龍の弟ということになっている。
・台湾: 張忠誠:武術ライター。
「シークレット・フォーミュラ」
https://ncode.syosetu.com/n0091gc/
愛良は挨拶もせずにいきなりハイキックを食らわせて忠誠を倒す。
「わあっ」後ろに吹っ飛ばされる忠誠。
「はいあなたの負け」負け負けーと指差して喜ぶ愛良を見て、男たちはあっけにとられている。
「あ、危ないな、ちょっと待てよ、テーブルとかどかそうよ、危ないんだからさあ」忠誠は息を切らし立ち上がりながら後退し、まさか今ので本当に勝負がついたと思っていないよな?と愛良の表情を伺う。
「テーブルをどかす?あなたがやりなさいよ」愛良は腕を組みながら、偉そうに命令した。
「や、やります…」
忠誠は「何で俺には厳しいんだよ、師匠とはいちゃついてたくせに」と言いながらそこらへんの障害物をどかし始めた。明龍はそれを手伝いながら小声で「何だかおかしいぞ。やっぱり愛良、酔ってるんじゃないか?」と忠誠に聞く。
「ああ、そうみたいだな。じゃあ俺、チャンスじゃん。簡単に勝っちゃうよ」
忠誠がいやらしく笑うので明龍は、何考えてんだよ、と友人を小突く。
「よし、始めていいよ」忠誠は、蹴られた腹をいてて、と大袈裟に押さえながら構える。
今度はお互い、敬意を表するポーズを取った。
「かかってきなさいよ」愛良は顎で命令する。
忠誠は愛良に向かって行こうとした。
「ちょっと待って」
愛良はそれを止める。
「ねえ、私とあなたは同じ流派の使い手として戦うんだから、違う武術は混ぜないでね。いい?システマの技とか使ったら、師匠に怒ってもらうわよ」
「やっぱりだめ?」
「だめに決まってるじゃない。この私と勝負するのにそんな卑怯な手を使うの?あなたそれでも武術家なの?」
「分かった。この流派で戦うよ」卑怯と言われても、最初にルールなんか決めなかったはずだけど、と思いながら愛良に同意する忠誠。
「そうしてね」
愛良は色っぽく顔を傾けながら、羽折っているパーカーをずらしてタンクトップ姿の片方の肩をみせる。
「おいやめろって」もはや卑怯などと言われたことがどうでもよくなる忠誠。
蕭氏兄弟はヒューヒュー言っている。
師匠は大胆な行動に出た愛良に少々困惑気味の表情で、崇高はやめろよ馬鹿、と愛良に怒る。
「お馬鹿さんね、早くかかって来なさいよ。私をモノにしたいんでしょ?」
愛良に挑発され、忠誠は攻撃を仕掛けたが、愛良にかわされる。
「あらどうしたの?ずいぶん弱いのね」微笑む愛良の目つきが明らかに違う。
「ねえ愛良、ひょっとして酔ってない?」
「酔ってたらこんなに早く動けるわけないでしょ?」愛良は忠誠に近付き、手を伸ばして忠誠の顎を撫でながら言う。「ね、忠誠?」
「ははは、色っぽいよ」忠誠は愛良の手をどかす。「ちょっと、興奮しちゃうからやめてくれよ」
「何、にやにやしてんのよ!」愛良は忠誠の頬を叩く。
「ちょっと待った」忠誠は敵前逃亡し、明陽の所へ来た。
「おい、愛良が酔ってるぞ。怖い。何飲ませたんだよ?」
「だからみんなと同じものだよ。あいつそんなに酔いやすいの?こんなのジュースと変わらないのに」明陽は一口飲んで言う。
「確かに様子がおかしいな」師匠は首をかしげる。でしょ?師匠の時と全然違うんだもん、と忠誠は泣きそうになっている。
「とにかく戦って来いよ、まだ序盤だろ」明龍は忠誠に戻るように言う。
「でも、何か別人みたいで怖いよ」
「何言ってるんだ、さっきはチャンスとか言ってたくせに。ほら、行け」明龍が手で追い払う。
忠誠が振り返ると、愛良はいらっしゃい、と言うように指で妖しく手まねきしている。忠誠は仕方なく愛良の前に戻って来た。
「愛良、今日は何だかいつもと違うね」忠誠は愛良の気に障らないように、びくつきながら言う。
「どういうこと?」
「ちょっと怖くて色っぽいな」
「そんなのいつものことよ」
愛良は突然強力なパンチをお見舞いし、衝撃で忠誠がテーブルにぶつかる。愛良は忠誠を仰向けにしてテーブルの上に押さえつけた。
愛良の行動に息を飲む男たち。
「待った!」勇気を出して試合を中断しようとする忠誠。「ね、ねえ愛良?君も流派の型を無視してないかな」
愛良がこれ以上覆いかぶさって来ないように、足でそれを止める忠誠。しかし愛良は、あらこれなあに?行儀の悪い子、と微笑みながら忠誠の太ももを撫でて足を降ろさせる。
「いい子ね忠誠」
押さえつけられた挙句、顔を近づけられた忠誠は、どきどきしている。
「ねえ、愛良。酔ってるよね?キスしてみる?」
「忠誠ったら、可愛い」
愛良は忠誠を見下ろしながら彼の髪を撫で、チュッとキスする真似をする。「愛良、俺もうだめかも…」
愛良はパシンと忠誠の頬を叩いた。「いやらしいわね、何考えてんの変態」
「そんな。君こそだよ」
起き上がろうとする忠誠に愛良は膝蹴りをお見舞いした。
「いて!」
忠誠はそのまま前かがみに倒れ込んだ。
「痛かった?ごめんなさいね」
「兄貴、忠誠は何でいつも最後においしい所を持っていくんだよ」ちくしょういいなあ、俺も愛良に殴ったり蹴られたり鞭で打たれたりしたいんだよ、と明陽は兄に訴える。
「ああ、許せないな、愛良に迫ってもらえるなんて。しかも何で逃げるんだ?馬鹿だなあ」
崇高は、お前愛良に何を飲ませたんだよ、と明陽に詰め寄る。
「だからみんなと同じものしか飲んでないって。愛良にだけ変なもの入れる暇なんかなかっただろ?」しかも愛良はおいしいおいしいって言って自分から何杯も飲んだんだぞ、と明陽は言う。
「じゃあ何であんなになってるんだ」師匠が心配そうに言う。「様子がおかしいじゃないか。崇高、ちょっとそれ、飲んでみてくれ」
崇高は、愛良の飲みかけのサングリアを飲んでみた。だが特に変わった味はしない。崇高は師匠に首を振ってみせ、明龍に回す。
「うん、同じだな」明龍は飲み干してからコップを置いた。
「お前ら何をドサクサに紛れて愛良の飲みかけを飲んでるんだよ」
そう言いながら明陽もそのコップを取って愛良の唇のあとがついている所をベロベロ舐め始める。
「ああ、愛良、お前とディープキスをする日が来るなんて…最高だよ、俺の愛良!」明陽は兄に殴られた挙句、コップを取り上げられる。
名前を呼ばれたような気がした愛良が、忠誠を放してこっちにやってくる。
「おい、こっちに来たぞ」警戒する明陽。
「あら皆さん揃ってどうしたの?お元気?」
不自然に微笑む愛良がそう言いながらサングリアを新しいプラコップに注ぐと、一気に飲んだ。
「あー、おいしい」
「ねえ愛良」明龍が作り笑いをしながら愛良に話しかける。「気分はどう?」
「最高にいいわ。何だか、ふわっとした気分。夢の中みたいよ」ヒック、と愛良はしゃっくりを上げる。
酔ってる、と師匠に耳打ちする明龍。
笑顔の愛良はまたコップにサングリアを注ぎ飲み干すと、忠誠のもとに戻って行った。
無言で見送る男たち。
「アルコールの匂いは全くしないが、愛良は酔ってるな」明龍は空のコップを嗅ぎながら言う。
「いや、この程度で酔うはずはない」明陽は崇高に言う。
「何で分かるんだ?」崇高は聞き返す。
「あいつ、俺らに見られて興奮してるんだ。おい崇高、あいつ、人に見られると興奮するタイプだったろ?」
崇高が明陽を殴ろうとするので、明陽は崇高の攻撃を腕で遮りつつ「お前が愛良を抱いてやらないからこうなるんだろ!」と怒鳴る。
「お前、日本に帰ってから本当に愛良と何もなかったんだな。俺はてっきり日本に着いたらそのままホテルに行ったかと思ってたよ。お前、あんないい女抱いてやらないでどうするんだよ。お前のせいで欲求不満になって、忠誠みたいなろくでもないシケた変態男に自分から迫ってるんだろうが」
「愛良はそんな女じゃないよ。第一、愛良の目つきがおかしいだろ。あれは酔ってる目だ」
「でも、お披露目の晩餐会で中国酒を飲んでたのに、その時は酔わなかったから変だね」師匠が言う。
「じゃあ親父だ」明陽が言う。「おい親父、さっき愛良に整体やった時、俺らに分からないように変な所に触っただろ」
「ええ?そんなことしてないよ」
馬鹿、と明龍が弟を叱る。
「こっちの流派の修行をさぼってたんじゃないの?」愛良は忠誠に聞く。
「さぼってはいないよ。ただ、君がさっきから色っぽく迫って来るから、変な気分になってしまってしょうがないんだ。反則にもほどがあるよ」
「だってあなた、可愛いんだもん」愛良は忠誠にウィンクする。
ドキっとしたものの、忠誠は気持ちを落ちつけて愛良を攻撃する。愛良は余裕でかわし、彼の胸と腹に突きを入れた。
可愛さなら俺の方が上だよ、と文句を言う明陽。
肩で息をしながら腹を抑えて構える忠誠。「ちょっとリードしてるからって油断するなよ。俺だってすぐに反撃できるんだからな。しかも色仕掛けなんて卑怯だぞ!」
一応周囲には、興奮してません、とアピールする意味もあって忠誠は怒ってみせるが、そんなことにはお構いなしの愛良は楽しそうにスキップしながら投げキッスする。忠誠は怒った顔をしてみせたものの、愛良の笑顔の前ではつい、にやけてしまう。
しかし、その顔つきを見て愛良の表情がまた変わる。
「あなたそんな台詞よく言えるわね。あの時、空港で私にキスしておいて」
キス?してないって!唇ついてなかったじゃん、と忠誠が言っているそばから、そうだそうだ!と明陽が加勢する。「愛良!あんな失礼な奴、再起不能にしてやれ!」
「そうするわ」愛良は明陽に答えてから忠誠を見る。「いいから来なさいよ。私に勝ちたいんでしょ?」
忠誠は、そりゃ勝つよ、と言いながら愛良に向かって行き、突きや蹴りで攻撃する。
「そう言えば、忠誠の空港キス事件って真相は何だったんだ?」ちゃんと2人に聞いてやらなきゃ、と明龍は独り言を言う。
「いい戦いだわ。あなたスピードがあるわね」
お互いに見ごたえのある攻撃や防御を繰り返したあと、愛良は言った。
「君こそ、師匠とさっき戦ったばかりなのに、体力が衰えてないね。むしろ増してるみたいだ。師匠に整体されて、よっぽど気持ち良かったのかい?」
忠誠に聞かれて、愛良はさっきのことを思い出したような恍惚とした表情をして目を閉じる。
「気持ち良かったに決まってるでしょ」愛良は恥ずかしそうにうつむいて、自分の体を抱きしめる。「私たち、愛し合ってるんだから」
師匠は驚いたような顔をして赤面する。
愛良は忠誠を見ると、目を閉じてわざとらしく唇をキスの形にして見せた。
「だからやめろってば」忠誠は、本当にキスされたような気分になりデレデレしている。「何だか気持ちよくなってきた。どうしよう」
愛良は忠誠のことなど構わずに、師匠に小さく手を振るので、師匠は上機嫌の笑顔で愛良に手を振り返す。
「何だよ愛し合ってるって」明陽は師匠に食ってかかる。
師匠は、幸せそうに溜息をつき「別に何でもないよ」と嬉しそうに答える。
「何だよ、愛良と何かあったのか?」
「何もないよ」
「かかってらっしゃい」
愛良はパーカーの裾を手でヒラヒラさせて忠誠を誘う。
「そんなに俺に押し倒されたいのかよ。いいのか?君がそうやって挑発し続けるなら、遠慮なく乗っかるよ?みんなの見てる前で何されてもいいんだな?」
「だからやってごらんなさい」怒ったように言う愛良。
「俺は整体より凄いことやってやる」
忠誠の鼻息が荒くなる。
「来て」愛良は色っぽく誘う。「早く。待てないわ」
忠誠はもう何でもやってやれとばかりに愛良に襲いかかり腰に抱きついたが、そのまま腹に愛良の蹴りがお見舞いされて倒れる。
忠誠は砂の上に転がったまま腹を押さえて痛そうにしている。「卑怯だぞ、色気がありすぎる上に挑発するなんて!」
「そんなに元気なら、私のパーカーぐらいは脱がせてみせなさい」
愛良はパーカーのジッパーを上げ下げしてみせる。
蕭氏兄弟はヒューヒューと囃し立て、師匠はにこにこと見ていたが、崇高が睨んでくるので3人は黙って真顔になった。
「愛良、冗談もそのへんにしろよ。ふざけるな。戦ってる最中だろ、真面目にやれ」崇高が言う。
愛良は怒った顔で崇高を見ると、ふん、と横を向いた。
「いいのか脱がせて?パーカーだけじゃ済まないぞ。本気で脱がせるからな。君がいいって言ったんだから。泣き叫んでも容赦しないぞ」
「あら、やっと本気出してくれた?」
忠誠は愛良のパーカーを掴もうとして愛良にかわされ、彼女の突きが胸に入る。
後退した忠誠を見て愛良は笑い、いらっしゃい、とばかりに指で合図する。
「邪念だらけだと私に勝てないわよ」
「君が今、邪念の塊じゃないか」
忠誠は反撃するが、愛良は身軽にかわして忠誠を砂の上に倒す。
愛良は忠誠の腹の上にまたがって乗る。「嬉しいわ。本気出してくれなきゃつまんないもの」
「おい待てって」及び腰になる忠誠。
愛良は忠誠の胸元をシャツの上から撫でる。「さっき、痛かったでしょ、ごめんなさいね」言いながら忠誠のシャツを引っ張って肩まで脱がす。「愛良、やめて…俺に乱暴しないで…」忠誠はシャツを脱がされまいと抵抗する。
「はあ?何言ってんの?」
愛良の顔が忠誠の目の前に来る。忠誠はうるんだ目で愛良にキスしようとしたが、寸前でかわされ、愛良は立ちあがった。
「キスしたかったらかかってきなさいよ、馬鹿ね」
「愛良、本当にもうやめろ。おふざけが過ぎるぞ」崇高は言う。
愛良はうるさそうな表情で崇高を見る。
「あなたもよく言えたわね」愛良はふふっと笑って崇高を見る。「あなただってこういうの好きだったくせに。私のこと、踊らせたでしょ?」
「お、おい、いつの話をしてるんだよ!」
崇高は慌てて抗議した。男たちが見ると崇高の顔が赤くなっている。
「踊らせた?どういうこと?」明陽が聞く。
「踊ってっていうから、ピョンピョン跳ねてあげたの。ね?」
愛良は顔を傾けて、色っぽくウインクする。
「ねえ愛良」さっきから倒れている忠誠は股間を押さえつつ、愛良を見上げる。「参った。もう、戦えない」
明陽は、あーあ、忠誠くんの忠誠くんが元気になっちゃったか、と言う。
「この程度で?男って不便ね」愛良は踊るようにくるっと一回転して、勝っちゃった、と独り言を言っている。
明陽は思いついたように「兄貴、酔ってる今なら、愛良は何でも言うこと聞いてくれるんじゃない?俺、試してみる」と明龍に耳打ちした。
「おい愛良!」
明龍は、弟が何か企んでいると感じて、やめろよ、と止める。
「何、明陽?」愛良は明陽を見た。
「お尻振って!」
崇高が思い切り睨んできているのに気づいた明陽はトーンダウンした。「あの、ちょっとだけでいいです」
愛良は色っぽい目つきで微笑むと、少し考えるような素振りをする。
「もう、あなたたちったら本当に、仕方ないわね。そんなものが見たいの?」
蕭家の3人は崇高に遠慮しつつ、見たい見たい、とうなずく。忠誠も倒れた体勢のまま、目を輝かせて愛良を見上げている。
「困ったわ。可愛らしいお馬鹿さんたち。じゃ、1回だけよ」
愛良は調子に乗って、手を腰に当て、どう?と顔を傾けながら、腰をゆっくり左右に振ってみせてから、皆に向かって投げキッスした。
男どもは拍手喝采、明陽は後ろから父親の首に抱きついて雄たけびを上げている。
「最高だ、愛良…!」父と子は固く抱き合ったまま感動を分かち合っていた。
女神は勝利の笑顔で高々と拳を上げる。
普段の硬派な彼女からは考えられない妖艶な動作に、男どもはもはや恐慌状態で騒ぎまくっていた。
手を触れずして荒くれ狼たちをノックアウトする愛良。
「愛良…君、本当に武道家かい?」寝転んで見上げながら愛良に言う忠誠。忠誠の位置から見上げた愛良には、菩薩のような後光が差していた。
「本当は女神なんじゃないか?」
愛良は立った状態からその場でゆっくりと前後開脚で180度脚を開いていき、体が地面に着くと、自分の体を抱きしめるポーズを取った。
「そうかもね」
愛良は、うっとりとした表情で忠誠を見つめた。
「あなた、負けちゃったわね。可哀想。また挑戦して」
「シークレット・フォーミュラ2」は「シークレット・フォーミュラ」の続きです。
「シークレット・フォーミュラ」
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なるべく1ヶ月に1度を目標に連載投稿していく予定です。




