プロローグ 女騎士イヴ
ヴァルフリーデ王国。
かつて世界の危機を救った『勇者』の一人が興した、現在大陸でも最大の領土を誇る大国だ。
この国の特色のひとつとして、軍事大国であることが挙げられる。
大陸最大国の称号は、その強大な軍事力を以て他国を併合、時には侵略をしていった結果得たものなのだ。
そして、その軍事力の要を握るのが、国によって管理された『騎士団』と『魔法師団』である。
騎士団・魔法師団共に、その数・質は他国の追随を許さず、有事の際……つまり戦争や魔物の討伐といった荒事を一手に引き受ける軍団であり、その重要性故に門扉は固く、一兵卒であってもヴァルフリーデ国民からは羨望の目で見られるような栄誉ある職だ。
この2つの集団のうち、特に騎士団は、規律を尊び、国への忠義を以て悪を討つ正義の味方であり、また、『男が就く職業』というイメージが強い。
勿論、女性騎士も居るには居るが、男と比べると身体能力的に劣ることから、騎士団内での出世が難しく、入団のただでさえ狭い門がさらに狭くなってしまう。故に女性は魔法師団を目指す方が遥かに効率的だ。
しかし、そんな中。
魔銀をそのまま溶かしこんだかのような、見る者の目を奪う銀髪。
切れ長の碧眼は凛々しくも、まだどこかあどけなさを感じさせる。
人が彼女を見れば、まず間違いなく「美しい」という感想を抱くだろう。
そんな彼女が手にするのは、一振の剣。
彼女を知らぬ者が見たならば、その剣は異物として映るだろう。
だが彼女は、その剣を以て数多の敵を討ってきた。
華奢な体躯からは想像出来ない『速さ』と『力』。
彼女の存在こそが、皆が騎士団を憧れの的とする最大の理由と言っても過言ではない。
ーー彼女の名は、イヴ=エレクシア。
ヴァルフリーデ王国騎士団の誇る、史上最強にして美麗なる女騎士。
これは、彼女がヴァルフリーデ王国史にその名を刻むまでの物語である。
連載始めました。
マイペースに更新していく予定ですが、読んでくださった方の暇潰しにでもなれば幸いです。
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