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アヤネとエミリア

「あ、あ、あんたは、第二カウンターの嫌味な受付係!!??」

「???ごめんなさい、人違いです。」

「え……、そんなわけないわ!!そのボサボサな頭、左腕のそれ!!どっからどう見ても今日第二カウンターにいた冴えない係員じゃないのじゃない!!」


それでも不思議そうに見てると


「そんな不思議そうな目で見ないでよ!!こっちが不安になっちゃうじゃない。」

「だから、人違いですよ『炎の勇者、エミリア』さん」

「えっ!?えっ!?人違いなのかしら…」


横からスラリとした騎士風の女性が、会話に加わってきた。


「エミリア様、先程エミリア様の名前を申し上げたので、多分エミリア様がおっしゃられていた方と同一人物かと。」

「そ、そうよねナーシャ!!こんなへんなカッコの受付係間違うわけないわよね!!」


ナーシャと呼ばれた騎士に助言をされ、先ほどまでの心配そうな顔はどこにいったのか、アルトスを睨み付ける。


「ちっ!!」

「あー、今舌打ちしたわね!!」

「んで、何か用ですか?それとも新手のナンパですか?」

「なんで、あんたみたいな冴えない男を私がナンパしないといけないのよ。」


プンスカ怒る『炎の勇者』みて、面倒なやつに捕まったと、肩を竦めるしかなかった。

そんなアルトスを見て、エミリアは腕を組み雄弁に語り出した。


「今日は、よくも依頼を受けさせてくれなかったわね。そんな、あなたに忠告しておいてあげ・・・」


エミリアが話出した時に、なんか長そうな話だなと思ってしまったため、横にいたナーシャに声をかけてみた


「申し遅れました、第二受付カウンターにいるアルトスです。」

「私は、ナーシャと申します、で、こちらがニコラです。いつもエミリア様がお世話になっています。」


と言って、反対側に座っているフードの方を見ると、軽く会釈をしている感じだが、深々とかぶっているため中の顔が見えないが、なんかニコラからは少し殺気をが…

とそこへ


「私を無視して挨拶を始めるなーーー!!」


と言いながら俺とナーシャの間に入ってくるエミリアは少し涙目である。


「ごめんごめん、寂しかったのか?俺は今、勤務時間外だからフリーだけど、友人と楽しく飲んでて一緒に食事したいという申し出は…」

「今から、一緒にご飯食べようって言ってんじゃないの!!」

「え、それはエミリアの国のナンパの仕方か?変わってるな?」

「なんで、炎の勇者であるあたしが、あんたみたいな愛想が悪い冴えない中年をナンパしないといけないのよ!!」

「そうだよね?じゃ、これで…」


これ以上からかうと、なんかやばいことになりそうだと察知し、そそくさとロイ達のもとに戻ろうとすると


「ちょっと待ちなさいよ!!ひとつ聞かせて?」

「ひとつだけだぞ?」

「今日断られた依頼....どうしてだめだったの?」

「ああ、それは…」


とそこへ、少し酔っ払った女性の声がかかった


「アル!!いつまでトイレ行ってんのよ!!今日は私たちのパーティーを褒めてくれるんで…ナンパ中?」

「違うわよ、なんで私が、こんな愛想のない冴えない中年、ナンパしないといけないのよ!?ちゃんと見てくれる、おばさん!!」


ナンパの言葉に思わぬ反撃をしたエミリアに、酔っ払っているアヤネが頬をひくつかせながらが答える。


「おばっ!!?すけべで冴えない中年がどこぞの芋娘をナンパして、ナンパされた方は、嬉しくって舞い上がって騒いでるのかと思ったのよ。ごめんなさいね」

「芋っむ!!どうやら、歳のせいで目が霞んでるようね?」


少し顔を突き合わせたあとこちらに振り返り


『誰!!こいつ!!』


また面倒ごとが増えてしまった感が否めないアルトスは、肩をすくめる。



□■□■――――――――□■□■


やれやれと思いながら、双方に紹介する


「そっちがエミリア、炎の勇者、んでこっちはアヤネ、勇者ロイのパーティーメンバーだ。」

「私が『炎の勇者、エミリア』よ。」

「ふーん、あなたが炎の勇者?」


アヤネは値踏みするようにエミリアを見ると


「まあいいわ。アルトス遊んでないで、飲み直しましょ?」


アルトスは頷くと、これ以上関わりたくないためロイたちの席の方へ向かおうとすると


「ちょ、ちょっと待ってよ、わたしの質問に…」

「今日は、私たちBランク依頼の達成&Aランク昇格のお祝いなの、邪魔しないでくれる?」

「えっ!?Bランク依頼?Aランク昇格?」

「そういうこと、もしかして炎の勇者様はまだBランクパーティーなりたてで、Bランクの依頼こなせていないのかしら?」


驚きの表情のエミリアに、好機と判断したアヤネがたたみかける。


「もしかして、今日Bランクの依頼を注文して断られたの?」

「そ、それは、この冴えない中年の係員が…」

「人のせい?この冴えない中年はね、すけべで、普段から頼りなさげに見えて、目が死んでるけど。」

「おい、それ褒めてんのか?」


アヤネは、アルトスのツッコミを無視してそのまま続ける。


「アルトスはね、なぜか仕事はきちんとできてるし、冒険者のレベルを的確に見抜く眼を持ってるの。」

「・・・・」

「そんなアルトスにBランクの依頼を受理されなかったってことは、Bランクパーティーとして失格よ!!」

「ひぐっ!!…アルトスのばかーーーーーー!!見返してやるんだから!!」


そういうと、エミリアは泣きながらその場から逃げ出したのだった。


「あ、エミリア様!!アルトス殿、アヤネ殿失礼します。」


というと、ナーシャとニコラはお辞儀してお金を払うとエミリアを追いかけて行った。

アルトスは、アヤネを横目に見て


「あーあ、泣かした。ちょっと言い過ぎじゃね?」

「最後の言葉、聴いてなかった?アルトスをディスったのよ?それにね、昇級直後が1番危ないのよ?浮き足立って死んだらかわいそうだもの。」

「確かに。」

「それに、アルトスは人の事言えないわよ。私たちの時は、もっと厳しかったじゃない。1週間ほど立ち直れなかったんだから…」

「す、すまん」


それから、ロイ達のテーブルに戻り、その日は久しぶりに楽しくお酒を飲んだ。特に、アルトスは、次の日に大量に残っているBランク依頼の報酬手続き業務を思い出し、忘れるために浴びるほど飲んだ。明日の仕事は明日する。今日残っている仕事も明日に回す。クズである。


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